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第二話「いま、ここにいる理由」

あのー、すみません。

ほんとにごめんなさい。

次からは一週間とか言って申し訳ありませんでした。


仕事辞めたいです。

(こんにちは。読んでくださってありがとうございます。まだまだこんなペースですが、今後共頑張っていきたいと思いますので、どうかどうか、よろしくお願い申し上げます。の意)


 40m上空から5人のアウトサイダーが降りてくる。

 誰一人、パラシュートなど付けていない。


「ふんっ」


 ミナトは、衝撃をいなすこともせず、硬いアスファルトの上に着地する。着地した箇所は、綺麗に足型が取れていた。


「ウニモグ! いくよっ!」

『おう。換装するぞ!』


 奏女は目に見えない妖精?ウニモグに話しかけている。


「換装ッ! 魔法少女☆カナメっ! あなたの邪悪はここでおしまーい!」


 光りに包まれるカナメは、次の瞬間にはひらひらのピンクゴスロリ衣装に身を包み宙に浮かんでいた。返信する瞬間のカナメは全裸になっているように見えるのだが、ミナトの高感度視覚センサーでもハッキリと視認できない。千鶴に頼み込んで対閃光処理機能も追加してもらったのだが、それでも捉えきれないため、おそらく特殊な魔法でもかかっているのだろう。

 カナメはそのままゆっくりと地面へ降りてくる。


「邪悪って、俺のことじゃないよな……」

「邪悪……、どい、て」

「邪悪じゃないよねぇ!?」


 大量のコウモリの群れがミナトを掠めていく。

 コウモリの群れが寄り集まって形づくる少女、セリカ・ハーカー。


「おまえが避ければいいだろうが!」

「関係、ない」

「俺が先に立ってただろ!」

「飛べ、ないミナト、は、落ちて、きたから、私より、早、かった、だけ」

「違うわ! 降りたんだ! 落ちたんじゃねぇ!」

「ほら、二人とも喧嘩しないの」


 未里は、空中を踏みしめてゆっくりと下ってくる。

 サイコキネシスで空気を収束し、その上を歩いてきたのだ。浮かせればいいじゃん! という話もあったが、本人曰く、車酔いの十倍キツイから嫌だ、とのこと。


「さて、全員来たな。まだ敵は来てないようだけど……」

「おいおい。俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」


 三郎の声が上空から聞こえてくる。


「会長は好きにやってくれって話だが、どうする?」


 ミナトは無視して話を進める。

 上空には、巨大な凧を背負った三郎が旋回している。


「おーい! 聞こえてないのかなー。俺はここにいるよー」

「全部、倒せ、ば、問題、ない」

「そりゃそうだ」

「私はいつも通りサポートに回るね」

「私はー?」

「カナメもいつも通り砲台だな。デカイの頼むわ」

「あははー。そろそろ目が回ってきたんだけど、降りていいかな。うぷっ」

「「「「吐くなよ!!! ゼッタイ吐くなよ!」」」」


 遅れて到着した自衛隊が、新宿中央公園近辺に漂うニンニクの激臭に悩まされるのはもう少し後の話になる。



 ×  ×  ×



「レディースエーンジェントルメーン!!!」


 大きな、そして嫌に甲高い男の声が響く。


「今宵も世界の敵、平和を乱す悪の手先、邪悪なる魔法使いミスター・ザンがやってきましたよォー!」


 ミスター・ザンと名乗る男は、都庁前の中空に浮かんでいる。

 ねずみ色のスーツ、赤いネクタイの上にローブを羽織る異様な格好をしているが、悪の妖精軍団「ザンダーク」の最高幹部の一人である。

 ミスター・ザン、本名を比燕斬九郎。魔法少女の実在する並行地球(パラレル・アース)からやってきた悪役(ヴィラン)である。

 悪役(ヴィラン)の目的は様々であり、世界征服から快楽主義の破壊まで。いくつかその目的が判明している組織はあるものの、そのほとんどは謎に包まれている。


「おい。おまえの敵だぞ」


 キンキンと頭に響く声に顔をしかめるミナト。


「あんな変な人しらなーい。いい歳こいて邪悪なる魔法使いとかバッカじゃない?」


 おまえが言うか。という心の声はいい歳こいた魔法少女☆カナメに届くことはなかった。


「邪悪なる魔法使いのォー! 邪悪なる使徒たちよォー!」


 アホみたいに間延びした、そして嫌に甲高い男の声と共に、次元断層から大小様々な意匠の怪物が現れる。意匠が様々と言えど、一貫して悪趣味と言える。その一つ一つが人間の邪悪な心からから生まれる怪物たちは、本能的に忌避感を感じさせる。


