痴漢男
今日は7月9日。
俺にはとある習慣があった。今日もそれを行う予定だ。
時刻は夜7時。満員電車の中、俺はいつものポジションを陣取り、獲物を狙う。
目の前には部活帰りであろう女子高生が立っていた。
俺は迷わず女子高生のスカートへと手を伸ばす。
これが俺の習慣。
いつも上司に叱られてばかりの俺にとって、これが唯一のストレス発散方法だ。
ぎゅうぎゅう詰めの電車では声もまともに出せない。それを分かった上で俺は犯行に及ぶ。
きっと今も泣きそうな顔で耐えているんだろうなあと舌舐めずりをし、女子高生の顔をちらりと見た。
「ぎゃあ!?」
俺は小さく悲鳴をあげた。
痴漢していた女の顔は、皮膚も肉も無い、骸骨だったのだ。
慌ててその場から離れようと、周りをどうにか見回すと、さらに声も出ないほど驚いた。
周りもみんな、顔が骸骨だった。
少なくとも、俺が見た顔は全員骸骨だったのだ。
「まもなくー〇〇駅ー〇〇駅ーです」
そんなアナウンスを聞き、俺は慌ててその駅で飛び出すように降りた。
そこが自分の最寄駅だったかどうかすら覚えていない。
慌ててホームを飛び出したような気がするが、その後の記憶は無かった。
次の日。
俺はスマホを確認する。
7月9日の夜7時。
電車に乗り込み、目の前の女子高生のスカートに手を伸ばす。顔を覗き込むと骸骨。
周りも骸骨。
慌てて次の停留所に飛び降りる。
何かデジャブのようなものを感じながら走った記憶はあるが、どこをどう走ったのか記憶にない。
次の日。
俺は今日が7月9日の夜7時であることを確認し、首を傾げた。
何がおかしいかわからないが、何かがおかしいと感じる。
そしてまた、男は永遠に同じことを繰り返して行くのであった…