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第5話 オリハルコンの冒険者

 俺は兵士たちに挟まれ、どうやら辺境伯とやらの屋敷に連れて行かれるらしい……

 エンデルさんたちは心配そうにその様子を見ている。


「リントさん、どうかご武運を」


 何やらエンデルさんが不吉なことを言っているが、ここは下手に抗わないほうが良いだろうと俺は大人しく連行されていった。


 街の人たちの視線が痛い……痛すぎる!

 そりゃそうだ、一般人がこんな人数の兵士に連行されてたら見た目は犯罪者でしかない。

 それに俺の見た目も珍しいみたいだしなおさらだ。


 しばし歩くと、ものすごい豪邸の前に着いた。


「ここがカッセル辺境伯様のお屋敷だ、しばし待っていろ。大人しくしていろよ」


 そう言うと、一人の兵士は屋敷の中に入っていった。


「ま、まさか投獄とかされませんよね?ハハハ……」

 と、隣にいた兵士に話しかけたが華麗に無視された。悲しすぎる。



「あら、彼が例の不審人物かしら?」



 後ろから話しかけてきた女性がいる。綺麗な声だ。それにしても声がずいぶんと上の方から聞こえたような……


 俺は後ろを振り向いた。……ん? ピンクの壁??

 そおっと上を見上げてみた。



「ひええええええええええぇぇ!!!!!!」



 すぐ後ろには巨大な人間が立っていた。

 3メートル?いやそれ以上はありそうな巨躯に俺は尻もちをついた。


「女性に対してあげる声じゃないんじゃない。そんなに驚かせちゃった?」


 女性?は俺の非礼に怒ったりはせず、ニコッと微笑んだ。

 綺麗な金髪に左右の三つ編み。絵本のお姫様のようなピンクのドレス。うん、女性だ。

 俺はそう言い聞かせた。ムッキムキだが……


 兵士たちが「メイ様!」と片膝をついた。


「あなたたち、私がいるからここは大丈夫よ。下がっていいわ」

「はっ!」


 その一言で兵士たちは街へと戻って行った。


「突然悪かったわね、お屋敷に入りましょう」


 女性は微笑んで屋敷へと歩いて行った。そういえば、メイってどこかで聞いたような。

 

「メイ様、お帰りなさいませ」


 屋敷の扉からぞろぞろと黒いタキシードに身を包んだ者たちが現れ、左右の通路に並びひざまずいた。

 一人は通路に立ち、メイをエスコートしている。


「ありがとう、セドリック」


 俺は驚いた。


 全員、超絶イケメンの嵐である。〇ャニーズなんてものじゃない、男の俺でもたじろぐくらいのイケメンである。


「あ、あの、彼らは?」

俺はメイに尋ねてみた。


「彼たちはグッド・ルッキング・ガイたちよ。屋敷での世話係みたいなものよ、私のね」


 お貴族様の世界はとんでもないものだ……凡人の俺には理解が及ばない。


 屋敷に入ると、待ちかねたように一人の女の子が部屋から飛び出してきた。


「お姉さま!おかえりなさい!」


「ただいまフローラ」


 女の子はメイに飛びつくと。メイは難なくその子をひょいと持ち上げ肩に乗せた。


 グレーになびくロングヘアが似合うとても可愛い女の子だ。中学生くらいだろうか。


 「こっちよ、ついてきて」


 メイに二階に案内された俺は後をついていく。


 さっき屋敷に入って行った兵士が「メイ様!」と立て膝をつき「旦那様はあちらの部屋に」とメイに伝えている。


「私はメイ・アーバンデイルよ。この子は妹のフローラ。あなたのお名前は?」

「瀬川凛人です」

「珍しい名前ね、出身はどこなの?」


 ハイきたぁ!やっぱこうなるよな……戸籍なんか調べられないだろうし、次からは偽名でも名乗ろうか。

 そう俺は思った。失敗した。


「ア、アベリーゼ共和国です」

「南の多民族が住む都市国家の集まりよね。長旅だったわね」

「はいそうなんですよ~」


 うまく誤魔化せただろうか、なんかその国を知ってるような口ぶりだったけど……

 

 メイは二階中央のドアの前で止まり、フローラを肩から下ろした。


「フローラ、お姉ちゃんたちはパパと少しお話があるから下で待っててくれる?」

「わかったわお姉さま、早く来てね」


 フローラは少し残念そうに下へ降りて行った。


「パパ、入るわよ」


 そう言うとメイはドアを開けた。


 部屋の奥には長身の男性が窓の外を眺めて立っていた。


「入りなさい」


 少し冷たい声にいざなわれ、俺は部屋へと入った。

 広いが、大貴族の部屋にしてはやや殺風景な印象を受けた。わずかな書棚と机だけが置いてある。

 ミニマリストが貴族で流行ってるのかな?



 男性が振り向くと、俺は戦慄を覚えた。鋭い目つきが突き刺して来る。俺は顔を背けたい気持ちでいっぱいになった。


「私はこのカッセル地方を治めるエディアノイ・アーバンデイルだ」

「せ、瀬川……凛人です」


「私は無駄な話が嫌いでね、単刀直入に聞かせてもらう」


 俺が生つばを飲み込む音が静かな部屋に響く。




「君はあの森で何をしていたのかね?」




 バレていた。何で知っているんだ?どうして……

 思考が目まぐるしく動き動揺していると彼は間髪入れずに口を開いた。


「そこにいるメイは、世界に10人もいないとされているオリハルコンの称号を持つ冒険者だ。魔族の将をも退けるまさに豪傑。そして私も、まだゴールドの称号を持つ者たちに引けを取らないと自負している」


 何言ってるんだこの人……世界に10人のオリハルコンの冒険者?称号?魔族!?

 とんでもないことは理解できる。でも、なぜそんなことを俺に?


 鋭い視線と彼から感じる言いしれない迫力の影響で俺の思考はうまく回らなくなっていた。




「返答次第では今ここで君を殺さなければならないが、その沈黙が君の答えかね?」



お読みいただきありがとうございます!


エディアノイは融通の利かない男。

でも仕方ないのです。国境を守護する彼の、王への忠誠はとても高い。

疑わしきは罰せよ!な人です。

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