大魔王は倒せても、幼なじみには届かない
幼馴染のミリアは、昔から何でもできる子だった。
何でそんなに何でもできるのか、と聞くと、決まって答えは――
「努力すれば、たいていの問題は解決できるのよ」
――だった。そして続けて――
「あんたもやれば?」
――と言う。だから僕も頑張った。
「一人でよくゴブリンを倒したわね。次はオークよ」
「もうオークには負けないわね。次はオーガよ」
そんな調子で、ミリアに教わりながら力をつけた。そして――
「これで終わりだ、大魔王! ヤアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッ!」
――ついに倒したのだ。魔族の頂点、大魔王を。
でも、問題は残った。
それは、どうやってミリアに告白するかだ。
ミリアに釣り合う男になりたくて、これまでずっと頑張ってきた。僕を教え導いてくれた女性。確かな絆を感じてはいるけど、それと恋愛は別だ。こればかりは、いくら努力しても……。
「何? あんた好きな人がいるの?」
「え? あ、ああ、うん」
それがキミだとは言えない。
「ダメよ、許さないから。あんたをここまで育てるのに、あたしがどれだけ手間をかけたと思ってるの? 今さら他の女になんか渡さないんだから」
そして続ける。うつむいて、そっぽを向いて。
「努力すれば、たいていの問題は解決できるんだからね。これからも、絶対逃がさないんだから」
ああ、と僕は目を閉じた。
お読み頂きありがとうございました。
楽しんで頂けましたでしょうか。
『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』でも「タイトルは面白そう!」のコーナーで毎回投稿してますので、そちらもよろしくしていただけますと幸いです。
ラジオは文化放送にて毎週金曜日23:00から放送中。スマホアプリradikoなら無料で1週間聞き逃し配信してます。YouTubeには過去アーカイブも揃ってます。