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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2-7 YAMATO-Ⅲとの交信 その二

「あの、・・・。

 国際宇宙ステーションでは、無重力になって飛行士の方々が遊泳されていますけれど・・・。

 坂崎さんは、今、何事もないように座っていらっしゃる。

 どうしてですか?」


「ここの環境を無重力にも出来ますが、要は自由落下状態になるわけで、あまり気持ちのいいものでは有りませんし、人間の身体は重力のあるところで正常に機能するように出来ていますから無重力状態に長くいることは身体にも良くないですからね。

 船内は必要の無い限り、人工重力を造っています。」


「あの、人為的に重力を調節できると言うことでしょうか。」


「その通りです。」


「そうしてそれを推進力にも使われている。」


「厳密に言うと推進力に使っているのは反重力であり、人工的な重力調整の方は別の理論になります。」


「その理論を簡単にご説明できますか?」


「うーん、簡単には難しいですね。

 何せ、私以外には誰も成功したことのない事例ですし、理論説明をするとすれば少なくとも1カ月ほど私の指導で勉強していただかなければならないでしょう。

 ただ、非常に単純化して申し上げれば5次元空間での褶曲(しゅうきょく)が重力変異を起こし、その負領域空間は反重力を生み出すと言うことです。」


「申し訳ございません。

 勉強不足で、坂崎さんの説明内容が殆どわかりませんので次の質問に移らせていただきます。

 ヤマトには、坂崎さんのほかに奥様それに息子さんが同乗しておられますが、宇宙飛行士のように特別の訓練を行っていらっしゃるのでしょうか?」


「いいえ、家内も私もごく普通の中年を通り過ぎた老人ですし、息子の方もつい先ごろまでは尾宇坂(おうさか)の方でサラリーマンをしていたごく普通の人間です。

 宇宙飛行士の方々のように多くの候補者から選抜されたエリートでは有りません。」


「大変失礼な言い方をいたしますが、そうであれば、私のようなごく普通の者がヤマトに乗って宇宙旅行に出かけることも可能だということになるのでしょうか?」


「そうですね。

 いずれは、健康な方なら、だれでも簡単に出かけられるようになるのではないかなと思っています。

 今回の航宙はそのための実証実験でもあるんです。

 息子はまだ若手でしょうが、私や家内が普通に生活できるならば、幼い子供も含めて宇宙旅行ができるようになると思います。」


「あ、その()()()()()という意味はどのような意味なのか教えていただけませんか。

 昨晩も坂崎さんから出発間際に航宙クルーザーと言う言葉を漏れ伺いましたが、クルーザーは巡航といってあちらこちらを廻って行くと言う意味があると思いますが、コウチュウの意味がわかりませんでした。」


「ああ、コウは航海のコウ、チュウは宇宙のチュウ、宇宙を航行するクルーザーと言う意味です。」


「あの、例えばディスカバリーなどのシャトルと航宙クルーザーでは意味が違うのですか?」


「そうですね。

 例えて言えば、シャトルは小さな湾内だけを航行できる帆走船でしょうか。

 気象や海象模様にかなり左右されますし、動かすには非常に特殊な技能を必要とします。

 また、特にシャトルの場合は大規模な外部支援も必要です。

 比べて、航宙クルーザーは、外洋を含めて自由勝手に動き回れる全天候型のモーターボートと考えてください。」


「あの、次の質問にも関わるのですが、ヤマトは地球の軌道を離れてもっと遠くへ行けると言うことでしょうか?」


「ええ、そうですね。

 さしずめ、次の質問と言うのは、今後の予定でしょうか。

 国際宇宙ステーションとのランデブーの予定は、日本時間で午前9時から正午までの予定です。

 その後、周回軌道を離れて月の衛星軌道に向かいます。

 そこで半日ほど過ごした後、次に木星へ向かいます。」


「あの、今、木星とおっしゃいましたか?」


「ええ、木星です。」


「素人考えと言われるかもしれませんが、金星や火星の方が近いと思いますけれど、何故遠い木星なのでしょうか。

 それに、木星まで一体何日かかると考えておられますか。」


「何故に対する答えは、ヤマトの航宙コース上に木星があるからです。

 そうして次の質問のかかる時間の問題ですが、月の軌道上から木星まではおよそ4日を予定しています。

 詳しい計画はまた別の機会にお話ししましょう。

 そろそろステーションが近づいてきましたので、操縦に当たらなければなりません。

 これから4分割画面で皆さんにもヤマトの船外カメラで外部の様子をお見せします。

 但し、太陽光などがカメラの視界に入ると一時的に画像が見づらい場合が有りますのでご容赦を。

 次の予定は日本時間で正午にいたしましょう。

 ではまた後ほど。」


 唐突に画面が4分割画面に切り替わった。

 時刻は正確に0845を指していた。


 一つの映像には、国際宇宙ステーションが小さい点のように映っている、二つは地上映像であるが一つは水平線を、もう一つはどうやら真下を狙っているらしい。

 最後は月の映像であった。


 古谷はちらちらとモニター画面で視聴率をみていた。

 8時14分までは24.2%であったが、14分50秒からは一気に70%を超え、開始後2分で94%に達し、終了間際には98.7%に達していた。


 以後60%と70%の間を揺れ動いているが、少なくともこれまでの最高視聴率に間違いは無い。

 そうして、その数値が更に舞い上がり始めていた。


 国際宇宙ステーションが点から徐々に姿を変え、これまでに何度か見かけられた映像になってきたのである。



       ◇◇ 続き ◇◇


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