隊長現る!
「何者って言われてなあ」
うーん正直に話すべきか、話さないべきか。
「お前いきなり何者ってどういう事なんだ?」
「私もよく分からない。あいつの匂い何かいっぱい混ざってる感じ」
うーん……気付かれているのかぁ。
さっさとずらかるかな。
「そんじゃ、俺はこれにて」
「ちょっと待てやー!」
「何だよ! もういいだろ。匂い覚えただろ」
「ちゃんと説明していけや!」
「どういうことか説明してくれ」
「話してもらえませんか」
ぐぬぬぬ……どうしようか話すべきか、話さないべきか。
その時だった。後方から声が聞こえた。
「探したぞお前ら」
やって来たのは男だった。20代後半ぐらいの年齢だと思われる。そしてその男はまるで女の様な美しく長い髪を持っていて、顔は美しく整っているが、男らしさの様な物が滲み出している感じだった。美男子という言葉がよく似合う男だった。服装は白を基本にした服を着ていて腰には二本のショートソードを挿している。
「隊長どこ行ってたんですか!?」
「どこって盗賊のアジトっぽいものを見つけたから入ってみたら盗賊っぽい奴らが襲って来たから全員倒していたら時間がかかってね」
「そんななんとなくな感じで人を斬らないで下さい」
「ミコトそちらの方は?」
「名前は聞いていませんがちょっと不審な奴だったので……」
おい! 誰が不審な奴だ。あと和風少女の名前はミコトって言うのか。
「ふーん……何で不審なんだ?」
「なんか変な匂いなんですよ」
変な匂いって言うなよ。
「変な匂いってどういうことだ? アンナ」
ウェアウルフの少女の名前はアンナって名前らしいね。
「なんか色々混ざってるらしいっすよ」
「お前に聞いてねぇんだよ。ユージン」
「俺にだけ風当り強くねぇか!!」
赤髪の男の名前は、ユージンらしい。
「それはさておき、色々混ざってるってどう言うことだ?」
「そうとしか言い様がありませんよ。ちょっともう一回嗅いでみますねー」
そう言うとアンナは、いきなり俺のがっしり掴んで匂いを嗅ぎはじめた。
「おい! そう言うのは、了承をとってからしろ!」
引き剥がそうとした時だった。
えっ!? 殺気!
俺は、とんでもない殺気を感じて振り向く。さっき隊長と呼ばれていた男が明らかな殺気を振りまいて俺を睨んでいた。
言葉を交わさなくても分かる。
彼女の行動を拒絶すれば殺す。だからといって変な気を起こしても殺す。と目が語っている。
たぶん彼は、アンナを娘の様に可愛がっているのであろう。
俺は、空を仰いでいた。
隊長は……見なかったことにしよう……
しばらく、アンナは俺の匂いを嗅いでいた。そして2分程経った時の事だった。
いきなり彼女が肩を震わせた。
「どっ? どうした?」
アンナの様子に皆の注目がアンナに集まる。
彼女は泣いていた。なぜかは、分からないが泣いていた。
気付くと明らかに「やっちゃったなお前」という感じの雰囲気がミコトとユージンから漂っている。
「え!? 俺が悪いの?」
「うわぁぁぁぁーん!!」
とうとう彼女が声を声をあげて泣き出した。
「え!? 俺マジで何かしたか!?」
気付くと、ミコトとユージンが「御愁傷様」という感じの雰囲気を漂わせている。
えぇーー!! 俺が悪いのか!!
そんな事を考えた瞬間だった。
後方の殺気が恐ろしいものになっている事に気が付いた。
ゆっくりと振り向くとそこにさっきの男はいなかった。
人の形をした鬼がそこにはいた。
「生きてこの街道出られるかなぁ……」
ボソッと呟いた声が聞こえていたのか、人の姿をした鬼は言った。
「大丈夫! 殺しはしない。ただちょっと君の手足が無くなるだけだ!」
ミコトとユージンは、既にいなくなっていた。
野郎……逃げやがったな……
明らかに理不尽な勝負が街道で始まろうとしていた。