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学校で成績優秀生の完璧超人の義妹が俺に隠れて、VTuberとしてネトゲ配信してたんだが  作者: 沢田美


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9/15

自分の本心

 家に帰宅した私はゆっくりと玄関扉を閉めた。

 私の脳裏にはお兄ちゃんへの想いと、不知火さんが放った『好き』という言葉。

 お兄ちゃんを独占したいのは私も同じ。だから、少しでも不知火さんとの距離を縮めるためにも私は『さすまた』として配信を続けなきゃ。お兄ちゃんに私の想いを伝え続けなきゃ。

 靴を脱いで玄関をあがった時、視線の先にはお兄ちゃんが立っていた。


「お、お兄ちゃん……」


 思わず声が震える。


「おかえり、涼香」


 優しくお兄ちゃんが言う。その声に、胸が締め付けられる。


「なぁ、涼香。今日は配信しないのか?」


 お兄ちゃんはただ自然と聞いてきた。その顔は心配してるような表情で、私は思わずお兄ちゃんの顔を見つめた。


 ……お兄ちゃん、待っててくれたの?


 私のために?


 そして、私は口を開いた。

 

「するよ」


 それを聞いたお兄ちゃんは目を見開いた。


「本当か!」


「うん、お兄ちゃんに『さすまた』の――いや、私を見てもらいたいから! お兄ちゃんだけに!」


 少しでも不知火さんとの距離を埋めるためにも、私には配信をしなきゃいけないという葛藤があった。『さすまた』としてなら、お兄ちゃんに素直に甘えられる。お兄ちゃんへの想いを、堂々と口にできる。


「だから、お兄ちゃん。手伝ってくれる? 私の隣に、いてくれる?」


「任せろ、俺はお前の兄貴だからな」


 お兄ちゃんが、優しく微笑む。


 その笑顔を見て、私の心が温かくなる。


 ああ、やっぱり私は――お兄ちゃんが好きだ。


 不知火さんには、絶対に負けたくない。


「じゃあ、準備しよう。お兄ちゃん」


「ああ」


 私たちはお互いを見つめ合い、そして、理解したように頷いた。


 私は二階に駆け上がって、自分の部屋に入った。


 配信機材が並ぶ部屋。壁一面に貼られた、お兄ちゃんの写真。


 この部屋こそが、私の本当の姿。


 優等生の仮面を脱いで、お兄ちゃんへの想いを全開にできる場所。


 私は素早く着替えて、ピンクのパーカーを着る。眼鏡をかけて、髪を適当に結ぶ。


 そして、配信の準備を始める。


 モニターを立ち上げて、マイクの接続を確認して、アバターを起動する。


 コンコン。


 ドアがノックされた。


「涼香、入っていいか?」


「うん、どうぞ」


 お兄ちゃんが部屋に入ってくる。


 私の配信部屋を見慣れた様子で、お兄ちゃんは配線をチェックし始める。


「音声レベル、大丈夫そうだな」


「ありがとう、お兄ちゃん」


「画質も問題ない。コメント欄の設定も……よし、完璧だ」


 お兄ちゃんの手際の良さに、私は少し見とれてしまう。


 昨日から裏方をやってもらってるけど、もうすっかり慣れてる。


「じゃあ、始めるか」


「うん」


 私は深呼吸をして、椅子に座った。


 モニターには、『さすまた』のアバターが映っている。


 ピンク色のツインテール。猫耳ヘッドセット。


 これが、私のもう一つの姿。


 お兄ちゃんに甘えられる、私の本当の姿。


「いくよ、お兄ちゃん」


「ああ、頑張れ」


 お兄ちゃんが、私の肩にそっと手を置いた。


 その温もりが、胸に染みる。


「お兄ちゃん……」


「どうした?」


「……ううん、なんでもない」


 私は小さく微笑んで、配信開始ボタンを押した。


 画面が切り替わる。


 コメント欄が流れ始める。


 視聴者数が、みるみる増えていく。


「はいどもー! さすまたデース! 今日はね……ちょっと特別な配信にしようと思うんだ」


 私は、いつもより少しだけ声を震わせながら言った。


「今日は、お兄ちゃんの話、たくさんしちゃうから……みんな、聞いててね」


 コメント欄が一気に加速する。


 『きたあああ!』

 『ブラコン全開モードか!』

 『お兄ちゃん話待ってた!』


 私は、画面の向こうのリスナーたちに向かって――いや、部屋の隅にいるお兄ちゃんに向かって、語り始めた。


 私の想いを。


 全部、全部。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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