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B級聖女の日常  作者: さん☆のりこ
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サンストーンとサファイア

初投稿です、よろしくお願いします。

完結できるよう、頑張りたいと思います。

大西詩乃はその日ちょっと浮かれていた。


ぴょんぴょん跳ねる様に歩く姿は小柄なこともあって、よく小学生に間違えられるのだが、正真正銘の中学2年生なのである。


『大丈夫!まだまだこれからだ、身長は伸びるはず!』


詩乃は信じている、朝に晩にと自宅の鴨居にぶら下がっては伸びる努力を重ねている日々だ。まぁ、この方法だと手足より胴が伸びてしまいそうなのだが・・。

身長に比例してなだらかな胸元には、今日買ったネックレスが揺れている。


「やっとやっとゲットだぜ~、私のサンストーン、お宝ちゃん!」


所謂パワーストーンという物だ。


ちょっとした成分の違いと、地球の頑張りで偶然に出来た鉱物に神秘の力なんか有る訳が無いだろうよと3歳年上の兄は鼻で笑うけれど、詩乃は脳筋兄貴の言動は基本スル~している。

男の子には誰にも多かれ少なかれ戦隊成分がしみ込んでいるし、女の子には魔女っ娘成分がDNAレベルで組み込まれているものなのだ!

口出し無用!神秘のパワー大好物なんです!

 


 詩乃がパワーストーンに出会ったのは4年前、友達と彼女の神秘好きな高校生のお姉さんに誘われて、それ系の小さなお店に連れていってもらったのが始まりだ。

そのお店はそりゃあ素敵だったのだ、・・魔女っ娘的に。

なんか良い匂いがするし、キラキラ光る石がたくさんあって、BGMはせせらぎと小鳥の囀りだし、おまけに店主さんがエスニックな衣装?的な人で神秘的な巫女様な感じで、大人の魅力が満々で。


詩乃は心のど真ん中をズキューンと打ち抜かれて恍惚の状態に、乏しい小遣いは壊滅状態に至ったのだったが・・そこには一片の悔いも無かった。

パワーストーンは品質の良しあしも有り(人工的に染めた石も有るし)、それ故値段も幅がドカンと有ってストラップなんかの小物は、小学生の詩乃の小遣いでも買える事ができたのだった。いろいろと集めて悦にいってた詩乃だ、女の子は光り物に弱いのですよ・・カラス並みにな。


 しか~し、そんな詩乃も中学生になった。

もう一段レベルアップした、本物に近いお宝をゲットしても良いお年頃ではないだろうか?


そこで詩乃は両親に交渉したのだった、家事を全部やるから小遣いをアップしてはくれまいか・・と。


もともと詩乃の両親は共働きの事も有って、家事の効率化と簡略化を推進していた。

掃除はハンディモップとロボット掃除機でOKだし、洗濯は全自洗濯機が夜の内に済ませた後、サンルームと母が言い張るガラス付きバルコニーに干せば良いだけだ。ちなみに乾いた良い洗濯物は各自がとり込み、それぞれのタンスにしまうのが大西家のルールだ。面倒なだけでスキル的には問題はない、もともとお洒落着など縁がない家族だし、お父さんも形状記憶のYシャツを愛用しているからアイロンがけの心配も無かった。


「難問は食事か!

何気に脳筋でエンゲル係数の高い、質より量の家族だし」


そこで詩乃は図書館で「簡単・おいしい・ヘルシー」と銘打つレシピ本を借りてきて、計量カップ片手に奮闘したのだった。

はじめは恐る恐る食べていた家族も、詩乃がスキルアップするにつれて報酬として小遣いを増やしてくれるようになった。それに食費は1週間ごとに封筒に入れて渡されていたので、やりくりを工夫して浮かせたお金は公然と詩乃のヘソクリとなっていた。

そのため詩乃は1円でも食費を安くしようと朝刊の折り込みチラシを舐めるように熟読し、安い食品をゲットするべく自転車で走り回った。

=玉子、御一人様1パック99円、先着50名様まで=のチラシを見た時には号泣したものだ。呆れた母が「学校サボっちゃダメよ」と内緒で千円くれた時には嬉しくて後光が射して見えた気がしが、たぶん見間違えであったのだろう。


順調に進んでいた資金計画だったがある日悲劇が訪れた、ご近所の情報や田中さんの小母さんが


「詩乃ちゃん、この前ダ〇エーに一人でいたわよ、大荷物かかえて」


・・・とご注進してくださりやがったのだ。

母はビックリした、自宅とダ〇エーは他市に有り20キロ以上離れているのである。


「交通事故でもあったらどうすんだ!」


母心からか、スーパーへの遠征を禁止されてしまった詩乃は次の一手を考えた。

曰く食材ディスカウント作戦である、見た目が変わらなければ解るまい・・と、高を括ったいたのだが。食欲大魔神の高校生・運動部の脳筋兄の舌を舐めていた様だ、あっさりとバレた。


