表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/10

近藤和馬

 平成23年11月20日

 3年後、世界は滅びる。それまでに、やっておかなければならないことがある。私が学校という、不特定多数の人間が集まる空間を作ったのには理由がある。その一つ目は、魔術的な素養が高く、品質の良い生贄を探すため。二つ目は、私に合う次の入れ物を探すためであった。そして、絶好の獲物を見つけた。

 近藤和馬、現在中学二年生。

 奴の内包する魔力は私を遥かに凌いでいた。

 この身体さえあれば、私がこの世界を支配することは、もう誰にも止めらないものになるだろう。

 そうだ。この日記の最後を飾るこのページは、一応魔術的な措置をしておこう。私以外にこの校長室に入るものはいないと思うが、もしかしたらということもある。

 さて、世界を救うための準備をしようか。




 3年前のあの日。俺は消えた。

 体育祭の日、俺は導かれるようにクラスを離れ、校長室へと向かっていた。自分の意思はうまく働かず、校長室に行くことだけしか頭になかった。

 校長室のドアを開けると、当然のように校長が椅子に座っていた。


 「まあ、座りたまえ」

 「ぐ…」


 俺は校長の命令の意のままに、その場で正座する。抗おうとしても無駄だった。


 「私は感謝しているんだ。君のような才能のある人物に出会えたことをね」

 「な…ら、何で、こんな、こと、を、する」

 「おお、まだ意識を持ち話せるか。素晴らしい」


 校長は感嘆し、拍手をする。まるで、道化を褒める観衆のように。


 「さて、出会ってそう時間は経っていないが、お願いがある。君の身体を私にくれないかね」

 「ぐ…、こと、わる」

 「聞いて何だが、君の意思は関係ないがね」

 「くそ、が」


 校長は俺に近づく。逃げることはできない。話すことすらやっとなのだ。

 校長は俺の頭に手を当てると、呪文のような文言を唱え始めた。

 脳を犯されるような強烈な頭痛と異物感に俺は吐き気を催した。まるで全身の臓器が侵されていくような感覚に、次第と意識は薄れていった。

 俺が次に目を覚ましたのは、ふらふらと浮く怪物の中だった。

 怪物は少女を追いかけていた。数体の怪物は、無数の触手で少女を襲った。だが、俺の意識は怪物の行動を必死で食い止めた。例え怪物の身体になっても、そんな非人道的なことだけはしたくなかった。

 しかし、少女は触手に捕らわれ、真っ赤な純血を啜られた。少女が気を失っても怪物は血を啜り続け、やがて、少女は動かなくなった。

 そこで、俺の意識は途切れた。

 そして、今、俺は少女に取りついている。少女の脳を借り、俺はそれなりに自分のことと、この怪物の事を理解することができている。だが、この学校からは出ることは叶わなかった。

 どうやら、俺は現実と異なる世界との狭間の空間に閉じ込められていて、普通の方法では脱出する術はないようだった。それに肉体の半分は外なる世界の生物なので、もう普通の世界では生きられない。

 全ての原因は俺の肉体を奪ったあの男。

 殺してやる。絶対に殺してやる。

 俺はふらふら校舎の中をうろつき、奴を探した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