「来たぞ! 細かいバケモノは俺とセリカ、三郎でヤる! 樫村は討ち漏らしたやつを! カナメ、デカイの頼むぞ!」

「ふ、ん。わた、しは、すき、に、する」

「元くん! 気をつけて!」

「伊賀流百地丹波が弟子! 石川五右衛門が子孫、五郎丸三郎参るッ!」

「いっくよぉー! エクストリーム……スターバーストぉー!」


 光の束が寄り集まって、大きな束となる。超極太の光の奔流が怪物たちを飲み込んだ。


 ×  ×  ×


 カナメの極大魔法の一つ、エクストリームスターバーストが鼻先を横切った。

 光の奔流は怪物を飲み込み、その半数以上を消し飛ばす。が、その間にもミスター・ザンによって怪物は生み出されていく。

 現在、旧都庁断層から周囲10kmは立入禁止区域、15km圏は避難推奨区域に指定されている。だが、それでも旧都庁断層近辺に居座る人々はいるし、10kmのラインを怪物が超えることがあれば被害が拡大する。


 ミナトは奔った。

 人工筋肉が収縮し、爆発的な加速を生み出す。亜音速にも達するかという速度で怪物に肉薄し、その拳で打ち砕く。生物的な動きとは裏腹に、怪物は硬く、岩塊が砕けるが如く消え去っていった。

 その間際、破片を足場にして次の怪物へ、一体、二体、三体……。

 討伐数が十体を超えようかと言うその時、初手のエクストリームスターバーストから5秒ほど経過したところだった。


「ふぅん。やはりあのサイボーグの戦闘能力は侮れんなァ」


 ミスター・ザンの独り言を、ミナトの超聴覚は捉えていた。

 しかし、気にすることもなく、怪物をまた一体、また一体と破壊していく。


 元ミナトは戦う。

 その力こそ最強であることを証明せんがために。

 彼こそは、稀代の天才である千堂千鶴が生み出した最高傑作「極環境活動用第三世代型改造人間レーヴァテイン」である。


 ×  ×  ×


 エクストリームスターバーストが右腕を掠めた。

 右腕が半分ほど消し炭になっているが、意にも介さない。優雅ささえ感じさせる飛翔でもって怪物へ肉薄する彼女の腕は、既に元通りに再生していた。


 彼女にとって人間の生き死になど大したことではない。

 三百年を超える彼女の人生において、人間の死も、怪物の死も、はたまた文明の存亡も大した問題ではない。彼女の生は地球が滅んだとしても約束されているのだから。

 いまこうしてミナトらに力を貸しているのも、一時の遊びに過ぎない。改造人間がどれほどの刻を生きられるのかは知らないが、自分の力をもってしても倒せない相手(おもちゃ)を見つけた彼女にとって、いまの生き甲斐になっているだけなのだ。

 今までも、倒しきれない不死身の怪物や、近づくことさえ叶わぬ光の化身や、一〇〇〇年に一度と言われる稀代の魔術師と相対したことはある。だが、その全てが彼女を打倒することは叶わなかった。

 倒せなくとも、生き残った者の勝ちだと考える彼女は、二百年ほど前に諦めた「死」を齎す者を、心のどこかで待っているのかも知れない。


「うざ、い」


 セリカの腕を中心に魔法陣が現れる。

 収束した魔法陣は光の剣となり、目の前の怪物たちをばったばったと切り裂いていった。

 ヒットアンドアウェイのミナトと違い、セリカは怪物たちの攻撃を意にも介さない。腹を裂かれ、足を潰され、腕を砕かれても、次の瞬間には治っている。物理的な攻撃も、魔術的な攻撃も彼女には意味を成さず、ただ空を切るようであった。


