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第一話「コード・レッド」

1週間に1話くらいの更新と言ったな! アレは嘘だ!


嘘です。嘘でした。ごめんなさい。申し訳ございません。

言い訳すると、仕事が忙しくて……(Youtubeでモトブログばっかり見てたとは言ってない)


仕事も多少は落ち着いてきたので、もう少しペース上げて更新していきたいと思います。

何卒、何卒よろしくお願いします。


遅れてしまってすみません。平に、平にご容赦を……


 ベッドの上で身体を起こす。

 視界には見慣れた自室。と、様々な情報が羅列されている。さながらPC画面のような有様だが、ミナトにとっては慣れたものだ。

 ミナトの身体は、そのほとんどが機械となった改造人間だ。残されているのはチタン合金製の頭蓋に包まれた脳のみ。そして、もちろん電脳化されている。

 視界に現れる自らのリアルタイムパーソナルデータも、デバイスも使わずインターネット接続できるブラウザ表示も、その他様々な情報がごった返す状況も、戸惑ったのは最初の一年だけだった。

 今やその全てを使いこなし、視覚・聴覚デバイスから流れ込んでくる津波のような情報量も制御出来ている。


「ところで、どうして俺のベッドに寝てるんだ?」


 ミナトの隣にはスヤスヤと寝息を立てる千鶴がいた。

 どうせまた研究所帰りに、そのままミナトのベッドに潜り込んだのだ。その証拠に、トレードマークの白衣を着たまま丸くなっている。

 千鶴が白衣を脱いでいるところを見たことがない。強いていうなら、シャワーを浴びている時なのだろうが、脱衣所から出てくる頃にはまた白衣を着用しているので、白衣を抜いだ姿を見ていない。

 起こさないようにやさしくベッドから這い出たミナトは、キッチンで朝食を作り始める。

 ここはミナトの自宅。そして、千鶴の自宅でもある。


「ミナト」

「おはよう。千鶴さん」


 寝ぼけ眼の千鶴がダイニングに入ってくる。


「これ、朝ごはん。ちゃんと食べろよ?」

「うー」

「あと、弁当」

「あー」

「ほら、シャワーは浴びなくていいの?」

「むー」


 うめき声のような返事をよそに、ミナトは学校へ向かう。これも毎朝のことだ。千鶴がシャンとしているのは、自分の興味があることが目の前にぶら下がっているときだけだ。



 ×  ×  ×



 神代学園都市が特別行政区になったのは10年ほど前である。

 世界各地に、元からあった次元断層が大きく口を開けたのも、およそ10年ほど前になる。次元断層からは、怪人、怪物、怪獣、妖精、邪神、想像上でしか語られなかったものが現れた。

 次元湧出(ディメンションフロー)」と呼ばれたこの自体に対し、世界各国は戦力を総動員するも、善戦むなしく被害の方が大きくなるばかり。

 そして、未曾有の危機に瀕した世界を救ったのは、アニメのようなヒーローたちだった。


 魔法使い

 魔法少女

 魔術師

 戦隊ヒーロー

 忍者

 剣豪・剣聖

 異能力者

 ...etc


 そしてヒーローの中には二種類いた。

 同じく次元断層から現れた、異次元から現れた者たちと、そして元からいた者たちだ。彼らは世界の危機に立ち上がり、手を取り合う。

 そして、大きな危機は去った。


 が、問題は残った。


 一つは、次元断層は縮小傾向にあり、現れる脅威も少なくなったものの、依然対処に追われている。やはり現代兵器で太刀打ちするには限界があり、これは現れたヒーローたちに協力を仰ぐしかないのが現状である。

 もう一つは、それら脅威と手を組む連中が現れたということ。

 異次元から現れた未知の技術を利用したい者は、善悪問わず大量にいる。使えば平和も争いももたらすことができる。

 最後に、異次元から現れた者、元からいた者問わず、彼らの扱いをどうするべきかという問題だった。

 彼らは個々で軍隊に匹敵する力を持つ。それだけでも潜在的脅威とみなされ、世間も感謝はすれど、歓迎するわけではなかった。

 人知れず「アウトサイダー」と呼ばれるようになった彼らは、一部に集められることになる。日本の、東日本地域はこの神代学園都市がそうである。体のいい収容所のようなものだ。


