エピローグ
「春ちゃん、元気でね……」
「小野寺さんこそ元気………出して。」
思わず、春香が現在進行形で励ましてしまうほど、小野寺は意気消沈していた。春香と秋仁が魔法学校へ発つ日、小野寺がわざわざ空港まで送りにきてくれたのだ。秋仁は春香を学校に送り届けてから、自分を招いてくれたアメリカの大学へ赴く。
「だって、秋仁だけじゃなく、春ちゃんも行っちゃうなんて、寂しすぎる…!」
だとしても、笑って友人を送り出せないところが大人気ない。
「今生の別れではないのですから、しっかりして下さい。」
秋仁はため息を飲み込み苦笑する。
「お手紙書くから。」
「絶対だよ?春ちゃん。たまには電話も頂戴ね。」
「うん、だから小野寺さんも頑張ってね。」
これではどちらが子供なのか分からない。
「春香、行きましょうか。」
「あ、ちょっと待って。」
そう言うと春香は持っていた荷物を全て床の上に置いた。彼女の行動を訝しむ間もなく春香は小野寺に抱きついた。
「春ちゃん!!」
驚いた小野寺もすぐに春香を抱きしめた。人との接触をあれだけ苦手にしていた春香に抱きつかれるなんて喜びもひとしおだ。
「ほんとに、どうもありがとう。」
「春ちゃんこそ、ありがとう。楽しんで、いってらっしゃい。」
小野寺から離れると笑顔で言った。
「いってきます。」
彼女の前途に幸あれ、
僕は応援しかできないけど、春ちゃんなら絶対大丈夫
ゲートに向かう似たもの親娘に向かって小野寺は叫んだ、
「春ちゃーん!秋仁に泣かされたら、すぐ僕のところに帰って来るんだよー?」
春香は顔を真っ赤にして小さく頷いていたし、秋仁はこちらをもの凄い眼で睨んでいた。
帰る場所が日本にもあることを知っておいて欲しかった。
頑張り屋で自分に厳しい彼女だから、
弱音を吐きたくなった時、少しでも自分が助けになれればいい。
これは、秋仁のことを言えないな、自分も相当、春香にご執心だ。
でも、僕のは親心だけどね、と心の中で付け加える。
二人の姿が見えなくなったゲートをもう一度眺め、踵を返すと小野寺はその場を後にした。
燎原の火 幼少期 <終わり>




