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第23話 R・P・G

「星骸の一人、ベルセフォネの力があれば、なんとかなるかもしれません」


 セレイナの言葉に、場は静まり返った。

 エディアノイさんは、ユリア様の回復への兆しと共に『星骸』という言葉にも反応し、複雑な顔をしている。


 そういえば、エディアノイさんはセレイナに初めて会った時も、星骸と言う言葉に畏怖し、膝を落としていた。

 確かあの時は、なぜ星骸が復活したのかという質問のあと、すぐに兵が入ってきたため、会話は途中で終わってしまったが……


 俺は、その質問の答えを知っている。もし、エディアノイさんがそのことについて聞いて来たら、全てを打ち明けてみようと俺は思っていた。


 そして、その時はすぐにやってきた。


「……セレイナ様。その前に、私には確かめねばならない事がございます」

「なんでしょう?」

「500年前の星魔大戦の時、あなた方星骸は、女神の使徒としてこの地に顕現し、世界を掌握しようとしていた魔族を打ち倒してくださいました。……今回は、何の目的のために再び姿をお見せになられたのでしょうか」

「私たち六人の星骸に与えられた役割りはこの星の維持、安寧にあります。私たちを復活させた主の(もと)、『R()uin《破滅》』『P()urge《浄化》』『G()enesis《創世》』これらを行うことが我々の役目です」


「各地に増えている瘴気、ですか……」

「はい」


 気を使ったのか、セレイナは言葉を濁したが、エディアノイさんは自分らの現状を察したようだった。メイさんも俯き、拳に力を入れている。その顔はどこか、自分の力ではその現状を打破できない不甲斐なさから、自分自身に憤っている。そんな風に俺には見えた。



 ――そう、ストレイアが俺に求めていたのは、この世界の自浄作用としての役割。



 残酷な宣告だ。実質、自分たちを滅ぼすと言われているのと同時に、それを行使する人物が目の前にいる。

 そして先の戦いで、その力の片鱗をまざまざと見せつけられている。さらに、同等の力を宿した星骸があと五人いるという事実。


 さすがの豪傑であるメイさんからも、力でそれに抗おうという雰囲気は見て取れない。


「――セレイナさん。復活させた主って、リントのことよね?」


 陰鬱とした空気が立ち込める中、顔を上げたメイさんが尋ねた。


「はい、そうです」


 セレイナの返答のあと、メイさんの視線はこちらの方へと動き俺の所で止まった。その眼には警戒や怒りなどの類は一切なく、ただ、静かに俺が口を開くのを待っているように見えた。


「俺の話を、嘘偽りのない真実として聞いてくれますか?」


 メイさんは静かにうなずき、エディアノイさんも「聞こう」と一言だけ発した。


 自分の正体を話すことで、どのような反応が返ってくるのか。

 起こりうる最悪なケースを想像してしまう俺の悪い癖は、俺の呼吸を圧迫し、息苦しさを感じさせた。

 それでも俺は、この決心が揺らがないうちに話してしまおうと、無理やり息を大きく吸い込み、吐き出した。

 

 

「――俺は、この世界の人間じゃありません。異世界から女神に連れて来られました」



 一瞬の間が空き、二人からは驚きの声が漏れた。


「異世界って……どういうこと?」

「俺がいたのは地球と言う異世界の星です。仕事で出向いていた森の中で女神ストレイアと出会い、ここへ転生と言う形で連れてこられたんです。――そして、俺はストレイアの力でこの星と同化した存在となり、不死の身体を手に入れました」