「いい、かげん、に! ……!?」


 指先から展開する二重三重の魔法陣。

 業を煮やしたセリカが大魔法を発動しようとするが、その寸前に腹を突かれたことで不発に終わってしまった。


「セリカ!」


 そこへミナトが割って入る。

 槍でセリカの腹を貫いた怪物を一蹴すると、優しく抱いて地上へと着地する。


「も、う、治って、るから」


 降りようとするセリカはミナトの腕の中でもがいているが、見た目中学生のセリカがジタバタしているだけにも見える。


「はいはい。ほら、再生するからってあんまり攻撃を気にせず戦ってると癖になるぞ」

「うる、さい」

「あと、見てるこっちが痛々しいし……」


 ミナトがセリカから視線を外す。

 傷が残っているわけはない。理由は明白。攻撃された肉体は治っても、切り裂かれた服までは再生しない。

 セリカはいま、かなりあられもない姿になっている。


「へ、んたい」


 一言だけ残して、セリカは中空に浮かぶ怪物たちの元へと戻っていった。破壊を齎すために。

 その頬が、ほんのり赤く染まっていたのが見えたのは、遠くからサイコキネシスとテレパスでサポートをする樫村未里のみだった。


 三百年の刻を生きる、吸血鬼の真祖が一人セリカ・ハーカーは、いまの生き方に満足している。バケモノじみた強さを誇る改造人間や、ファンタジーみたいな魔法少女、忍者や超能力者が跋扈する世界に、満足している。

 できることならば、無類の強さを誇るサイボーグに、自分の生を終わらせて欲しいと願っている。

 それが、恋慕にも似た愛情だと認識するのは、まだ先の話である。


 ×  ×  ×


 樫村未里は、テレパスの波長をレーダーにように飛ばすことで、戦場を把握していた。

 状況に変化があれば、すぐに伝えられるようせわしなく飛ばしている。

 その中で、想いを寄せる男の子が吸血鬼の女の子とイチャイチャしているのを感知してしまっても、吸血鬼の女の子がまんざらでもない表情をしていたのを感知してしまっても、平静を保ちサポートを務める。


「あ……」


 サイコキネシスで動かし、討ち漏らしを掃討していた鉄塊の一つがコントロールを失って前線の三郎を直撃する。

 が、それも空蝉の術によって回避されていたことを感知すると、ほっと胸をなでおろした。三郎が何かを叫んでいるようだが、気にしている余裕はない。


 未里がコントロールしている鉄塊は三つ、放置され朽ちていた四トントラックを潰して槍状にしたもの。重さは一つ八トン近い重量物を同時に操っていた。

 その上、テレパスの同時併用である。


 樫村未里が誇る力は、その超能力の強さではない。

 彼女が使えるサイコキネシスやテレパス、クレアボヤンスと言った能力は、超能力者にとって基礎能力と言ってもいい。だが、それしか使えない彼女は、ひたすら磨いた。自分が自分であるために。そして、一人の少年の力になりたいという想いだけで、現在の能力を得た。


 かつて少年は言った。

 何気ない会話の一部。放課後の、どこにでもある夕暮れの教室で、たまたま居残って二人きりになったときに。少年にとっては、何の気なしの雑談だったかも知れない。


「何にもなかった俺に、何かを与えてくれた人がいるんだ。空っぽだった俺に、力をくれた人がいるんだ。家族も、夢も、人生もなくしたからよくわかんないけど。誰かのために生きられるなら、どんな苦痛も、努力も惜しまないって決めたんだ」


 歪んだ想い、捻れた感情、ひび割れた夢を語る少年を見て、未里は守りたいと思った。

 きっと、そんな未里の想いも歪んでいるのかも知れないが、思春期の女の子に決意させるには十分な理由だった。

 そのためには強く、守れるくらい強くならねば、と。


 努力と工夫の果てに手に入れたのは、圧倒的な基礎能力の向上と、未だ辿り着いた者のいない能力の並列使用。

 摂氏五一〇〇度の炎を生み出すことは出来ない。絶対零度の凍てつく波動を放つことも出来ない。十億ボルトの電圧を発生させることも出来ない。瞬間移動も、人の心を操ることも、出来ない。

