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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2-10 流星雨

「ステーション、こちらは宇宙センター、YAMATO-Ⅲに何か有ったのか?」


「こちらは、ステーション。

 判りません。

 急にYAMATO-Ⅲが動きだしました。

 現在ステーションから見て天頂方向に遷移中。

 停止しました。

 凄い加速度ですね。

 まるでスポーツカー並みです。」


「何をしているのか判断できるか?」


「いえ、何もわか・・・・。

 あ、YAMATO-Ⅲの近傍で多数の光が見えます。

 まるで何かが当たっているみたい。

 ちょっと待って。」


 間をおいて再度交信があった。


「レーダー分析でわかりました。

 YAMATO-Ⅲが停止する直前に流星群の映像が捉えられています。

 その軌道からすると・・・。

 どうも流星群がステーションを直撃していた可能性が高いですね。

 どうやら、我々はYAMATO-Ⅲに助けられたみたいですよ。」


 5分ほどして連絡が入った。


「YAMATO-Ⅲから、宇宙センター。」


「こちら宇宙センター、どうぞ。」


「交信途中で失礼をしました。

 ステーションが危なかったもので、その対応をしていました。」


「アンダーソン船長から聞いたが、流星群だって?」


「ええ、さほど大きなものではないのですが、1フィートから最大20フィート程度の直径の隕石群が200個ほども飛来してきました。

 速力が毎秒50キロと早かったので、ステーションにぶつかれば多分再起不能になっていたでしょう。」


「それを、一体どうやって防いだのですか?」


「本船の隕石シールドを広げて、ステーションの笠になるようにしました。

 少なくともステーションに到達したものは無いはずです。」


「そのシールドとやらは、一体どんなものか教えてもらえますか?」


「うーん、これまた説明は難しいのですが、・・・。

 簡単に言うと、空間構造を変えて、質量が透過できない壁を造ったのです。

 光や電磁波を通しますが、ガスを含め分子構造を有する物質は透過できません。

 衝突し、爆発的な熱エネルギーに変化するかそのまま跳ね返されます。」


「それも貴方が自分で造られた?」


「ええ、スーパーでは売っていませんでしたので、仕方がないので自分で造りました。

 ひょっとしてハリウッド当たりならばありますかねぇ。」


「ははは、ユーモアのある人だが、少し、エンタープライズ号の見すぎじゃないでしょうか。

 しかし、どうも、我々NAUAを超越した技術をお持ちのようですが、宇宙開発のために、それらを公開する予定はありますか。」


「いずれ何らかの形で提供し、あるいは公開することになるでしょうが、現段階ではするつもりはありません。」


「現段階でしないと言うのは、何か理由がありますか?」


「危険だからであり、軍用に転用を図る者が必ず出てくると思われるからです。

 少なくとも管理された状態でなければ、利用させたくありません。」


「どういうことでしょう。

 我々が信用できないと?」


「NAUAの職員全てを信用するわけには行きません。

 あなたご自身についても、アムリカ国の利益と他の国の利益とどちらを選ぶかと言う選択をしなければならない場合、アムリカ国を排除して、他の国に利益を与えますか?」


「うーん、その時になってみなければわからないが、多分アムリカ国の利益を選ぶのでしょうね。」


「それが普通の反応です。

 そうした利己主義が蔓延している以上、高度な技術は確執かくしつの種になります。

 例えば、アムリカ国は核兵器を保有しながら、核兵器を保有していない他の国には核兵器の製造や保有も認めてはいない。

 安全保障上の観点から見れば当然の措置かもしれませんが、その同じ国が個人の武器所有を認め、多くの銃器犯罪を垂れ流しにしている。

 そうした利己的な考えの方々には、少なくとも秘密を教えたくありませんし、それにつながる恐れのあるNAUAも同類です。」


「ふむ、中々難しい問題だが、我々が論議すべき問題ではなさそうだ。

 明日には、貴方が手配してくれた通信装置が手元に届くようなのでその時にまた連絡しましょう。

 出来れば、YAMATO-Ⅲの船内の状況や、他の搭乗者も紹介していただきたい。

 それと、我が国を含むステーション滞在者の生命を守っていただき、心より感謝申し上げます。

 ありがとう。」


 NAUAの通信担当官は唐突に交信を止めていた。

 おそらくは、政治的な判断に関わる事項を坂崎が話し始めたのを感じて時間を置くべきだと判断したのだろう。


 科学的技術の話だけならば、ある意味でいくら公開されても構わないが、政治的判断が加味されると影響が大きいからである。

 それでもステーションとのやり取り、NAUAとのやり取りは、劇的な隕石群の襲来まであって概ね日本時間の11時を回っていた。


 古谷達は四分割画面のうちの一つがシールドに衝突する無数とも言える隕石群をリアルに見ていた。

 そうして一方では、NAUAとの交信も音声がリアルタイムで流されていたのである。


 かなりテンポの速い英語であり、なおかつ科学技術用語がふんだんに使われる会話であったことから宇部広(うべひろ)支局の誰もがその半分ほども理解できてはいなかった。

 尤も、その中継画像を新東京の本局が同時通訳を入れて収録している最中ではある。


       ◇◇ 続く ◇◇


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