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B級聖女の日常  作者: さん☆のりこ
9/23

ルビー(前編)

お肉に果物のソース・・北欧風ですなぁ(´ω`*)

 「ベリー摘み?」


何の事だと訝し気に、しかし花手毬を作る手を休めずに詩乃は顔を上げた。


「そうそう、この時期だけ採れる赤い実でね、ジャムにしたり乾かしてパンに練り込んだりして食べると凄く美味しいのよぉ。それを地区ごとに分かれて、みんなで採りに行くの公平にね」とアン。


ほうほうベリーですか、北国では定番な味覚だね。


昔、友達のドンコちゃんと某北欧大型家具屋さんに見学に行って、イートインでミートボールのベリーのジャム添えってのを食べた事があったっけ。とても美味しかったからベリーのジャムを買って(結構御高かったような記憶が・・珍しく奮発したのだ)来て、家で再現してみたのだけど・・そういえば泣かれたね、あの時もお兄に。本場の味は、詩乃の家の台所では再現出来なかったらしい・・お財布的にも非常に残念だった。


「それでね、魔獣がいて危ないから兵士さんも護衛に来てくれて」


・・・まじゅ~~?


「そう魔獣、魔獣もベリーが好きだから、山や青い森の奥から出て来てね、人を見つけるとムシャムシャって食べちゃうんだぞぉ~」

「アン止めなよ、シーノン怖がるから。大丈夫だよシーノン、兵士さんがいるから守ってくれるし」


心なしかリーのホッペが上気して、目もウルウルしている様な?


「リーはこのところ随分と兵士さんを贔屓しているよね、でもウチの林業組合のお兄さんも強くてカッコ良いんだけどねぇー」


ムムム?何か話に含みが有るようで?チラチラと2人を見つめる。


「なんと!リーに好きな人が出来ました!!!」

「きゃあああああああ~~やめて、やめて、やめて!」



 なんだ恋バナかい、ローズクオーツが効いたのかな?

造っておいてなんだけどさ、あんまり効果を信じてなかったぞ。

<空の魔石>が良かったのかな・・?まあ、なんだ。目出度い事じゃないか、お姉さんも嬉しいぞ。(年齢が上な事はまだバラして無かった、だってあんなに大泣きして慰められて、今更恥ずかしくてホントの年齢何か言えるもんかぃ)


ペチャクチャと御喋りの花が咲く。


そうですか、嫌がっている風な割に・・なんだかんだと喋るのね。

領都から派遣されて来た新米兵士なんだけど、剣の腕前にはちょっと自信が有ると。中堅穀物問屋の男5人兄弟の真ん中で、実家の経済的な事情と自立心から家を出た。親切で面倒見が良くて、笑顔が爽やかで声も素敵な16歳。


ほうほう、知り合って間もないのに、随分と取材しましたねぇゴシップ週刊誌の記者も顔負けだ。


「だからね、シーノンに約束の200ガルを払わなきゃいけないんだけど、いま手持ちに100ガルしかなくて・・ごめんね今度払うから」


いやいや、いつもパンの残りを頂いているので、お代は結構ですよ・・リーパパのパンはオーブンに入れて<初期化>すれば、いつでも焼きたてパンに大変身するから。作り立ては雑穀パンでも、少し酸っぱいライ麦パンでも大変に美味しい。


「明日も彼 『彼だってヒューヒュー』 護衛に来てくれるから、お話し出来れば嬉しいんだけど。どうしたら良いか解らない・・だって、こんな事慣れてないから・・恥ずかしいし」


ほうほう恋する乙女だねぇ、可愛いでは無いの・・よし!此処は一つ、お姉さんが一肌脱ぎますか。しからばご伝授しましょう、これを抑えれば外れ無し!男を虜にする必殺の最終奥義を!


「よいか?乙女たちよく聞けや 絶対の真実 私 兄いる 3歳上 兄望み1つ! 食いてえ!腹一杯食いてえ!それだけ、以上 終わり」


ロマンチックの欠片もないけど、仕方がないよね成長期、ロマンチックな囁きより美味いものに心惹かれるお年頃だ。


「リー まず胃袋つかむ!これ定説!明日 昼 弁当差し入れする 美味しい作る あげる どうぞお目しやがれ にっこり笑う言う」


お弁当の差し入れだって、きゃ~~きゃ~~~。

2人して興奮してお祭り状態、中学生のお年頃だものね、仕方ないね。


「静かに 君たち パン 塗る 最高美味しい 究極の調味料 私伝授する 一子相伝 心して体得するが良い」


・・・シーノンって時々難しい言葉言うよね、こそこそ・・・


【マヨネ~ズ・・それは異世界において、お約束的な醤油・味噌と並ぶ日本人のソウルフードである】


その昔×2、詩乃が家計を預かっていた時、少しでも安く食費を上げヘソクリを増やそうと、欲を掻いて調味料の自作を試みた時期があったのだ。

結果的には時間もお金も余計に掛って、くたびれ儲けの銭失い。市販品超美味~となった訳だが訳・・ここにQーマヨ様はおられ無いんだから、手作りするほかあるまいよ!


