第45話 死闘
見た目は超巨大なモンゴリアンデスワーム。
それがこいつらの正体だ。
まさか、異世界に来てこいつに出会い、戦うことになるとは思わなかった。
まあ、ここにきて色んな魔物と遭遇はしたけど、オカルト雑誌編集者として地球上のUMAとの遭遇はこの上ない光栄なことだ。(想像よりだいぶデカいけど……)
くぅ~! こいつの写真を撮って編集長に見せたら腰を抜かすだろうな。
俺は、込み上げてきた微笑をこらえながら剣にオーラを込め続けた。
剣のブレイドで金色に波うっていたオーラの揺らめきが研ぎ澄まされ、耳鳴りのような音の糸が響く。
「残念だけど、お前たちはここで仕留めさせてもらうぜ」
俺は風のような速度で地を蹴り、走り出した。
そして、強く地面を蹴り飛び上がる。
「はぁぁぁぁぁあああ!!!! 覇気断――――」
「ブオオオオオオオオオオォォォォ――――――!!!!!!!!!!!!」
突如として、二匹が俺に向けて空気を破裂させるような、とてつもない咆哮を上げた。
「――うっ!!!!」
俺の動きはその咆哮の衝撃により停止させられ、敵の目前、しかも動きが制限される空中で無防備な姿を晒してしまった。
グラトニー・デスクランプスの腹部が隆起し、その隆起が口の方へと移動していく。
そして、黄緑色の液体がその大きく開いた口から放出され俺へと直撃した。
「し、しまっ!!!! うああああああああ――――!!!!!!!!」
超高圧の液体に、俺は村を飛び越え音速で吹き飛ばされてしまった。
「凛人さんっ!!!!」
「リント様――!!!!」
「――よくも我が主を!!!!」
セレイナはかつてない鋭い表情を見せ、手の甲を前へ向け胸の前でクロスさせた。
「アァ――――――――――!!!!!!!!」
セレイナの背に両翼の翼が激しく、壮大に顕現し、大きく開いた。
「ディヴァイン・レイン!!!!」
神の降臨かと見紛うほどに雲間が眩く光り、空から無数の光槍が降り注ぐ。
その光槍の雨は光線のように、まさに神罰のごとくグラトニー・デスクランプスたちの巨躯を貫き、地面に底が見えない穴をあけていく。
身体中を貫かれたグラトニー・デスクランプスたちはもんどり打ち、苦しんでいるミミズのように身体をグネグネとさせ地表を揺らしている。
「凛人さん!!!!」
術を終え、両翼が光の粒子となって消えると、セレイナはすぐさま凛人の下へ飛んだ。
「―――ぐっ……くそ、油断した……」
吹き飛ばされた俺は、グラトニー・デスクランプスの液体により身体が溶かされ、上半身と左腕がかろうじて残っているだけの状態になっていた。
「くっ……早く、戻らないといけないのに…… ――他人の傷はすぐ治せるのに……自分の傷は自己治癒待ちかよ」
完全に俺の慢心だった……
損傷が酷すぎることもあってか、身体の治癒に時間がかかっている。
このままじゃ村が…… その時、セレイナが俺の下へ駆けつけた。
「凛人さん!!大丈夫ですか!?」
「せ、セレイナ。――ごめん、油断した。それよりセフィリアと……村は」
「――申し訳ございません。主である凛人さんをお守りすることが私の最優先事項です」
「……そうか、そうだったね…… ごめん、カッコ悪い所見せちゃったね」
「そんなことはありません、それよりも今お治しいたします」
「――この状態で……治せるの?」
「はい。凛人さんは不死ゆえに体内のマナが枯渇しませんので、問題なく」
「そうか。頼むセレイナ……早く戻らないと」
「はい、今すぐにお助けいたします」
セレイナは最上位のアストラルヒールを展開し、俺の四肢は元の姿を取り戻していった。
「ふぅ。ありがとうセレイナ!」
「は、はい。――痛むところとかは……ございませんか?」
「俺はもう大丈夫だけど、どうしたの!? だ、大丈夫セレイナ!」
「はい……少しマナを使い過ぎたようです。凛人さんが回復なされたので、私もじきに戻ると思います」
セレイナは少し苦しそうだ……
最上位クラスの魔法を何度も使っていたのと、俺が瀕死になったせいでセレイナに回せるマナが滞ってしまったせいか……
主としてなんとも不甲斐ない。
俺は自分を殴りつけたい気持ちでいっぱいになった。
星骸はすごい存在だ、まさに比類なき存在。でも、俺が大地から享受しているマナあっての存在。
俺に何かあればセレイナ達はその力を長くは維持できない。
セレイナを護るって決めたのに、俺が彼女の弱点になっちまってる。――へっ、笑えねえ……
「笑えねえよッッ!!!!!!!!」
俺は、手の平から血が出るほどに拳を握り締め立ち上がった。
「凛人、さん?」
「――セレイナはここにいて。大丈夫、もう油断も慢心もない」
激しくうごめいていたグラトニー・デスクランプスたちはその巨体を起こし、村へと這い出そうとしていた。
「ディヴァイン・レインを受けてまだ動けるなんて――」
「あの手の生き物は少々潰れたってなかなか死なないからね。俺が何とかしてみるよ」
「はい、私も回復次第すぐに駆け付けます。無理はなさらないでくださいね、凛人さん」
「ああ!」
俺は自慢の足で走り出した。
あいつらはかつてない強敵だ。不用意に突っこんでもまたあの雄たけびと強酸の体液の餌食。
離れて戦うしかないけど、セレイナのあの攻撃を受けても致命傷にならない体にどうすれば……
――出し惜しみはしていられない。使うとしばらく動けなくなるけど、今できる全力をぶつけるしか方法はない。それでダメならもう――
俺は走りながら全精神を統一し、取り込んだマナを一気に極限までオーラへと変換していく。
一か八か!!!!
