ホームレスと50円
満月の月と、近くのアパートの一室だけが、この暗い空間に光を与えていた。
そんな空間の中、不慣れな手付きでスマホをいじっていた俺は、あるゲームのチャットに書き込みをしていた。
A:恵んでくれる?
B:>A そこらのヤツからから奪ってこい
A:無理 喉乾いた もう死にそう
B:>A ソレぐらいで死なねーよ。後さり気なくどうでもいい単語混ぜんなし
C:>A レベル低いし、慣れてないでしょ? 俺が送ってっても良いよ
B:税金で5割持ってかれるだろ? やめろ
D:1kぐらいなら…
C:>D ホームレスに50円落とすようなもんでしょ。
B:>C うっわ微妙な金額
A:50円でも良い
C:>A いやジョークなんだけど。比喩なんだけど。
D:一応、全種の資源を1kだけ送っておく
最後の一文を見て、俺は耐えきれずに目を閉じた。
翌日
朝日が登り、暖かい部屋に光が差し込む。
朝だ。
いつもの様に夜更かしたんだけれど、今日は家族の助け抜きで起きられたみたい。
母は早起きした俺に驚いたようだけど、気にせず学校に行く準備をすすめる。
学校に行く道、道端の自販機の横に、何かキラリと光る物を見つける。50円玉だったみたいだ。ラッキー。
家族に迷惑をかけなかった俺への、幸運の女神からのお小遣いかもしれない。
機嫌を良くした俺は、スマホを取り出し、歩きながら片手で文字を入力する。
C:幸運の朝日にお早う!
A:おはよ Cさんどうした。
C:何でもない!
すこしばかりテンションが高すぎたかも。
A:昨日スマホ落としたんだけど、今日戻ってきた。
D:>A おはよう、Aさんは昨日ログインしてたみたいなんだけど。
B:>A は、乗っ取り?
A:もしかして乗っ取られてた? パスコード設定してなかったからなあ
D:>A 気をつけてよ~。
A:りょーかーい。
どうやらAさんがスマホを落としている間、それを拾った誰かが乗っ取っていたらしい。
俺もセキュリティに気をつけないと。
その日、帰宅路の自販機の近くに警察官が集まっていた。その自販機とは勿論、俺が朝に小銭を拾ったところのだ。
話を聞くところによると、ホームレスの男性が死んでいたらしい。餓死したのだろうか、世知辛い世の中だ。
どうでしょうか。こんなので良ければ、批評をお願いします。
追記・投稿直後、改めて見ると矛盾した箇所があったので、手直ししました。
追記・ご感想等、有難うございます。指摘された箇所を訂正しました。