 炎や氷、電気は強いサイコキネシスで防げばいい。防戦になるのならば、守りながら攻めればいい。類まれなる演算能力と、彼女の努力こそ、想いの証明となったのだった。


 ×  ×  ×


 エクストリームスターバーストを放った直後、技後硬直で動けない。

 しかし、不安はなかった。

 神代学園の誇る最強部隊が、彼女に怪物を近づけまいと戦っているのだから。


 丸井奏女は、普通の少女だった。

 触媒となる魔法少女を探していたウニモグが、たまたま轢かれそうになった奏女を助けるために力を与えただけに過ぎない。

 そもそも、轢かれそうになったのも、猫が道路に飛び出したのを追いかけていったからだ。

 自分でもわかっているが、阿呆なのだ。

 どうしようもない阿呆だと、奏女自身も知っている。

 だが、言い換えれば純粋だった。純粋さとは、綺麗なことではない。ウニモグ曰く「身体で動くか、頭で動くか。おまえは全人類の誰よりも身体で動いてる」とのことだった。

 頭が足りてないと言外に言っていたような気がするが、彼女には伝わらない。


 彼女は、純粋だった。

 それ故に、歴代魔法少女の中でも最強の力を持ち、弱きを助け悪しきを挫く魔法少女として顕現した。

 身体が勝手に動くものだから、困っている人がいれば助けに走り、その力でもって解決する。

 魔法少女として至極真っ当に生きていた。

 だが、その圧倒的な力は、仲間の魔法少女からは僻みや妬みの対象になり、圧倒的な力だからこそ、感謝すらされなくなった。

 自分が生きる意味すらもわからなくなった彼女は、次元断層に飲み込まれ、この地球へとやってくる。


 そこには、助けを呼ぶ人々や、見たこともない敵が跋扈していた。

 彼女は存分に力を奮い、見ず知らずの人々を助ける。圧倒的な力で勝利した彼女に、人々は感謝こそすれど恐怖を抱き、それもまた少女の心を壊していった。


「ホントすごいね。魔法? 魔法少女? なんでパンツ見えないの?」


 そんな時に、すっとぼけた体を装って話しかけてきたのがミナトだった。


「ありがとう。みんな動揺してるだけなんだ。代わりに言うよ、助けてくれてありがとう」


 彼も人外の力を持ち、人々に畏怖され、感謝すらされていないというのに、優しい笑顔で奏女に感謝を述べたのだった。

 それだけで良かった。

 ずっと求めてやまなかったもの。ただの感謝で構わない。そんな願いを彼が、ミナトが叶えてくれた。

 奏女は救われたのだった。


 だから、正直に言うと、帰り方がわからないわけじゃない。

 ウニモグも、帰る方法を教えてくれていた。でも、ちょっとだけ気になるお兄さんもいるし、ミスター・ザンはこっち来ちゃうし、何よりありがとうって言ってくれる人がいるから、そんな理由で彼女はここにいる。

 そんな理由だけで、彼女には十分だった。


『おい。カナメ。なにボーっとしてんだ』


 視線の先には、力をくれた相棒がいる。四角い犬みたいな形をしていて、生意気そうな目をしているが、魔法少女以外には見えないらしい。こいつがおしゃべりなせいで、奏女まで変人扱いされるのだから、迷惑とすら思っている。


「わかってる。もう一発いくよっ!」


 ステッキを掲げる。

 光に包まれるカナメは、怪物に向かって極大魔法を唱える。



読んでいただきありがとうございます!


バリバリのアクション書いてやるぜー! とか意気込んだものの、なんかこんな感じになってしまいました。

躍動する筋肉、汗、そしてちょっとえっちなムフフとか! 書きたいけど! 書きたいんだけど!

と日夜邁進しております。日々勉強!努力!そしてちょっと(?)の息抜き!


誤字脱字等はご指摘いただければ、なるべく直します!(直せ)


今後共、何卒よろしくお願いします!!!

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