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第46話 USA!!USA!!

 フェリドゥーンは吹き飛ばされた俺の下へ瞬時に移動してきた。


「リント様、お怪我は」

「――いてて…… 大丈夫だよ、どこいってたの?」

「奴隷たちに指示を出した後、アルムレット様の件でイリアから連絡がございまして、ポートイリスまで――」

「え、アルムレット様に何かあったの?」

「はい。もうベッドから起き上がるのも困難なほど衰弱していると……」

「……そうなんだ」

「――今はそれよりも、あの魔物たちを倒すのが先決ですね。セレイナはどこへ?」

「セレイナは向こうで少し休んでもらってる。俺のせいでちょっと無理させちゃって……」

「そうですか。私がおりますので、ここは問題ないでしょう」


 なんとも頼もしい言葉だ。


 その言葉通り、フェリドゥーンがいれば大丈夫だという万能感に俺は満たされている。


 そうだ、それよりも――


「フェリドゥーン、セフィリアが村で一人だ。彼女をセレイナのところへ」

「かしこまりました」


 俺たちはセフィリアの下へ急いだ。




「リント様!!!!」


 彼女は涙をあふれさせて抱き着いてきた。


「ごめんセフィリア、怖かっただろ」


 その言葉に、セフィリアは頷くどころか涙をグイッと拭きながら、


「平気です!みんな戦っているんですから!」と気丈にふるまって見せた。「ちょっと……心細かったですけど」


「フェリドゥーン、頼む」


 フェリドゥーンはセフィリアを抱きかかえた。


「ちょっとピリッとするぞ?」

「は、はい!」


 2人は小さな電流を残し消え、そして、数秒でフェリドゥーンは戻ってきた。


 ――ちょっと待てよ?


「フェリドゥーン、それって他の人も一緒に移動できるの?」

「相手の身体への負担がありますので、数百メートルほどの短い距離でしたら速度を制御して移動可能です」


 長距離は無理か、便利だと思ったんだけどな。


 いや待てよ?身体への負担を気にしなくていい俺だったらいけるんじゃないかな……



 そんな思案をお巡らせていると再び地響きが強まった。奴らがまた動き始めたのだ。


「フェリドゥーン、あいつらをどう倒す?セレイナの攻撃を喰らっても倒しきれないタフさだ」

「何も考えずに戦えるのなら私一人でも掃討は可能ですが、それだと村と町に壊滅的な被害が出ます。私が奴らの動きを止めるので、リント様はとどめをお願い致します」

「わかった!頼むよフェリドゥーン!」


 フェリドゥーンは天からの落雷を浴びながら奴らの前に悠然と浮かび上がっていく。


 俺も、事後のことを気にしなくていいならもう一度オーバードライブを発動可能だ。


 戦いは、ついに最終局面を迎える。






「……ああ、神が私たちを救いに来てくださったのか」


 村長のジーベルがフェリドゥーン姿を見て口を開くと、ユーノの娘が反論した。


「違います村長、あの人たちは神じゃなくて勇者様の一行です。私にはわかります」

「アミール、勇者とはどういうことじゃ?」

「西側諸国にあるタイリース王国に、メルトドラゴンを倒した3人の勇者が現れたんですって。あの人たちはきっと東の勇者様に違いありません。だって、神なんていませんから」

「またお前は神を冒涜するか、罰当たりな子だ」

「だって、神なんて見たこともないですし、神がいたらこの国はこんなことにはなってないと思いますから。それにさっき戦ってた人は冒険者リングを付けてたんですよ?神ではなく人間です」

「う、うーむ………… はぁ」




 フェリドゥーンは、一ミリも臆することなくグラトニー・デスクランプスたちの目前に浮いている。


 奴らは唸り声をあげ、フェリドゥーンを飲み込もうとその大きな口を迫らせるが、彼はそれを顔色一つ変えずに悠々と回避する。


 あたりまえだ。フェリドゥーンは雷の化身。


 彼にとってみればあんなのは鈍重なもの、目を瞑っていても避けられるだろう。雷の速度は、光の三分の一という途方もない速さなんだから。


 フェリドゥーンは攻撃を避け続け、なにかを待っているようにも見える。


 すると、一体が空気を大きく吸い込み始めた。――またあれをやるつもりだ。



「ブオオオオオオオオオ――――――――!!!!!!!!」



 相手を竦み上がらせる雄たけび。しかし、フェリドゥーンはその音圧を左手で払いのけかき消した。


 三体がフェリドゥーンへ向けて高圧の強酸を吐きかける。さっきと同じコンボだ。


 フェリドゥーンは動じない。酸の波に飲み込まれるも、自身を電撃の球体で包み込みそれを防いでいた。



「――凛人さん、お待たせいたしました」


 セレイナがセフィリアと帰ってくると、それを待っていたかのようにフェリドゥーンは声を上げた。


「セレイナ、村に結界を張ってくれ!」

「――はい!」


 セレイナが村をドームで包むと、フェリドゥーンは両手から落雷のような電撃を地面へと落とした。


 すると地面が隆起を始め、電撃が広範囲の地面から噴き出し、まるで地を網のように走る。


「パラライズフィールド」


 地面を覆う電撃がグラトニー・デスクランプスたちにを一網打尽にし、奴らは電流の影響で苦しみながら動きを止めた。


 掲げた両手に落雷を受けたフェリドゥーンは、バリバリと激しくほとばしる両手をグラトニー・デスクランプスに向け、睨みつける。



サンダーランス(雷槍)!!」



 両手から放たれた、槍のように鋭利な稲妻が、グラトニー・デスクランプスに直撃し、その巨体に大穴を空けた。


「今です、リント様!」


 その声を合図に、俺は全力でオーバードライブを再び発動し、グラトニー・デスクランプスへ向けて跳躍した。



 これなら切断できる!!



