タイトル未定 2025/09/25 01:48
二人の会話を裂くように、声は響く「おはよう!素敵な歌で目覚めれたことを私は、とてもうれしく思っている」声の持ち主は、槍で音を鳴らす。鈍い音を床で鳴らしながら、歩む。
私の前までくると、二人の視線を集めながら、長槍は天井へと突き立てんとばかりに上空にあげられ、力を抜き地面へと、簡素な造りの木製の石突は地面へと鈍いながらに大きく響かせながら、主張をし続ける。その真剣でありながらも、鋭い瞳は、私を映しながらも
――――――「やぁ、初めまして……元気かな?」涼しげな笑顔を、浮かべていた。
長い白髪。上下の身体のラインを見せるスラッとした服。目に入る派手な装飾のスカート。軽いはずなのに、固定されている事で重みを見せ、型崩れをしていない造りのスカートは、足首まで伸びており、袖のラインをひらつかせている。前開きで、腰巻のような股のラインから斜めに広がり、股下丈で分けられているようにも見える三角ライン。スカートの表面には、必ず目に入る3色の石が、等間隔に数個はめ込まれた、それらはなびかせながら私を魅了していた。
不思議だ。勇ましさを感じのに、恐ろしさを感じる事はなく、ただ茫然としていた私には「そう、無理なのね」納得するような声は耳の隅を通り抜け、話の内容から、恐ろしい人が来たのかと思い込んでいたけど、想像していた人物とはかけ離れていた。
「貴方は?」
「私は、エルドラ。君を迎えに来た。エルフの里で、預かる男を私は約束日が来た事で、受け取りに来た」
強気な主張は、室内での大きな反響がさらに強調する。それは、視線を集め、他の誰よりも目立つ動きで、入り口の者でさえ、目を向けていた。集まる視線は、言葉言葉の節目に動きを加える動きに、緊張する。動じる事はなくその身振りは、少し大きく見える。
彼女は、ここで、この場の者の意見を切り捨てる様に。
「聞いてほしい。夜分遅く、ここへと足を運んできたことで、私を知らない者もいるだろう。私は彼を護受け渡し人。私の役割は、彼の身を確保し、君達も知っている村へと案内する事を、私がここで伝えさせてもらう」
まるで隠すことの無い、ただ伝えると言うばかりの声は、その場のエルフは、誰一人動くことはなかった。役割を、まるでその必要性を見るように耳を向ける。
「そんなに大きく言わなくても大丈夫。私は、彼の意見を聞いてからといったわよね?」
「それは無理でしょう!何故なら、貴方は残したいはずだ、エルフの族長。私は連れていきたい、役目を全うするため。それが今ここで言いたいこと」
エルフの長の眉が動く「禍根を残さないように、私はここでは素直に答えよう」そのまなざしの揺るがない事は、正面から見える間違いのない情報。
「残したいと同じように迷ってるはずだ。約束をどうするべきか、族長。貴方は迷っておいでだ」
「……」
「ある者は言った。人は、迷いやすいものだと、知性の有り、想いを現す、生物であればこそ、それは正しい。誰しも家族だと思っているものを、簡単に渡したくはない。また会えるかなんて、確証はないのだから、さぞ不安でしょう。だが、私は役目を重視する、それが私の今の役割でもあるからです」
「では、聞きましょう。役割を同じように大切にするエルドラ、貴方に。迷っている私にどうすることで、迷いを終わらすかを」
「では、」息を大きく吸い上げ、口はさらに広がり、里全体に響き渡るように大きく喋り始めた「願いを聞いてください。エルフの家族は、ここで私とこの少年を、黙って見逃し、里の外へと連れ出すことを、お願いする」
耳に手を当てながら、いぶかしむ表情は彼女を見る。
「うるさいわね。交渉でもなく、それはお願いよ」
「ええ、お願いです。私は役目を果たすために、お願いをする」
素直な威圧に押されたのか、叔母様は、少し困ったように考える。
「言葉での、交渉はする気はないのね?」
「あります」簡単な言葉に「なら」と、声がかかると同時に「ですが貴方は、どんな内容でも、迷いは、きっとどの言葉でも晴れはしない。私は間違わない、だから願うのです。エルフは、最後まで間違いはしないと、私の願いで示せばいい」
槍先は私を指し示すように、突き立てられる「彼は不思議だ。私が初めて会ったはずなのに、不思議とどこか懐かしさを感じる。その気持ちで迷い、道を間違えるのであれば。私は迷わず。役割を果たす」
「はぁ」と、ため息がこぼれた。目を閉じ考えている。誰しもこの状況で動くものはいなかった。素直にあそこまで喋るものが、私に矛先を向けて刺すとは、だれも思っていないからだ。