「女神ストレイア様の……使徒」


 エディアノイさんは、そう呟くと俺の下へ歩み寄ってきた。

 彼は俺の目をまっすぐに見つめてきた。その目は、いつもの突き刺すような刃を宿したものではなく、紳士的な目だった。


「ストレイア様は、この世界の多くの者たちが信仰する新星教の神だ。その使徒である君に私は酷い態度を取ってしまった。膝まづいて許しを請うべきだろうか」

「気にしないでください。俺が隠していたのも悪いですし、今まで通り接して頂ければ嬉しいです」

「寛大なお心遣い、感謝する」


 そういうと、エディアノイは右手を差し出してきた。

 俺もそれに笑顔で応え、二つの手は力強く結ばれた。


「ようやく、あなたがあの森から生きて出て来られた理由が分かったわ。まさか、神の使いだなんて思いもしなかったけど」

「打ち明けるのが遅くなってすみません。どんな反応をされるのか怖くて……」


 俺は安堵していた。いや、安堵と言うよりはスッキリしたというか……

 自分のことを知って、理解してくれる人がいるというのはやっぱり嬉しいものだ。


 そして、打ち明けるタイミング的には今が正解だったと思う。

 メイさんは貴賤のない性格の人だけど、いきなりこんな話をされても、俺一人では正直信じてはもらえなかっただろう。

 セレイナの存在が、俺のこんな突拍子のない話もまごうことなき真実へと押し上げてくれる。

 俺にとって、セレイナはメシア様だ。


「フフ。それで、あなたはどうするの?500年前の星魔大戦みたいに私たちを粛正するのかしら?」

「ストレイアに言われた使命はその通りです。でも、どうせなら俺は俺のやり方で世界を救いたい。――だから、俺自身の目で、世界を見て回りたいと思ってます」

「あなたらしい答えで安心したわ。私は、その旅であなたが導き出した答えを受け入れる。それが、例え破滅であっても」


 俺は俯いてただ頷いた。言葉を出そうとしたけど、胸の辺りで閊えて声帯を振動させるに至らなかった。

 その様子を察してくれたメイさんは、――辛い役目ね。と一言だけ声をかけてくれた。大きな手が、優しく俺の肩に触れた。


 様々な種族、人々の争いが瘴気を産み、星を腐らせている。

 でも、こんなにも良い人達が存在するのも事実であり、ただ滅ぼせばいいと俺は思わない。

 じゃあどうすればいいのか。それには残りの星骸の力が必要だと俺は考えていた。


 セレイナ一人でもこんなに心強いんだ、未だ見ぬ彼らは、きっとちっぽけな俺の、大きな力になってくれるに違いない。


 その前にマリア様の件もある。早く探しに行かないといけないんだ。


「セレイナは星骸の位置がわかってる様だったけど、どの辺かわかる?」


 目を瞑ったセレイナの額の紋様が鈍く光る。


「はい、一人は、ここから東。そう遠くない場所にいます」

「ここから東だと、ポートイリスの街がある」

「ポートイリス?」

「ああ、リンスデール伯爵が治める港町だ。――そこに、妻を治してくれるかもしれない星骸様が?」

「いえ、ベルセフォネの反応はここから南東へ大分遠く。千キロほど離れた位置に感じます。東に感じるのは、多分フェリドゥーンかと」


 フェリドゥーン。その名前を聞いたメイさんは、口元に手をやり何かを思い出そうとしているように見える。


「ここから南東に千キロというと、おそらくは国外。オルディア王国内でしょうな。――国外となると、私が今出向くわけには……」


 エディアノイさんは悔しそうに肩を落とした。愛する奥さんを一刻でも早く助けたいんだろう。

 ユリア様の為にも、俺たちも行動を早めないといけない。

 メイさんに受けた恩も返せるし、他の国も見ることが出来て一石二鳥だ。


 オルディアには俺たちが向かうとして、まずはこの国にいるというもう一人の星骸に会ってからだな。

 仲間は多いほうが道中も賑やかになるってもんだ。……セレイナと二人の時間が無くなるのは少し残念だけど、強い仲間は一人でも多いほうが良い。


「思い出したわ!」


 メイさんが突然手を叩き声を上げた。


「フェリドゥーンってリンスデール伯爵の執事よ。会ったのは三年前だけど、なかなかできそうな男だったから印象が強かったのよね」

「執事って…… え!?同姓同名って事はないですよね」

「――この前、彼の存在を感じ取った時から違和感があったんですけど。どういうわけかフェリドゥーンはすでに復活しているようです。マナの反応は大分小さいのですが」

「弱ってるってこと?」

「いえ、弱っているわけではないと思いますけど、本来の彼が持つマナの十分の一程しか感じ取れないので」


 これは早急に確かめに行かないといけない。普通の人間では三年も星骸を従者にはできないはず。セレイナは、数日で命を落とすと言っていた。


 それが復活しているってことは……



 俺は、これからの行動をエディアノイさんに伝えた。

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