エピローグ
目を開き、脳が活性化する。最初に感じたのは、もうこの入れ物は人間ではなくなったという事実。次に感じたのは、もうこの世界が人間のものではなくなったという真実。
嬉しかったのは学校から出られたこと。悲しかったのはもう人間には戻れないこと。
そして、人間がこの世界に存在出来なくなったこと。
俺は今まで微かな希望を持っていた。今まで頭の中に響いていた冒涜的で破滅的な思想を耐えれば、また人間に戻れると、また普通の世界に帰れると思っていた。
その結果が、これか。
眼前に広がるのは悪夢の光景だった。
形状が変わる不定形が、魚を人間にしたような生き物を喰らっている。不定形の後ろには胴と首がある巨大な植物のような生き物が立ち並び、不定形を使役していた。地面は海水が張っていたが、周りを見れば高層ビルが建っている。何らかの原因で、海面がここまで浮上したのだろう。人間がいた痕跡が残されたこの場所は、今や異界の生物が犇めく化物たちの戦場と化している。
そして、俺の後ろには偉大なる我が主たる存在。
高層ビルへと迫る大きさ、蛸のような海洋生物をそのままくっつけたような顔には、悪魔の如き恐ろしい三つ目が覗いている。口の触手は下に垂れさがり、巨大な鱗が全身を覆っていた。両肩からは腕が伸び、手には巨大な蟹のような鋭い爪が光る。背中には蝙蝠のような翼を広げて、狂気を放ちながらそこにいた。
「いあ、くとぅるふ。いあ、いあ、くとぅるふ」
口からは勝手に邪神を称える言葉が漏れていた。
何故か?
そんなものは決まっている。
それは俺が……
To be continue




