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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2-11 船内の様子と予定

 暫くして、ステーションからYAMATO-Ⅲに再度の呼びかけがなされた。

 内容はやはり学術的な内容のようであった。


 生活環境に重点が置かれて質問が多数なされていた。

 総合すると、YAMATO-Ⅲの生活環境はすこぶる良好である。


 ステーション内の居住施設の騒音は、平均すると実に60から70デシベル以上にも達するが、YAMATO-Ⅲのそれは30デシベル以下であり、放送室の遮音状態に近い状態である。

 室内の湿度及び温度はどちらも一定に保たれているが、ステーションでは一切の対流がないために強制的な空気の流れで補正しているけれど、どうしてもステーション内では局部的に熱のたまりやすい場所が有るようである。


 だが、YAMATO-Ⅲでは重力があるために自然対流が発生し、地上の生活と同様の状況が造りだされているようである。

 排泄も無重力下では大きな問題であり、排泄の際は負圧によるバキュームで処理され、固形物は遠心装置に掛けられて分離処理されている。


 いずれしかるべき時に宇宙に放出するか地球に持ち帰るようになっている。

 YAMATO-Ⅲは、通常の汚水処理施設を持っており、数年に一度タンク内の清掃を行えばいいようであり、そのための分解処理施設も装備されている。


 因みに完全な分子レベルまでに分解された排泄物は、無機質な元素の集積物であり、排泄物と推測できるものではないはずである。

 ステーション内では水分は貴重であり、三日に一度の割合でシャワーを浴びることもできるが、極めて使用水量は僅かである。


 YAMATO-Ⅲ内では、水の使用に制限は無く、船内保管水量は飲料水だけで400トンに及ぶ。

しかも、いわゆる非飲料水は別に200トンほどの水分が確保されており、一日に約30リットル程度増加傾向にあると言う。

 主として飲料水及び食料に含まれる水分が最終的に非飲料水に集約されるからである。


 尤も、非飲料水が飲めないわけではないが、純粋な水は美味くないのである。

 YAMATO-Ⅲの飲料水は、斗夕峠の湧水を搭載しており、極めて飲料水としては適したものであるそうだ。


 食料についてはステーション内では専ら宇宙食であるが、YAMATO-Ⅲでは、地上と変わらない食材を用いた料理が造られると言う。

 そうしてYAMATO-Ⅲ船内の食材庫は極めて大きく、現在の搭乗員3名では優に三年分の食糧を搭載しているという。


 当該長期保存食料は、肉、魚、野菜などの新鮮食材を含め、特殊な長期保管庫に収納されて経年劣化が殆ど無い状態に置かれるそうである。

 主婦である坂崎喜代美さんが必要の都度、長期食材庫から食材を取り出して使用し、必要に応じて冷蔵庫或いは冷凍庫に保管をするようである。


 このため、YAMATO-Ⅲではかなりの生ごみが出てくることになる。

 この生ごみは台所に備え付けられた生ごみ処理機により、土壌改良剤になって船内のプール兼温室で利用されると言う。


 温室内では、イチゴなど新鮮な小果物や小野菜も造られているし、リビング等にもいわゆる植栽多数が置かれているとのことである。

 総じてYAMATO-Ⅲ船内では殆ど地上と同じ生活が営まれているのに比して、ステーション内では多くの制限と負担が宇宙飛行士たちに課されていることになる。


 さしずめ海に例えれば、ステーションは生活に何かと不自由ないかだでの生活であるのに比べ、YAMATO-Ⅲは全ての施設が整った大型旅客船と言ったところであろう。

 ステーションにも、YAMATO-Ⅲのような装備が搭載できるかという質問が有り、いずれ、そうなるでしょうねと言った坂崎の言葉が印象的だった。


 ◇◇◇◇


 YAMATO-Ⅲは、日本時間正午を期して、ステーション近傍から離脱した。

 加速度は毎秒3Gであり、航空機の離陸を思わせる速度で遠ざかって行くのがCNN放送で放映され、同時にNFKでは、YAMATO-Ⅲ船内からステーションが遠ざかる光景が放映された。


 その後の光景も極めて印象的である。

 月が次第に大きくなって行くのである。


 篠崎が再度30分の限定つきながらインタビューを行い、その後15分で今後のスケジュール調整と各通信端末の時間配分案を決定した。

 EU代表部又は駐日事務所は午前6時から1時間、


 NFK又は各報道機関は午前8時から1時間、及び午後7時から1時間の2時間である。

 アムリカ国政府若しくはアムリカ国大使館は午前9時から1時間


 NAUAは午前10時から1時間

 宇宙開発事業団は午前11時から1時間


 北海道庁は午後1時から1時間である

 中華国政府又は中華国大使館は午後3時から1時間


 総理官邸は午後4時から1時間

 文部科学省及びその他省庁は、午後5時から1時間、


 ロッシーア政府又はロッシーア大使館は午後10時から1時間である。

 各国政府及びその他の機関への割り当ては必要が無ければ休息時間とし、各国政府及びその他の機関が1時間前までに事前通知することになった。


 通信装置は、パソコンと連動して相互に文字情報などを伝達することもできる。

 実のところ、既に膨大なデータがYAMATO-Ⅲから配信されてきている。


 正午には国内各政府機関への配分は終了していたし、外国政府等への配分もそれぞれの領事館員等へ手渡されている。

 間違いが有ってはならないので、その都度本人確認を大使館或いは領事官への電話で確認をさせたところである。


       ◇◇ 続く ◇◇


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