「ハンバーグに嵩を増すために、おからを入れるのはやめてくれ!」


脳筋兄にマジ泣きされた、良く見破ったな・・兄よ。

おから良いのにね、おから。植物性蛋白質だし、繊維も多いしさ。




 まあ、そんなこんなの2年余りの艱難辛苦を乗り越えて、本日目出度くちょっと良い石・パワーストーンを手に入れる事ができたのだ。

神秘的な巫女様事、店主さんはお客の話(愚痴やら何やら、要望とか?)を聞いてカウンセリング的な事をしつつ、数あるパワーストーンからお客さんにピッタリな石を選んでくれデザインを考え、その人だけのオリジナルな一品を作ってくれるのだ。

それがまた楽しく嬉しい。


小遣いが入ったポシェットを握りしめ、詩乃は迷いに迷った。


「金運にしようかなぁ、はたまた健康運にしようか、恋愛運はパスだな。脳筋アニキ見てると夢も希望もありゃしないよ、おから美味しいのに。」


根に持つタイプなのである、こう見えて。

そんな詩乃を微笑みつつ見つめていた店主さんは


「詩乃ちゃんには・・そうね、この石はどうかしら。

これからの運命さだめに、詩乃ちゃんに力を貸してくれると思うのよ。まぁ、決めるのは・・あなただけどね」


巫女様風店主さんが、気怠そうにハスキーボイスで言う。


「この子はサンストーン、太陽の石・・成功と勝利を導き、貴方本来の力を引き出してくれる。獅子座の守護石なの、たしか詩乃ちゃんは獅子座よね・・どうかしら?転職にも良いのよ?」


『転職ってまだ中学生ですがな』


・・と内心思いながらも素直に石をのぞき込む詩乃。

そこには明るい本当に太陽のような、オレンジ色がフレアのように渦巻いている石があった。


「店長さん、私この子好きです。なんか凄く好きです!」

「そう?良かった・・石と持ち主は、心惹かれあうものなのよ」


それから補助の石とかいうのを配置してもらい、楕円形のサンストーンを中心に細い色組紐を使って編み上げ、お花のようなかたちにデザインしたネックレスを作ってもらった。

貯めた小遣いは少なくなったが大満足だ、女子力超アップだ。



    *****



 楽しかったお買い物の帰り道、ふんふん鼻歌が止まらない。

自宅近くの一本道、向こうから美少女が歩いてくるのが見えた。


『あれ?青嵐義塾学習院の美人さんだ。一人で歩いているなんて珍しいね』


青嵐義塾学習院は進学校で、この地域では頭の宜しいお金持ちの子弟が行く学校だと認識されている。

その美貌ゆえか、この辺ではちょっとした有名人である青嵐の美人さんは、何でも北欧系のおじいさんがいるらしく(噂だうわさ)、日本人離れしたたいそう美しい容姿をしておられる。

彼女の登下校には毎回ボデイガードよろしく、イケメンが侍っている姿がウオッチできるのだ、メンバーは毎日違うらしい、何でも公平にローテーションを回しているらしい。流石だな美人さん!


詩乃たち凡人・モブ中学生は心の中で

「エンダ~~~~~」

と歌うのを忘れない、逆ハーだとか王女様だとか、妄想は心の栄養なのだ。




 そんな美人さんをやっぱり綺麗な人だな~などと、うっとりと横目でガン見しつつすれ違った詩乃の耳に <カツーン> と何かが落ちた音が聞こえた。


「えっ、何?石?凄い!! 

サファイアだ!本物のサファイアのストラップ?」


詩乃の買った石より遥かに高級そうな、大粒のサファイアを使ったストラップが道にポトリと落ちていた。サファイアの意味は<幸運の石>?だったっけか?

詩乃はそれを慌てて拾うと


「あの、ストラップが落ちました」


と美人さんに声をかけた。


詩乃の呼びかけに振り返り、どうも有難うと笑ってくれた美人さんにポゥとなり、サファイアを手渡そうと指が触れた瞬間だった。

二人の足元に眩く光る、アニメでおなじみのアレが出現したのは!




絹を引き裂くような(聞いた事無いけど)美人さんの悲鳴が響く。

慌てて飛びのこうとした詩乃の手が、美人さんの白魚の様な手にギュッと握りしめられた。


「えっ!えっ!これってまずい奴じゃない?

 すいません、手をはなしていただけませんでしょうか?」


美人さんは見る見るうちに魔法陣の中に飲み込まれ沈んでいく、依然として詩乃の手を握りしめたままだ、引っ張られている詩乃の体も陣に沈み始めた。


やばい!やばい!やばい!

これって<巻き込まれ召喚>って奴?最悪じゃん!!



「転職に良い石って言ってたけど、これも転職になるの~?

                    教えてサンストーン!!」


挿絵(By みてみん)


美人さんはおろか、オマケの詩乃の声も姿もすべて飲み込んで、一度大きく魔法陣が光を放ったが・・・その跡には美人さんの学校指定の鞄と詩乃のポシェットしか残っていなかった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] パワーストーンという言葉に惹かれて飛んでまいりました。挿絵のクオリティ高い!見事にのめり込んだ。確かに良い石はクソ高いんだよね。
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