 俺は大穴の開いている部分を覇気断界で切りつけ、見事その巨体の切断に成功した。


「よしッッ!!!!!」


 そしてもう一体。フェリドゥーンがお膳立てをしてくれている個体へと、頭部を切断され倒れ行くグラトニー・デスクランプスの身体を足場に飛び移り、切断した。


 これで二体!!


 しかし、さっき俺に切断されかけていた残りの一体が、村をめがけて突進を始めた。


 セレイナの結界に阻まれるも、強引に体を結界ねじ込もうと暴れる。


「そうはさせません!」


 村人たちが恐怖で叫び声を上げる中、セレイナはさらに結界の範囲を広げ、その巨体をはじき返した。


 俺は少しも心配なんかしていない。セレイナの結界がそんなことで破られるはずはないからだ。


 最後のグラトニー・デスクランプスの巨体に俺は飛び移る。


「いい経験になったよ、ありがとな!!!!」


 俺は切断しかけていた部位に剣を振り下ろした。




**********




 俺にとっての初めての死闘は幕を下ろし、村人たちの歓声が俺たちを包んだ。


「おお!なんとお礼を言っていいのか。本当にありがとうございますじゃ、勇者殿」


 ん?? 勇者??


「い、いえいえ。俺もいい経験をさせてもらいました。――あの、勇者って」


 アミールが俺の下へ走ってきた。


「勇者様!私、アミールと言います、本当にありがとうございました!私、感動しちゃって震えが止まりません!」

「あ、あー……えーと。俺は別に勇者じゃ――」

「フフ。凛人さん、勇者でも良いんじゃないですか?」

「えぇ…… でもフェリドゥーンがいなかったら倒せなかったし、俺なんか良いとこ取りしただけで」

「いえ、私たちはリント様あってのものですので、私たち従者の力はリント様の力でもあるのです」


 フェリドゥーンが跪き、まっすぐな目で俺を見上げた。


 その言葉に、アミールの目がキラキラと輝く。


「こんなに強い人が従者だなんて!やっぱりあなたは勇者様なんですね!!ああどうしよう、目の前に勇者様がおられるなんて!!」


 もうどうにでもしてくれ……


 俺は諦め、この村では勇者ということでいることにした。



**********



 セレイナが結界で守ってくれていたおかげで、村はほぼ無傷でいられた。


 被害と言えば、俺が吹き飛ばされて倒壊させた家が何軒か……本当に申し訳ない。


 グラトニー・デスクランプスの亡骸は、黒い煙を上げて消滅していった。


 セレイナも理由はわからないと言っていた。何かよからぬことでも起こらないといいんだけど……



 大人たちは倒壊した家々の後処理をしている。


「皆さん、今日はもう夕刻も近いので村に泊まられて行ってはいかがでしょう」


 村長がこちらへと歩いてきた。


「今日は勇者様たちへの感謝と歓迎を込めまして、夜は村を上げて宴でも開こうと思っておりますので是非ご参加を」

「それは嬉しいです、ありがとうございます」


「勇者様!――あ、あの……」


 アミールがもじもじとして何か言いたそうにしている。


「アミール……ちゃんだっけ。どうしたの?」

「えーと……えへへ。 あの、泊るところをお探しでしたら、うちなんかどうかなと思って」

「おお、アミールの家でしたら部屋数も多いですしいいかもしれませんな」

「はい、部屋もちょうど三部屋空いているのでみなさん泊まれますよ!」

「じゃあお願いしようかな。急にお邪魔しちゃって大丈夫?」

「やったぁ!お父さんの命の恩人ですし全然大丈夫です!じゃあ、お部屋のお掃除してきますね!!」


 はは、明るくてかわいくて。なんかエブンズダール冒険者ギルドのネイルさんを思い出すなぁ。


 そして、子供たちはたくましいもんだ。あんな怖い目に遭ったのに、もう村の中を元気に駆け回っている。


 なんか、いい村だなぁここ。


「あ!!勇者様だ!!」


 子供たちが俺たちの下へ集まってきた。


「もう暗くなるからお家へ帰るんだよ」

「大丈夫だよ!今日は宴だから大人の人たちもいっぱいいるし暗くなっても遊んでていいんだって!」

「そうなんだ、はしゃぎすぎて転ぶなよー」

「うん!! じゃあね勇者様ー!!USA!!USA!!」

「アハハハハ!!USAー!!USAー!!」


 子供たちの天真爛漫さには、ホント心が洗われる気がする。


「勇者ごっこしようぜ!!おれ勇者な!」

「じゃあぼく魔族!!」

「私は仲間の魔法使いー!!」

「行くぞ魔族!てやーー!!」

「くっ!やられたぁ!!」

「ははははは!!USA!!USA!!」



 ん?



「USA!!USA!!」



 おいちょっと待て、それって……


「どうかしたんですか?凛人さん」

「――い、いや……」



 耳にしたことがあるその言葉に困惑し、俺は眉をひそめた。



USA!! USA!!


♦筆者イットより♦

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