 アウトサイダーたちは、各々の目的でもって学園都市に滞在している。

 その正体を露見した者にとっては良き拠点になり、帰る方法がわからなくなった者の良き居場所にもなる。

 結果として、学園都市には未知の技術や最先端科学が集まってくる。


 今や、学園都市は人外、外道、善意と悪意、権謀術数が入り混じる混沌(カオス)だ。

 まあ、そんな混沌の中を平気で生きられるような者でなければ、ここには居られない。例え、普通の人間であったとしても、頭のネジが一本吹き飛んでいるような、そんな人間しかいないのだ。



 ×  ×  ×



「はいよ。ラーメンこってりニンニクアブラカラメ、野菜は少なめね」


 頭のネジが一本吹き飛んでいるようなラーメンを出す店は、高等科校舎へ続く商店街の中にあった。

 この世のものとは思えないラーメンを勢い良くテーブルに乗せたのは、香月なぎさ。若干26歳にして、このラーメン屋の店主である。

 まるで地獄の釜のようなラーメンを出す割に、香月のスタイルは良い。スラリとした肢体にピッチリと張り付いたTシャツを着て、ただのエプロンさえも艶めかしさを感じる。日本人離れした白髪も相まって、親衛隊まで結成される始末。無論、親衛隊は敵と戦う前に己の前に現れるラーメンという敵との戦いに敗れることが多い。

 不摂生の塊で、背徳感と絶望感をないまぜにしたようなラーメンを食しているというのに、なぜ香月は太らないのか、これはこの『なぎさ亭』に通う人間なら一度は考えることである。


「はい。三郎くんは豚ダブルラーメン大盛りに全部マシね」


 隣の三郎に出されたのは、これまたこの世の物理法則に反した超越的なラーメンだった。


「全部食べれたらヨシヨシしてあげるからねー!」


 そう言って作業へ戻るなぎさ。

 このヨシヨシオプションのために豚ダブルラーメン大盛り全部マシを頼む勇者が続出するわけなのだが、これがまた苦行という他ない。具材だけならまだしも、スープまでをもって完食と為すこのヨシヨシオプションをクリア出来た者は存在しない。


「はいっ! 今日こそ完食してみせます!」


 三郎は箸を割ると、原罪の権化のようなラーメンに戦いを挑んだ。

 なんだか今日は量が増えているような気がする。とミナトは心の中で呟いたが、それもそのはず。香月なぎさは魔術師である。と言っても、魔術師としてはあまり優秀な部類ではない。得意な分野は魔術薬学、サンクトペテルブルク魔術学院を卒業する時の論文は「経口摂取による魔術的エネルギーの効率化、その効果」である。

 魔術薬学を応用した料理の第一人者であり、スペシャリスト。

 そして、香月なぎさを優秀でないながらも非凡足らしめているのが「魔眼」である。

 先天的にせよ、後天的にせよ、扱い易いものではない。なぎさは前者であり、祖母から受け継いだその魔眼の名は「暴食の魔眼(オキュラス・グーラ)」。ありとあらゆる有機物のステータスを見ることが出来る。特筆すべきは、その詳細さ。個々人の基礎代謝量や摂取可能な総カロリー、また身体が最も求めている成分などがわかる。世の中の飲食店はこの魔眼を知ったら卒倒するだろう。

 何より卒倒しかねないのは、ここのラーメンは魔術薬学を応用した回復・パワーアップアイテムと化していることだろう。


 この魔眼をもって、席についた勇者の摂取可能なカロリー量を把握し、その微妙な量を麺や豚、油で調節しているのが、このヨシヨシオプションの正体である。

 改造人間であるミナトにとって、食事は作業に近い。もちろん、味覚センサーはついているし、疑似満腹中枢もある。だが、人工臓器に入った食べ物はオートで処理され、それはエネルギーに変換される。本来は、搭載された超小型の常温核融合炉が全てのエネルギーを賄っているため、食事すら必要ない。が、食事という娯楽は、人間としての尊厳を守るためだと、千鶴の配慮だ。

