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零次元

作者: おもち
掲載日:2026/03/18

 カーテンの隙間から朝日がこぼれる。うすらと目を開け天井をぼんやりと眺める。天井にあんな小さな傷あったっけ、そんなことを考えていると急にはっとして、くまができた目を無理やり開けて、朝の支度を始める。ニュースを見ながら適当に作ったトーストと目玉焼きを頬張る。

 ふと向いの椅子を見る。今日も誰も座ってない。それを確認すると再びテレビを眺める。確認しても、いないのに。

 歯を磨き、顔を洗う。一人でネクタイを締め、玄関に向かう。革靴を履き、誰もいない背後に一言。

「いってきます」

 朝の閑静とした住宅街を歩き、駅へ向かう。通勤ラッシュはすでに始まっていたが、そんなの構う暇もなく人々を押し込むように乗る。立つのも一苦労の中、電車はガタンゴトンと揺れる。その度に点のようなストレスが積もる。なんとか会社の最寄り駅に着き、再び人を押すように今度は下車する。

 会社に着き、小さく挨拶をする。すると聞こえるか聞こえないかの微妙な挨拶や会釈が返ってくる。仕事机に座り、パソコンを立ち上げる。その後はいつも通り、キーボードを打ちながら目に悪い液晶と睨めっこするだけだ。

 カチカチとキーボードを打って残業をする。終わりのないものはこの世に存在せず、いつかは終わるもの。そう自分を元気づけたが、かえって自分の手を止めさせた。そう、人には誰しも終わりが……考えるよりも手を動かした方がいい。それが現実からの逃避行だった。

 残業が終わり、外に出ると辺りのビルは点々と明かりがついており、朝とはまた違う静けさをしていた。街灯で明るいが、雰囲気が暗い矛盾した帰路を歩く。電車はもう終電でギリギリだった。こういう時にスマホを見るのは現代人としてごく普通だ。けど、僕はそうしなかった。なぜって、そういう癖がついてたから。愛する人と話す時間を大切にしていたから。

 玄関のドアを開け、闇に向かって一言。

「ただいま」

 返事があるはずもなかった。なんだかこれにはまだ慣れない。明日も明後日も、返答はない。それに具現化できない不安を感じた。

 今日の夕飯はどうしようかと冷蔵庫や戸棚を開ける。動きたくもないし、インスタントラーメンという結論に至った。別に美味しくもないのに美味しい。そんな矛盾を噛み潰しながら、エンタメ番組を見た。

 風呂に浸かり、仕事の疲れを零にしたい。でも、時間が時間なわけで、ゆっくり浸かることもできなかった。寝る時にはもう二時を回っていた。皺だらけのシーツに寝転び、瞼を閉じる。

 最近は疲れがひどい。事故やら、仕事やら。あの人が果てにいってから、世界に灰が積もっている。でも僕は思う。この疲れは世界から見ればちっぽけなものだって。この事故も、仕事も、人生も。人という存在、地球すらも宇宙からすれば零次元なんだって僕は思う。もし、一次元、二次元と増えていくとどうなるのだろうか。やめた。考えても無駄だ。だって、この考えも零次元なんだから。

―――会いたいよ。無次元の君に。

最後まで読んでいただきありがとうございます!今回、はじめて一般の場に公開させていただきました。所々おかしいところがあるかもしれませんが、ご愛嬌ということでお願いします!

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