街を目指そう!!!
「撒いたか?」
木の陰から顔を出す。
あの護衛達に火の玉をぶつけた後、森に駆け込み、木の陰に身を隠した。とりあえず、追ってはこないようだ。
「あいつら死んでないだろうな…」
かなり人間として下種な発言をしていたが、流石に殺してしまったとしたらかなり目覚めが悪い。反射的に火の玉を撃ってしまったが、殺人は立派な犯罪だ。
「殺してない。そう、死んだところを見てないから死んだとは断定できない。だから殺してないといえる。あの瞬間、魔障壁とか言ってたから大丈夫。バリアみたいなものでしょ。大丈夫大丈夫」
そう思い込まなければ不安に押し潰されそう。殺人とか勘弁してくれ。
「多分あの人たちは死んでないと思います。」
「え?」
「私の村から魔障壁は使える魔術師が出たんです。その人は火の中に入っても無事でした。だから死んでないと思います。」
そ、そうだったのか…なら、大丈夫だろう。火のレベルが違うと思うけど。
「しかしこの世界は物騒だな。弱者を守るどころか襲うとは…」
「え?」
「え?」
「…この世は弱肉強食、弱いものが蹂躙されるのは当たり前です…」
えぇ…こんな少女がすでに悟ってるってどゆこと?弱肉強食、蹂躙ってこの世界ハードモード過ぎない?いや現代地球社会でも弱肉強食、蹂躙だったけど社会的、経済的だし、物理的ではなかったからなぁ。いや、どっちもどっちか?
「それにしてもサトルさんって強いんですね。あんなにすごい魔術見たことありません」
「いやーそれほどでも~」
あー褒められると気分がいいね。こそばゆい。
「しかし、これからどうするか」
ひとまずの脅威は去ったわけだが、これからどうすればいいのか。もうこの世界は異世界と断定していいだろう。では、地球に帰れるのか、それが問題だ。地球からここに来たんだから、ここから地球に帰れてもおかしくない。つか帰れるなら早く帰りたい。研究だってたまってるし、友達や家族に会いたい。ホームシックになりそう。じゃあ、どう帰るのかとなったらお手上げで。分かるもんならさっさと帰るし。
「とりあえず人がいるところに行きませんか?」
そうだ、テルの言う通り、まずは生活圏を確保しなければ。地球に帰るにしても何をするにも今日を過ごせなければすなわち死だ。
「どこに街があるかわかりますか?」
「いえ、見たこともない場所なのでわからないです…さっきの道を道なりに行けば街に着くかもしれません」
ふむ、さっきの場所に戻るのか。あいつらがいるかもしれん。まあ、時間経ったしいなくなってるかもしれないけど。
「では、そうしますか」
「はい」
/***************************/
幸いにして先ほどの場所にはあいつらがいなかった。そう、何もなかったのである。つまりは、あの護衛達は死んではないということだ。回収されたのかもしれないけど。ただ、地面がところどころ黒焦げになっていた。十中八九あの火の玉が原因だろう。
この先、あいつらに遭遇しないとは言い切れない。十分気を付けて移動しよう。
「ところで、テルさんはなぜあいつらに捕まっていたんですか?」
「それは...」
もっと語彙力がほしい