テルの悲劇
「おかーさーん!!」
「あら、テルおかえり。楽しかった?」
「うん!!」
あるところに小さな村があった。その村はどこの国にも属していなかった。ただ、セクント王国に近く、王国に昔から援助してもらい、最近併合の話があり、村人はおおむね賛成だった。
「今日は何をしてきたの?」
「今日はね、アルーと鬼ごっこしたの!」
「ふふ、相変わらず仲がいいのね」
「ずっと友達だもん!」
セクント王国はしばらく前からインシィ帝国と戦争状態にあった。インシィ帝国は最近領土を拡大している国であり、つい先日セクント王国の友好国がインシィ帝国に侵略された。それに対しセクント王国が抗議、友好国を解放しようとインシィ帝国と開戦。
「ただいまー」
「おかえりなさい、あなた」
「おかえり!お父さん!」
「おお、いきなり抱き着くなよ。危ないだろ?」
「えへへ」
インシィ帝国は次の侵略目標をセクント王国に決定、王国を精神的に疲弊させようと少しずつ、まるでちょっかいを出すように侵略している。不幸なことにこの村は一番王国領土から離れており、そして帝国には王国の領土だと判断された。
「明日は早く仕事場に行かないといけないから朝食はいらないよ」
「あら、ご飯はしっかりとらないと力が出ないわよ?お弁当作っておくから」
インシィ帝国は一番最初にこの村を襲うことにした。また、帝国は王国に見せつけるよう、見せしめのために村を残酷に破壊することにした。
「ほら、はやく寝なさい」
「はーい」
「俺も明日は早いからな、おやすみ」
帝国は相手が最も混乱する時間、自分たちが動ける時間、すなわち早朝に攻撃を開始した。
「大変だー!!敵襲だー!!」
「全員起きろー!!!逃げろー!!!」
「テル!!起きて!!!逃げるわよ!!!」
「何が起きてるの!?お父さんは!?」
「あの人なら大丈夫よ!!早く!!」
帝国は軍の士気を上げるために侵略地におけるあらゆる行動を認可していた。見せしめの意図もあったが。
「おかーさーん!!!おとーさーん!!!テルー!!!助けてーーーー!!!」
「へへへっ誰も助けに来ねえよ」
「ガキは初めてだな」
「早く終わんねえかなあ。楽しみだぜ」
「アルーーーー!!!」
「テル!!!待ちなさい!!」
「なんだこのガキっ噛みついてきやがった!」
「あっせっかく捕まえたガキが逃げやがった!!」
「ちっ面倒くせえ!」
帝国は敵を精神的に追い詰めるため、奇襲をかけた後、軍が来たら逃げる。
「「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
「王国軍が来たぞ!!」
「予想より早いな」
「まあいい。楽しむだけならこいつだけで十分だ」
「助けてーーーー!!」
「テル!!」
「テル!!!」
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「あのガキですが将軍が買うと」
「あの無能なじじいめ。少しは他人のために動こうとはしないのか!」
「ガキには何もするなと。ただ暴力は殺さない程度であればやっていいらしい」
「一番おいしいところだけ持っていきやがって!仕方がない。憂さ晴らしに殴るとするか」
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「国王陛下、帝国による侵略が確認されました。併合予定のあの村です」
「なんと…まだ、王国領土ではないというのに…」
「現在、村人の避難受け入れ態勢を準備しています。被害としては、村が全壊、拉致1名です。王国軍が到着したとたんに帝国軍が撤退、奇襲でした」
「卑怯な!もはや徹底抗戦しかあるまい。直ちに軍務卿に徹底抗戦の指示を。あとエメント公国とヘンサー教国にも援軍の打診をしてくれ」
「了解」
テルの回想にしようと思ってたんだけどなんか違うのになった