大丈夫、私には<空の魔石>と言う強い味方が有る。

<空の魔石>で温度管理つきボールを作り、卵の黄身と、植物系の油、ビネガーに塩・胡椒(あったかな?)を用意し。これまた<空の魔石>で造った泡立て器で、カシャカシャっとかき混ぜれば完璧なマヨ様を作れるはずだ。


「マヨになれ~マヨになれ~」


その後、3人で必死に作業をして・・味見をしつつ、ああでも無いこうでも無いと反省会をしながら頑張ったのだが。最終的には上手くいかず、泣きべそをかいてリーパパに助けを求めたのであった。

リーパパはマヨ様を一目見るなり素早く味見をすると、目をキランと輝かせ、シャカシャカシャカッとかき混ぜつつ何やら地元の調味料を入れた、すると何という事でしょう!Q様と勝るとも劣らないマヨ様が誕生したでは有りませんか!


さすがプロ!うれし泣きです、最高です!!!


嬉しくなった詩乃はパンに塗るほか、卵サンドとか、生パン生地に塗って焼くと美味しいのだとか知識をいくつかご披露した。

リーパパには教えていいのか?と聞かれたが、自分で作るのは面倒だし、お店で買えばラッキー♡ってなものである。


「明日は、シーノンの分も作って持っていくからね~」


リーが嬉しそうに笑っていた、リーパパは何故か不機嫌な顔をしていた(笑)。



  ****



 さて、本日はべりー摘みである。


天気は上々、気持ちはウキウキ。

集合場所の子爵様の館前の広場は、すでに人が集まっていた。

今日は下町の大通りから右側の人達の集まりだそうだ、人々に対面する様に一列に並んでいる深緑の制服の人達が兵士達だろう。15名程いるのかな?新米さんの色男は何処だろう?肩章の色が違うようだ、白が新米さんらしい。


リーが走ってやって来た。


「ぎりぎりまで頑張ったから遅くなっちゃった!見て見て、どう?美味しそう?」


大きな籠一杯にバケットサンドが入っていた、リーさんや何処に摘んだベリーを入れるんかい?


「はい、これがシーノンの分」


食べてね、マヨはお父さんの自信作、今日からお店でも出すって。


拝見するに、すでに何人か女の子が<リーの思い人で新人の色男の兵士>の前をウロウロと所在なさげに

そぞろ歩いている。小さな街だ、リーと同じことを考える女の子も多いのだろう。リーがイライラしながら、そちらの方を気にしている。


「リー 私 一人だいじょぶ リー あっち行く 早く」


手で押し出して行くように促す、恋する乙女の邪魔をする様な無粋な真似はするまい。リーは何度も振り返りながら、心配そうにしながらも新米さんに近寄っていった。

子爵様の館のバルコニーから奥様がニコニコ手を振っている、詩乃は嬉しくなってきて大きく両手を振ってピョンピョンと跳ねた。



   *******

 

 

 街を守る壁に有るくぐり戸を抜けて外に出ると、もうそこはトデリの街ではない、鬱蒼と生繁った森が広がる別世界だ。


小さな森の中の一本道を抜けて山に向かってどんどんと歩いていく、やがて広い草場のような場所に出た。この辺は酪農家の集落があるそうだ、ミルクを生産して街に卸して生計を立てている、チーズも造るぞ。

そこをさらに進む事小一時間、低木のベリーの木が一面に赤い実を付けて広がっている場所に出た。吹く風もなんだか甘い、ここは半分天然で、人のお世話も季節ごとに入っている半分人工的な農場の様なものらしい。街の共有財産だ、ベリー取りに誘って貰えるなんて、何だか街の一員として認められて来た様でかなり嬉しい。


ベリーを摘みながら、地元のお母さんにベリーのレシピを習う。

きっと一番健康に良いように、美味しく調理されていると思うんだ、地元の知恵は偉大なり。周囲は何だかお母さんと子供のグループが多い、男の人はベリーを握りつぶしてしまうので役に立たないから来られないそうだ、どんだけ筋肉マンなのだろう。


リーは兵士さんのそば近くを常にキープしていて、周りを牽制しているから邪魔はしない、なかなかのディフェンスと見た。

後ろから見ている分には、わりかし良い雰囲気ではないかと推察する。

見ているとほほえましい、若いって良いね、お姉さんは応援しているよ。




 昼のお弁当のバケットは、無事お兄さんの胃袋に収まりそうだ。

先輩に冷やかされながらも、リーに微笑みつつしっかりと受け取っていた。

さあ、胃袋を支配されるがよい若人よ、君はマヨ様の魅了に敵うかな?くくく。

アンも林業組合のお兄さんと仲良く並んでお昼を食べている、あれ?顔見知りの女の子もいつの間にかカップルじゃん。


今気が付いたけど、これって合コンお見合い的ピクニック?

おおおお・・・田舎の社交界かい?

家族連れは向こうの方で、適宜に楽しくやってるし、およよ、ボッチ確定じゃん。


・・・・まぁ、良いか。

今日は森林浴と2年ぶりのマヨちゃんを楽しもう!

リーパパのパンは美味しから、バケットサンド楽しみだ。

そう思ってバケットを食べようと、大口あけながら息を吸い込んでふと前を見たら・・大きな何かがいた。ワゴン車くらいの大きさで、青い色した何かの生き物だ。大きな口からは大量の涎がながれ、ズラリと並ぶ犬歯が禍々しい、低い唸り声を出し詩乃を威嚇して来る。


『これって・・・まじゅ~?』


周辺には詩乃しかいない、だってボッチなんだもん。

魔獣の黒く縁どりされた鋭い眼は、しっかりと詩乃を捕らえている。

近くに見えるベリーの実が、真っ赤に飛び散った血に見える。


やばいやばいやばい!!!


危険が危ない・・どうする詩乃!

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