オッサンとの遭遇
何もないところから何かを作り出そうとするほど難しいことはない。 そうそいつは言っていた。
「明日は終業式か……」
なんとなく悲しみを感じる。そこまで強く感じるわけではないけど。逆にうれしがるやつの方が多いのにな。
オレは今、下校途中であってぼっちで帰ってる。とっ友達がいないとかじゃないぞ。ただ同じ方向に友達と家がないだけであってな!
とぼとぼ
「何かしようかな、明日みんなで」
相変わらずの独り言。いつもどおりの光景だ、おれにとっては。しかし、終業式が終わればクラスのみんなでどっかに遊びにいきたいなぁ。部活も塾も入らずに学校生活送ってたから一緒に遊ぶ人とかクラスメートぐらいしか思いつかない。
「そういうことか!!部活とか塾に入る奴は、このことを予想してたんだな。ちくしょー、オレも面倒がらずに入れば……続かないか」
そもそも面倒くさがらずとも入れない。金がないから。部費とか良心的な価格なんだろうけど今は払えない。アルバイトで稼いだ金があっても生活費で空っぽだ。
「やばっ、今日もバイトあんじゃん。ったく、今日ぐらい休みてーな」
まぁ、それができたらとっくにしてるけど。バイトのオヤジは逆に休めって言ってくれるんだ。
「それに、今はやりたいことあるもんな……あれっ?なにっしてんだろ」
自分に言い聞かせていると目の前に背の高い今キセルをふかしてる男の人がいた。普段だったら珍しい人もいるんだなって、黙って通り過ぎて行くんだけど、今日はなぜか気になった。あっ目があった。
「どうした坊主、なんかようか?」
坊主ってオレはれっきとした高校生だ。
「ハッハッ俺からからしたら坊主だよ。しかし、どっかで見たことある顔だな。いつだっけな、うーむ」
うわっ聞かれてた!!声に出したっけな?やばいな、生意気な高校生だと思われているかも。
実はビビりなオレ。
で、どうしたらいい? うんうん唸っている胡散臭い男を横目で見ながらどう対処しようか考える。そうか名案だ。このまま帰ってしまえ。よし、思いついたらすぐに行動に移すのがオレ。
スタスタ おっいけるか。
「うーん、っておい!帰ろうとするな!失礼な坊主だな」
チっ、失敗か。
「舌打ちしたな。もういい。どこの坊主知らないが礼儀って物を「バシンッ!」痛いっ。ゲッ かっかみさん」
急に目の前でしゃべっているオッサンが顔をしかめた。後ろを振り返っても誰もいない。
一人芝居て……危ない人か。脳内彼女みたいな。帰ろう。疲れた。
「待て、行くな。かみさん離れてくれ。今はあんたに付き合ってる暇はないんだ。坊主待ってくれ。頼む」
後ろで悲鳴が聞こえた。通りにいた子供連れの母親が見ちゃいけませんってのしていた。つーか誰か助けてくれてもいいじゃん。冷たい社会だな。
家がみえてきた。
その夜、オレはバイトに行くのをすっかり忘れて爆睡していた。