タイトル未定
湿気の強い。日差しの当たりにくい森を歩き始める。
里にいた時は、森は、歩きやすく風通しの良く、日差しの入りが心地いい事が、普通だと思っていたけど、少しでも出ればその表情はない。こんなに歩きにくく、温度がしんどい場所だとは思わなかった。
不慣れな道をきを付けながら、背中を追うようにできるだけ急いでいた。
リアではない、その女性の背中を追うように、私は違う事を始めたんだと改めて思う。
「助かった」歩みは止まることもなかったが、確かに前方から小さく聞こえた。言葉を聞き返す余裕はない私は、小さくなってゆくその背中は、語りながら森を進む「実際、君があの言葉を言わなかったら、私はとっくにこの場所にはいなかっただろう。簡単に死んでいたかもしれない」
不思議な事を言っている。彼女の動きを思い出しながら、彼女の言っている意味を探す。あの時、振り回し続けるエルドラは、意地でも掴み続けるリアを、どうにでもできる位置に代わっていた。実際、簡単に勝てていたんじゃないだろうか。槍を振り回すことでそのまま跳ね飛ばしても、そのままたたきつけるようにしたとしても有利には働いていた。
そんな有利な状況の彼女が、簡単に命を落とすようにも見えない。足を止めて一時停止をするように声をできるだけ張る「その、その槍さばきがあれば大丈夫じゃないですか?」声の位置を確かめるように、里を出て初めて顔が見える。彼女の口は、そのエルフの恐ろしさを物語り始める。
「君はどこまでエルフを知っている?」
どこまで知ってる。その声は私の考えは一般的な物だろう「狩りが得意で、自然の中でよく動いていて、見た目が綺麗だとかですか?」横に首を振りながら、彼女は周囲をを見ながら話し始める。
「エルフには、自然探知の塊のような存在だ。獣もある程度あるが、人間が、その地形を知ったりすることは、時間をかける事で、獣に追いつこうとしている事だとも言われている。だが、それは獣での話。エルフはそれ以上にわかるのかもな。こんな森、もしかすると、理解するのに10分もいらないだろう。それほど自然環境への探知力が鋭く、感覚的にも高いんだ。そう考えると、この自然が大きく影響している場所は、私達には不利だろうな。こんな暗い森では、私は赤子だろう」
自然の探知能力。リアさんがあの動きができてそんな力があれば、後ろからでも斬れるかもしれない。まるで普段ゆっくり歩いてるあの感じで、エルドラさんの背後をとれる実力は、今、冷静に見れば、明らかにおかしいのかもしれない。
「そんなにわかってるなら、広間では、勝てそうでしたけど勝たなかった理由は何ですか?」ついでだと言わんばかりに「手加減をする理由がそこにあるんですか?」追加で聞いてみた。
嬉しそうに「手加減がわかっていたキミも怖いね」軽く笑ったと思うと、声色は元に戻り「あれは、一人で広い空間だからだ。あの場所では腕がものをいう。それに、あの子に怪我をさせてしまう事は、私は殺してください言っているようなものだ」
「どうして?」
「君はエルフ側で育っている。あまり長くても、そうでなくても、その凄さはわかりにくいだろう」
回答を待ってるのか、少しの間があった「何故です?」よくわからない事での返答は今日はよくある日だなと、少しうんざりしながらも見つめるように聞いた。
「そうだな、ヒントをあげよう。考えてみて欲しい。君と私の関係はどうだ?
