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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2-8 宇宙ステーション

 一方、その頃、NAUA(ノア)(National Aeronautics and Univers Administratio;アムリカ航空宇宙局)では一大騒動が起きていた。

 NFKの報道はCNNによっていち早く中継されており、国際宇宙ステーションも接近中の未確認飛行物体(UFO)がYAMATO-Ⅲであることをほぼ確認していた。


 だが、如何(いかん)せん、連絡手段が無かった。

 NAUAに連絡が入ったのは8時間ほど前であり、宇部広(うべひろ)に向かって里法呂さとほろにあるアムリカ領事館から職員が車で移動中であるが、到着はどうみても午後になりそうである。


 仮に領事館が通信装置を受け取ったにしても、アムリカ本土に届けられるのはどんなに早く見ても更に20時間後である。

 土曜日から日曜日に掛けての話しであったために、領事への連絡が遅れたのが原因であった。


 NAUAは止むを得ず、通常の無線周波数を使ってYAMATO-Ⅲとの連絡設定を試みさせた。

 話し手は日本人宇宙飛行士の田岡博美であり、日本語で呼びかけることにした。


「YAMATO-Ⅲ、こちらは国際宇宙ステーション、感度ありましたら応答願います。」


 驚いたことにすぐに応答があった。


「国際宇宙ステーション、こちらはYAMATO-Ⅲ、感明良好です。

 当方では受信は出来ますが、国内法に基づき許可されていない電波での交信はできません。

 従って、当方から電波を発信せず、国際宇宙ステーション内のスピーカーに直接音声電流を流しています。

 通常の無線交信と同様に御話し下さい。

 なお、要すれば英語でも構いません。」


 田岡博美はすぐに英語に切り替えた。


「了解、YAMATO-Ⅲ、ではNAUAでも聞けるように英語での交信を願います。」


 明瞭な英語での返事が返ってきた。


「了解、国際宇宙ステーション。

 要件は何でしょうか?」


「こちらのレーダーには全く反応が無く、YAMATO-Ⅲの速力位置が不明です。

 目視で見る限り異常に接近速力が速いと思われます。

 このままでは、衝突の危険性もあると思われますが、そちらでは現状を把握していますか?」


「はい、十分に承知しております。

 こちらの制御範囲内で稼働しておりますのでご安心を。

 なお、不安を抱かせてしまったのならば謹んでお詫び申し上げます。」


「了解しました。

 NAUAから幾つかの質問が来ておりますので、お伝えしたいと思いますが宜しいでしょうか。」


「はい、どうぞ。」


「YAMATO-Ⅲの国際ステーション接近目的は何でしょうか?」


「二つあります。

 単なる観光目的と、もう一つはYAMATO-Ⅲが確かに実在するという証人となっていただくためです。」


「補給又は移乗を希望されるわけではないのですね。」


「こちらからの補給又は移乗希望は有りません。

 なお、そちらから移乗の希望を出されても御断りをしたいと思います。

 当宙域での滞在時間は3時間、アムリカ東部時間で言えば19時から22時までの間を予定しています。」


「了解しました。

 では、NAUAと連絡を取りますので少々お待ち下さい。」


「国際宇宙ステーション、こちらYAMATO-Ⅲ、必要と有れば、こちらでNAUAと直接の交信をしましょうか。」


「エッ?

 えーと、YAMATO-ⅢからNAUAとの連絡手段がありますか?」


「国際宇宙ステーションが持っているような送信機は有りませんが、NAUAから国際宇宙ステーションへの送信は傍受できます。

 また、NAUAの受信機用スピーカーに音声電流を流すことは可能かと思います。

 従って法に触れずに連絡は出来ます。」


 田岡はたじろいだ。

 一体どのような技術が有ればそのようなことができるのかと不思議に思った。


 今の説明では、電波を使わずに、受信機に音声電流だけを遠く離れた地上へ流せると言うのである。

 しかも、ステーションの真下にNAUAが存在するならばともかく、時間帯によってはNAUAが地球の反対側にいることも当然にあり得る。


 ステーションは通信衛星を介して交信できるが、電波を使わない限り衛星を介することはできないはずだ。

 だが、相手は出来ると言っているのである。


「あの、・・・どうすればそんなことができるのですか?」


「ごめんなさい。

 それは秘密です。

 御話しできません。」


「そうですか。

 では、一応NAUAに確認をしてみますので、少々お待ち下さい。」


 暫く田岡とNAUAの間でやり取りが続いた。

 NAUAの担当者は、田岡がいくら説明してもそんなことができるはずが無いと言って譲らなかった。


 だが、その不毛の議論を断ち切ったのは、(ほか)ならぬYAMATO-Ⅲであった。

 NAUA宇宙センターの構内スピーカーを通じて挨拶を送ってきたのである。


「こんばんわ。

 YAMATO-Ⅲの坂崎義則です。

 NAUA宇宙センターの皆さまに宇宙からの御挨拶を送ります。

 本船は国際宇宙ステーションの進行方向から見て5マイル後方にあって、減速しながら接近中。

 国際宇宙ステーションには0.6マイルまで接近予定です。

 支障が有る場合はご連絡ください。

 交信終わり。」


 NAUAの職員全員が驚いたが、明らかにステーションとセンターの交信内容を傍受した上での放送であろう。

 だが、巧妙に偽装している。


 ステーションとセンターの交信内容を傍受していてもその内容を漏らせば通信の秘密に触れることになる。

 何の情報もないままにNAUAへの挨拶を送ってきたという通信にも聞こえるのである。


 担当責任者は苦笑いした。

 その上で、目の前の通信マイクを使った。


       ◇◇ 続き ◇◇


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