「オーバードライブ!!!!!!!!」
一定時間、身体能力と剣速を極限まで引き上げる超強化状態へと持って行く技。
常人ならば肉体が耐えきれず、命すら奪いかねないほど身体への負担が想像を絶するものになるが、不死ゆえにそれを度外視できる俺特有の技。
オーラ変換は、本来は身体の様子を都度確認しながら、己が肉体と対話をしながらするもの。
身体を循環しているマナをオーラへと変換すると加速度的にその循環が早まり、体内に熱を産む。
この技は一気に自分の限界までオーラ変換をするため、身体への負担が計り知れない。マナの総量が多い俺なら尚のことその負担は大きいものになる。
「うっ!! ぐううううううッッ!!!!」
急速に変換されたオーラが高速で体内を駆け巡り、全身の血液が沸騰を始める。
「うおおおおおおおおぉぉぉおおおおお!!!!!!!!」
走るたびに蹴りだす凛人の足が、地面を砕き始めた。
高速で走りながら、凛人は100を超えるフレイムバレットを展開し、グラトニー・デスクランプスたちへ向けて発射する。
撃ち終わればまた次、そしてまた次。
走りながら前から、横から、後ろから。無尽蔵に炎の塊を発射していく。
「す……すごい――」
村人たちが悲鳴を上げ伏せる中、瀕死の重体だったところを凛人に救われたユーノの娘が、その光景を地面に座り込んで見つめていた。
俺はやつらの隙をうかがっていた。
致命傷にはならないが、確実に奴らのHPは削っていけている。でも、このオーバードライブは長くは持たない。
奴らは攻撃を受けながらも機敏に、その巨体を翻し俺の動きを追ってくる。
だが奴らも、距離を取り近づいてこない俺に攻撃の手段がないらしく、炎の弾幕を受けて唸り声を上げているだけだ。
――――もう限界かと思ったその時だった。
フレイムバレットの弾幕を口内に受けた一体が体勢を崩し、隣のグラトニー・デスクランプスへと倒れ込み奴らの陣形が崩れた。
今だッッッ!!!!
この機は逃せないと、俺は再び地面を砕き中空へと飛んだ。
「はあああああああッッッ!!!!」
俺はありったけの濃密なオーラを剣へと送り、天高く剣を構えた。
「覇気断界ッッッッ!!!!!!!!」
俺は横たわる魔物の首元に、渾身の剣を振り下ろした。
剣に濃密なオーラを纏わせ、振り下ろした瞬間、目に見えない圧縮斬撃が物理防御を無視し鎧ごと内部を破壊する“内部破壊型”の一撃の剣技。
こいつらの頑丈な皮膚層を切断するにはこの技が最適だと判断した。
オーバードライブで強化した覇気断界。これでダメなら――――
「く、クソッ!!!!」
しかし、俺の剣は巨木を何倍にもした太いその胴の7割を切り裂いたが、切断するまでには至らなかった。
切断されかけ致命傷は与えたものの、その一体は激しく暴れ、振り回した巨大な尾の直撃を受けた俺は、村の家々を破壊し吹き飛ばされた。
「カハッ!!!! ゲホッゲホ!! ――万事休すか……」
残りの二体がその巨体で村を押しつぶそうとしたその時、瞬きほど短い稲光が二度点滅した。
その瞬間、身体の中まで響くほどの雷鳴が鳴り、二体のグラトニー・デスクランプスの身体を稲妻が貫通した。
「――――!? は、はは!! 遅いんだよ、まったく」
天からその男は、金色の瞳を雷光のように発光させ、爆ぜる稲妻とともに降り立つ。
「お待たせして申し訳ございません。リント様」
♦筆者イットより♦
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