「教える人と、教わる人?」
「ちがうちがう」と一言笑いながらついてもう一つ「あの槍をくれた子と、君の関係は?」
「家族?」疑問が浮かぶ。家族だからと言って、別にあれは歯止めを利かせれるときが多かった。だからどうしてそこが紐づくのか「そう、家族だから危ないんだ」
「不思議だろうが、そういったもだ。家族は、家の者が怪我をさせられると、怒る者がいるだろう?あれだと思ってほしい。家族ではない者から受ける怪我は、どこかしらで上の者がやって来る。エルフの最年少を怪我させるということは、それだけ上の者に恨まれる可能性が高いという事だ。どんなことがあっても、見られる状況。見ているぞと、家族の関係を見ているエルフの事を、私はあの男に注意をされていた」
あの男?エルフにいる男性は少し少ない。特徴さえ分かれば、里の半分もいない事からも見つけ出すことは容易だ。だけど……ぐ~っと私のお腹が鳴る。
里を出るときは、昼時を過ぎている出発。2人ともどうしても話すことが無く静かに動いていた。たぶんエルフにつけられているかどうかもあったのだろう。
「すまない。お腹がすいていたな、もう少ししたところに良い所がある。そこまで我慢してくれ」
「はい、わかりました」
「急ぐぞ」と、一言おいて歩いている中。少しずつあたりが暗くなってゆく。だいぶたつのはわかっていたが、こんな時間まで歩き続けたのは、正直、初めてだ。
自分の足が痛みを訴えながら必死に足を上げ、痛みを減らすように落ち着いた踏み方を模索しながらついてゆく。
森の暗さは、目的の場所に行くまでにひどくなってゆく。足元が見えなくなってきたが、何となくわかってきていた。たぶん、夜見が利いているのかもしれない。エルフの里でも、そんなに暗い時間でも困ったことはなかった。
エルドラも、同じようにすいすいと動いてゆく。同じように見えているなら、この歩調は離れてゆくばかりだ。足が痛くこれ以上早くは歩けない。そう思いながらあたりを見ていると、青白い色の何かが木々の隙間を縫うように通っていった。
「エルドラさん。エルドラさんっ!」離れ始めてしまった事もあり、できるだけ大きく声をかけ何とか気がついてくれた。
振り向く姿は、周りを見るようにして「どうした?」ずっと落ち着かないように、あたりを見回しながら探している。
「もしかして見えてない?」焦った私は、少し声を上げて呼びかける「エルドラさん!さっき青白い光が木々の中を通り抜けていきましたよ」
その言葉を出した瞬間。木を揺らしながら近づいてくる何かが見える。木々にぶつかっているような音はしない。揺れる音だけが、その場所を教える。
「まずいな」
その呟きは、槍を一本構え「私が見えるか?」大声は、早口で急いでいた。私も急ぐように「今行きます」と、刺さる痛みを無視するように、音を立てて走り出す。
身体が触れるほどに近づけた。周りは音が聞こえるが何も見えない。
「何ですか?」落ち着いてるように装いながらも、内心怖かった。初めての外で何が来てるかわからないからだ。
「青白いものを見たんだろ?」落ち着いた声は小声になりながら私の手をつなぎながら、離れないように準備をしている「そうです」そう受け答えをした直後、後ろかぼやけた炎に頭蓋骨とも、人の顔のハーフのような大きな顔は、手足を無理やりつけたような身体で動いていた。あれがどんな奴かはわからなかったが、名前はわかる。
「お化けだーーーーー!!」
私の叫びをスタートの合図だと言わんばかりに「走れ!!」と、その言葉が出る前に、私の身体は少し浮きながら、逃げ始める。時々、地面をけるような形で引っ張られ続けながらも、後ろの幽霊はけたたましい動きを見せながらも、音はない。何も触れていないはずなのに、地面へと足がついて走る姿は恐ろしいものだ。
頭蓋骨だけでも、ゆうに1メートルを超えており、その周りをバタバタと動かしている足のサイズは、顔の半分。とてもじゃないが、頭であろうが、手足であろうが、当たると痛い事はわかった。
お互いに走る速度は落ちる事はなく、次第に体力が尽きたらまずいと頭が理解し始めた時には、二つの頭に増えていることに、驚きを隠せなかった。
森の中をはねるように走っているエルドラは、道がわかっているのだろうか?ただまっすぐ「もうすぐだ」と、声を出して前のほうに声をかける。
「たすけてくれええぇぇええ!!」
前方に、火の光。野営をしているような塊が見えた。人間のような小さな集団。その集団は声に反応するように、せわしなく動き回り始めた。整列しているように見える、集団の中央を通るように身体を調整し始める。集団中央を抜けた時私の身体は、空を飛んでいた。
「へ?」
地面へぶつかると思って目を閉じていたが、意外にも柔らかい場所へと当たったらしく、痛みはそんなになかった。
集団を追いかける形で、通り抜けるそうな幽霊は、足を蔦状の物がわらわらと出現し始めた。当たったのか見てわからなかったが、顔が固定されているように動かない幽霊は、手足を先ほどと違う速度で回転させながら、バランスを崩したように、あらぬ方向へと走り去っていった。
「行った?」
身体を立たせ自分より小さなその身体の集団に、私はお礼をしようと近づいた。「ありがとうございます」その礼を受け取ってか「いいって事よ」気のいい集団だと安堵した。
同じように森のほうから「助かったよ」とエルドラさんも合流したことで、一難去ったことを認識し、足を休めれると思い、安気をこいていると、続けるように言葉を聞いた時、私は一瞬止まった。
何せ、それは、眠れそうか不安になる一言だったからだ。
――――――本当に、良い所にいて助かったよ。ゴブリンの皆。