妹の監視から始まるデート
「わ、分かった」
気づけば俺の口は勝手に動いていた。
その瞬間、不知火はぱぁっと顔を明るくして――ほんの少しだけ小さくガッツポーズしたのを、俺は見逃さなかった。
え、今ガッツポーズしたよな? あの清楚系天然女子が?
「じゃあ放課後ねっ!」
「あ、あぁ……」
そう言って教室へと戻っていく不知火。
その背中を見送った俺の頭の中では、警報が鳴り響いていた。
まずい。これ、もしかしなくても“デート”だよな? いや、違う! きっと勘違いだ! “放課後の買い物”とか、“相談事”とか……!
必死に自分を誤魔化していたその時。
「――へぇ、デート、なんだ」
後ろから、ドス黒い声。
振り返ると、廊下の角から笑顔ゼロの涼香が覗いていた。
「……い、いつからいた?」
「最初から。ばっちり。“放課後ねっ”って、はっきり聞こえたよ?」
笑顔のまま、目が一切笑ってない。
あ、これ完全に詰んだ。
「べ、別にデートっていうか……その、あれだ。相談! 進路相談的な!」
「へぇ~? 不知火先輩って、そんなに進路に悩んでるんだ?」
「い、いやそれは……えっと……!」
涼香がゆっくり歩いてくる。
顔は笑っているけど、背後に黒いオーラを纏っている気がする。
「お兄ちゃん、“放課後”は予定あるんだね? ふぅ~ん。じゃあ私は“夜”に一緒に出かけよっか。二人で」
「お、おう……って、夜!?」
「うん、“夜デート”。兄妹だし、問題ないよね?」
完全に目が据わってる。
もう“妹”じゃなくて“ライバル”の顔だ。
やめろ、そんな修羅場スケジュール立てるな……!
「じゃ、放課後の“浮気”楽しんできてね、お兄ちゃん♡」
「違う! 浮気じゃない!!」
――だが、誰も信じてはくれなかった。
※ ※ ※
放課後。
俺は下駄箱で靴を履きながら、頭を抱えていた。
「どうして俺は、こうなるんだ……」
「おまたせ、京極くん!」
不知火が笑顔で走ってくる。
その手には、小さな紙袋。
「これ、後で使うから。忘れないでね」
「え、なにそれ?」
「ふふ、秘密だよ。今日のデートのお楽しみ」
“デート”って言った!? この人はっきり“デート”って言ったよね!?
「え、あの、その……どこに行くんだ?」
「京極くんが楽しめるところ!」
そう言って笑う不知火。
俺が楽しめるところ……って、どこだよ!? ゲームセンター? 図書館? それとも……。
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
校門の影に、スマホを構える黒髪少女。
カメラのレンズがこちらをロックオンしている。
――京極涼香(妹・ガチ監視モード)。
「……お兄ちゃん、ちゃんと見てるからね♡」
やっぱり監視してるぅぅぅ!?
俺の地獄の一日が、今ここに始まった――。
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