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学校で成績優秀生の完璧超人の義妹が俺に隠れて、VTuberとしてネトゲ配信してたんだが  作者: 沢田美


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13/15

デートへの誘い

「おはよう! お兄ちゃん!」


 俺の部屋の扉を勢いよく開けて入ってくる涼香。

 あの一件以来、涼香は家の中でなりふり構わず甘えてくるようになった。優等生の仮面を完全に脱ぎ捨てて、素の自分を全開にしている。それは嬉しいようでありながら、その一方でその行為が恋愛感情から来ていることに気持ちがモヤモヤする。

 朝っぱらから俺は目を擦りながら、そのまま涼香と共にリビングに向かう。そこで母が作ってくれたフレンチトーストを頬張る。


「あら、珍しいわね。2人仲良く食べるなんて」


 母は少し驚きながら言った。

 俺はその言葉に少しだけ気まずくなった。なんせその理由は昨日の涼香からの告白とも受け取れる言葉。配信で何万人もの視聴者の前で、俺への想いを吐露した涼香。


「ふふん、お兄ちゃんと仲直りしたんだ! これからはもっともっと仲良くするの!」


 涼香が嬉しそうに言う。その顔は、昨日涙を流していたとは思えないほど明るい。


「そう! それじゃあ頑張って学校に行ってきなさいよ」


 母がそう言い、俺は涼香と共に学校に向かった。


 ※ ※ ※


 校門を通れば相変わらず俺の隣にいた涼香は、涼香のファンクラブのメンバーに囲まれていた。

 

「涼香さん、おはようございます!」

「今日もお綺麗ですね!」

「昨日のテスト、どうでした?」


 涼香は優雅に微笑みながら、一人一人に丁寧に応対している。その姿は、まさに完璧な優等生。昨日、配信で泣きながら俺への想いを語っていた涼香とは別人のようだ。


 俺はそのファンクラブのメンバーに突き飛ばされるように押された。

 相変わらずの人気さだな……。

 そんなことを思いながら俺はそのまま校舎へと向かう。


 でも、涼香は一瞬だけ――振り返って、俺を見た。


 優等生の笑顔の下に、少しだけ寂しそうな光が宿っている。


 『お兄ちゃん、行かないで』


 そう言いたげな目だった。


「おはよう、京極くん」


 校舎の下駄箱に来ると、そこには不知火が立っていた。いつも通りのおっとりとした雰囲気に俺は少しばかり彼女に癒される。


「涼香さんは相変わらず人気者だね〜」


「そうだな、でもアイツもアイツで大変だろうな」


 本当の自分を隠して、優等生を演じ続けるのは、きっと疲れる。


「ねぇ京極くん、今日一緒に帰らない?」


「あぁまぁ別にいいけど。珍しいな、不知火から誘ってくるなんて」


 不知火に視線を向けると、彼女は少しどこか頬を赤らめているような顔をしている。俺はそれに違和感を抱きながらも、そのまま教室に向かった。


 ……不知火のことも、ちゃんと考えなきゃな。


 涼香のこと。不知火のこと。


 両方を天秤にかけるのは、間違ってる気がする。


 でも、俺は――。


「よ! 健星」


 教室に入ると早速優作が声をかけてきた。俺はそれに挨拶を交わして席に座る。

 すると、優作はどこか不敵な笑みを浮かべながら、俺の席に歩み寄る。


「なぁ見たか? 昨日のさすまたの配信」


 その言葉に俺は固まった。昨日の配信、それは涼香の本音だけが詰まった配信だった。俺への間接的な告白。いや、直接的な告白。昨日の出来事がフラッシュバックする。


「俺めちゃくちゃ感動したよ。あそこまでお兄ちゃん要素が強いと、本当にお兄ちゃんいると思うぜ。というか、絶対いるだろ。あの本気度は演技じゃない」


「そ、そうだな……」


 いる。目の前に。というか、お前のクラスメイトだ。


「てかよ、涼香さんは家では普段何してんだ?」


「なんで急にそんなこと聞くんだ?」


「いやだってよ。成績優秀、圧倒的な美貌、全てが完璧な人がどんな生活してるのか気になったからよ」


「……まぁ案外普通だぞ」


 嘘だ。普段は涼香は『さすまた』としてライブ配信を欠かさずやっている。一般的な女子高生と比べて全く違う生活をしている。壁には俺の写真が貼ってあるし、配信機材だらけだし、俺の部屋には監視カメラがついてるし――。


「普通に洗顔とか勉強したりしてるな。あとは……本を読んだり」


「そうか〜。なぁもしさ、俺が涼香さんと良い感じになったら俺お前のことお兄さんて言わなきゃいけねぇんだろ?」


「何言ってんだよ、寝言は寝て言え」


 お前に涼香は渡さない――そんな感情が、一瞬だけ湧いた。


 ……え?


 今、俺は何を思った?


 俺と優作が会話をしていた時だった。


「京極くん、ちょっといいかな」


 俺と優作の会話に割って入るように不知火が現れた。


「ちょっと2人っきりで話したいから。廊下で話さない?」


 その表情は、いつもより少しだけ真剣だった。


 ※ ※ ※


 廊下へと連れ出された俺はそのまま不知火に視線をつけていた。不知火の表情はいつものおっとりとした雰囲気とは裏腹に真面目な雰囲気が漂っている。


 窓の外では、生徒たちが体育の授業をしている。その声が、遠くから聞こえてくる。


 不知火は、少しだけ俯いて――それから、顔を上げた。


「今日、私とデートして欲しいんだ」


「は?」


 思わず聞き返す。


 デート?


 不知火が?


 俺に?


「放課後、一緒に出かけてほしいの。行きたい場所があるんだ」


 不知火の頬が、少しだけ赤い。


「わ、分かった」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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