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先駆者 ~ 天翔けるYAMATO-Ⅲ  作者: サクラ近衛将監
第二章 飛翔
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2ー5 YAMATO-Ⅲとの交信 その一

 午後11時のニュースでキャスターの島田祥子(しょうこ)が最初に紹介した。


「さて、真偽のほどはわかりませんが、真実とすれば、ビッグニュースが飛び込んでまいりました。

 日本初、いいえ世界でも二番目の民間宇宙船が北海道から飛翔したと言う映像です。

 NFK宇部広(うべひろ)支局の独占映像です。

 先ずは、ご覧下さい。」


 古谷が夢中で撮影したハイビジョン映像がくっきりと現れた。

 思っていた以上に綺麗な映像であった。


 撮影中の古谷は気づいていなかったが、船体の一部には「YAMATO-Ⅲ」の文字が浮かび上がっている。

 暗い中へ消え行く映像は1分足らずのものである。


「現地で取材に当たった記者の話では、現地に着くまで一切の情報公開が無く、指定された場所で撮影されたものと言うことであり、取材に当たった記者自身も真偽のほどが不明であると言うことです。

 なお、知遠瀬ちとうせに駐屯する航空自衛隊に問い合わせたところ、当該時間に不審な飛行物体の確認には至っていないとのことであり、本当に真実かどうかが疑われるところでもあります。

 但し、仮に、これが真実であるとすれば、この宇宙船は全長が100mほどの非常に巨大なものであり、搭乗者は坂崎義則さん63歳、奥様の坂崎喜代美さん62歳、坂崎夫妻のご長男である坂崎誠一さん36歳の三人ということです。

 NFK宇部広支局では、この宇宙船と直接交信ができるという通信装置を入手しており、相手側の都合で明朝午前8時から再度の通信が可能と言うことです。

 なお、坂崎義則さんが記者に語ったところによれば、明朝午前9時からは国際宇宙ステーションに接近するとのことであり、或いはNAUA(ノア)を通じて当該宇宙船の真偽が確認できるかもしれません。

 折しも、日本人宇宙飛行士田岡博美さんが宇宙ステーションに滞在中であり、あるいは田岡さんと坂崎さんの御一家との宇宙交信が可能となるかもしれません。

 可能であれば明朝8時15分からは、宇部広支局をキー局に当該宇宙船搭乗員とのインタビューを行いたいと考えております。」


 ニュースは11時台のこれだけであり、0時以降の特番予定もない。

 全ては明日朝の宇部広支局からの交信次第である。


 古谷は、思案の末に、篠崎(しのざき)をキャスターに選んだ。

 篠崎は、坂崎とも面識があり、なおかつ現場にも行ったからである。


 古谷がやってもいいのだが、古谷は全体の流れを掴んで篠崎に指示を流す役目を請け負ったのである。

 この件は夜間ではあったが、報道局長までの了解を得ていた。


 篠崎は一旦アパートに帰し、朝6時までに準備をして出社するよう指示をした。

 篠崎はさすがにぶっつけ本番のキャスターにぶるってはいたものの、古谷から、千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスだぞと言われて、ようやく覚悟ができたのか頷いた。


 古谷、安部、秦の三人はそれから徹夜で、質問事項をまとめ上げた。

 その間に、山岡は段ボールに記載してあった配布先に連絡を入れていた。


 報道関係は、どうやらNFKがキー局になりそうである。

 取扱説明書には、各報道局から申し込みがあれば可能な範囲でNFKが受けて欲しいと記載してあったのである。


 配分先は、アムリカ大使館、NAUA、宇宙開発事業団、総理官邸、文部科学省、防衛省、ロッシーア大使館、中華国大使館、EU代表部日本事務所、北海道庁である。

 一方で、久住呂くすろ支局、北向(きたむかい)支局、風羅乃ふうらの支局、里法呂さとほろ北海道総局から応援の手配もついていた。


 未だ不確実ではあるものの、本物だった場合に宇部広支局だけでは手薄と考えた報道局長の指示によるものだった。


 ◇◇◇◇


 10月9日午前6時には、応援部隊も含めてスタッフ全員が揃っていた。

 ほとんど徹夜状態の古谷も1時間ほどの仮眠を取っていた。


 正直なところ、今日一日、頑張り通せるかどうかが、不安であった。

 午前7時半、既に取扱説明書通りの配線も済ませ、NFK本局への回線テストも終わっていた。


 祈るような気持ちで待っていた通信機が息を吹き返した。


「おはようございます。

 坂崎ですが、古谷さんか、篠崎さんは()られますかな?」


「はい、はい、はいーっ、待ってましたよ。

 二人ともおります。

 坂さん、15分から全国ネットで中継をしたいのですが宜しいでしょうか?」


「あぁ、それは、構わないよ。

 但し、取りあえず取材は30分だけにしておこうか。

 8時45分からは宇宙ステーションに接近するために必要な措置を講じなければならないからね。

 但し、その後も映像は送ってあげよう。

 船体に取り付けてあるカメラから外部映像が取れると思うから。

 そちらでもメイン画像とサブ画像の切り替えができる。

 その両方を放送に流すこともできるが、場合によっては打ち合わせが必要な場合もあるだろうな。

 特に、他の10台の通信機が相手先に配分された後は、配分調整も必要だろう。

 そういうことでいいかな?」


「取りあえずはそれで結構です。

 一応の質問事項を用意し、15分からは篠崎嘉子がキャスターになって問いかけますので、お答えいただけますか?」


「構わないが、場合によっては答えられないものも出てくると思うな。

 その場合は、お答えできないと言うことで返事するよ。」


「お答えできない場合は、出来ればその理由もお願いしたいのですが・・・。」


「出来るだけはそうしよう。

 だが、多分、安全保障上の問題から出来ないものもあるな。」


       ◇◇ 続く ◇◇


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