 マッドサイエンティストのくせに、こういうところだけ気が回るのが千鶴という女である。


 ともかく、そういうわけもあって、ミナトには食事量は関係なく全てエネルギーに変換される大食いチートを持っているため、このイベントには参加しないのだ。


「ぐっ……、ぷっ……」


 三郎はまもなく限界を迎えるらしい。

 ミナトは平らげた丼ぶりをカウンターの上にあげると、そっと外へ出ていく。


 しばらくした後、青ざめた三郎がふらふらとした足取りで出てきた。

 その顔色と表情から、どうやら失敗したと想像がついた。


「えへ……、なぎさ……、ごちそう、さま」


 どんどん顔色が悪くなる三郎を介抱していると、なぎさに頭を撫でられてご満悦のセリカが満足げな表情で店を出て来る。


「バケモノか、アイツは……」


 三郎が力尽きる。


「いや、まあ、マジもんのバケモノだけどな。おい、三郎? おーい。三郎? え?」


 へんじがない。ただのしかばねのようだ。



 ×  ×  ×



 暗闇の中、鳴動する。


「さて、今日も世界の敵をやりにいきますか」


 世界の敵。ミナトの敵。

 全ては世界の都合のために戦いは在る。


 血みどろで。

 爛漫で。

 醜悪で。

 可憐で。


 この世全てのご都合主義をないまぜにする。

 そんな戦いが、今日もどこかで始まろうとしていた。



 ×  ×  ×



「コード・レッドだ! 起きろ、三郎!」


 ベンチで横になったまま動く様子のない三郎を叩き起こす。

 ミナトの視界には、緊急アラートが表示されている。示す色はレッド。

 色の種別は三つ。

 レッド:各地で縮小、固定された次元断層から敵が出現する場合。危険度が未知数な上に、災害レベルの敵が襲撃してくる可能性が高いため、レッドに区分される。

 イエロー:こちら側に潜んでいる敵に動きがあった場合。加えてテロリスト同様、ゲリラ戦に発展する可能性がある場合、イエローに区分される。

 ブルー:これも潜んでいる敵に動きがあった場合にブルーと区分される。


「おう……、いくぞっ! うぷっ」


 ゆっくりと起き上がった三郎は、胃の中身が逆流しそうなのを手で抑えている。


「3分後にポイントF21……、ここだ。そのまま、旧都庁断層へ向かうぞ」

「ちょ、ちょっと家に取りに戻り……」

「諦めろ」


 三郎が途方に暮れている中、轟音を唸らせながら輸送ヘリが到着する。

 既にヘリの中には奏女と未里、そしてセリカがいた。

 気分が悪そうに口を抑えている三郎と違い、セリカは飄々としている。


「諸君。コード・レッドだ。旧都庁断層に反応があった」


 揺れるヘリの中、どこにも捕まらず立っているのは小宮莞爾。

 小宮莞爾は―――、生徒会長である。

 神代学園の高等科3年生にして、統括生徒会長。つまり、神代学園の初等科から大学院までの全ての学生の頂点に君臨するのが、小宮莞爾その人だ。


「数ヶ月ぶりのコード・レッドのため、即応部隊である君たち全員に非常呼集をかけた。未だ反応があるのみで敵が姿を現していないが、断層が開けばかなりの規模の戦闘になるだろう。このまま自衛隊中央即応集団第1空挺団と協力し、この事態に対処して欲しい」

「それ、邪魔……に、なる」

「セリカくん。我慢してくれたまえ。いつものことだが、彼らの役目は援護というよりも我々の監視の任が大きい」

「あーあー、いつになったら信用してもらえるんですかねぇ。うっ……ぷっ」

「信用してもらえる日など来ない。我々が、圧倒的戦力を持つ限り、彼らは抑止力として存在し続けなければならない」

「わかってますよ」

「会長。詳細な作戦会議(ブリーフィング)は?」

「すまない、未里くん。前提として敵の詳細がわからない以上、細かい判断は現場の君たちに委ねることになる」

「つまり、どういうことですかー?」

「好きにやってくれたまえ」


 ヘリが新宿区旧都庁前に到着する。

 首都機能は、次元湧出ディメンション・フローの際に立川へ完全に移管した。

 縮小傾向にはあるものの、現在も次元断層は旧都庁庁舎の直上に存在している。そのため、危険区域に設定され、半ばゴーストタウンと化しているが、人がいなくなったわけではなく、身寄りのない浮浪者や、頑として住まいを変えない者は、今も多くが23区内に存在していた。


 草木は伸び放題で放置され、新宿中央公園は山林のような様相を呈している。

 アスファルトはあちこちがひび割れ、建物の劣化も進んでいる。時折見つける大きな陥没や抉れている箇所は、かつての戦闘の名残だった。


「諸君の検討を祈る」


 ヘリは未だ新宿中央公園の上空40mほど、しかし乗員は誰一人怖気づくことなく廃墟と化した新宿へ飛び込んでいった。

読んでいただいてありがとうございます!

誤字脱字等はご指摘いただければ、なるべく直します!(直せ)


今後共、何卒よろしくお願いします!!!

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