静かな熟考の中、ゆっくりと私の後ろに歩み寄ってくる気配を感じた。足音の無い、その足取りは誰だか感じ取れるほどに、慣れ親しんでいた。何時も一緒にいてくれて、慣れた足取りは隣を音もなく通り。エルドラが気がつくときには、彼女は、槍先をはねのけるように逆輪を掴んでいた。
「誰だ!?」エルドラが、驚くように叫ぶと同時に見えた光景に、一歩下がる。視線を向けた時には、私との間には、黒髪の姉が内側に立っていた事は普通は気づけるはずの距離。
その距離までに入り込み、立っているのだから。
「リアさん」
黒上を乱すことはない、立ち姿は、初めからそこに立っていた事が当たり前だった様に、静かなものだった。だが、同時に恐ろしさを感じた。
静かに口が開いた時その強い言い方は、私は聞いたことがなかった「貴方こそ、どなたです?」長槍をつたいながら、近づく姿に、少し持ち位置を変え、身構えるエルドラ。
リアが、その場でとても恐ろしい行動をとっていることは、彼女の持っている小さな刃物が物語っていた。
「やめなさい、リア」彼女を制止する族長の声は、2人の間に返事を返すことはなかった。
「族長に、言われているぞ?」
「そう。私はこの子の御守りをしている。それに矛先を向けている事、お分かりで?」
彼女、エルドラがしゃべる前に、リアの刃物は、自然にエルドラに向けてまっすぐと進んでいった。先ほど触った時動かせた槍は微動だにしない。槍を引っ張り、自身を向かわせる速度は速く、目で追いながらも一連の動作を見逃すほど早かった。
身体に刺さるすんでのところで、リアの身体は槍を横振りされ、刃は身体へと伸びきることはなかった。地面にすることもなくつかんだまま、揺れるようにぶら下がるリアを見て、この場の全員このリアの行動に驚いていた。
静かに、振られた身体を戻すようにして、すこし立ちなおす。
「これで、次も同じように挑戦できますね?」距離の変わらない状況に、長槍のうちに入り続ける事は、刃先が戻っていかない限り致命傷はない。
「これは、この子の分です。刃先を向けたのですから、向けられて当たり前。そうでしょ?」
「そうだな……」視線はおろされている刃物の先へと注視している「このまま刺さるなら、里の外には出れませんよ?」
静かな時間だ。先ほどしゃべた両者は決して動きもしない。返答もなく、両者見合うだけの事が続いている。槍が引けば、刃物が刺さり、伸ばせば伝って近づいてくる。動けない事が、素人目からも見て取れた。
エルドラさんは動けないのはわかるけど、リアさんはどうしてそのまま動かないのか、わからなかった。正直、そのまま刺せばいいとも思っていたからだ。
身長差は確かにエルドラさんのほうが高い。見たところ2メートルいかないぐらい?その慎重さは足を使えるけど、足を使えば切ってくくださいとも言える。
「謝れば、許してあげます?」
「ならば、謝ろう。ついでに、彼と一緒に里を出してもらいたい」
「わかり合うのは無理ですね」
リアがにじり動くとき、足が上がるその瞬間、エルドラは槍を振り回し始める。自分を軸に開店をし始めた。軽いリアは振り回されるように槍と一緒に回転している。
「降参しろ、今なら痛みはお互いにないまま終われる」
少しづつ早く回り始めると、リアは手の位置が、少しづつ槍先へとずれていっている。
「……引かない」
ずれ動き始めて止まらない回転は、徐々に回転を弱めてゆく。そのまま回転すれば、飛んでゆくか手を怪我をする。それはわかる。だが、自身の命を狙う人に現状で手を緩める理由がわからない。
優位にいるエルドラの顔は、どこか困っていた。
再び、同じような状況になるように、再び立ちなおすリアは、少しふらつきながらもまっすぐと目でとらえていた。
このままじゃぁ、危ない。私は、立ち上がりリアさんの刃物を持っている手首をつかむように身体を動かしていた。
「待って待って!待ってください」
呼び止める声に、二人は私へと視線を向け止まった。どこからか「ふぅ」っと小さく貯めていた息を出す声が続けるように聞こえた。
「どうしました?」
「リアさん。やめましょうよ、刺す理由なんてないんですよ」
「刺さなくとも、弱まればいいんです。貴方を、ここで私が見てます」
リアさんらしからない発言。いつものリアさんは冷静で落ち着いて、他の人ほど表に見せないけど優しくて。冷静なリアさんの目は、睨むように私を見ながらずっとにらみつける。
何時もそれは冷たい目で、私は、目が覚めてから、感じてた視線。ずっとリアさんと一緒にいて、リアさんは私の周りにいたことを。離れた時間なんて夜くらいで、今でも、それは変わらない。あ……気づいてしまった。
お願いされて、おもりをして、私を見守ってくれていたリアさんは、私のために。さっき、リアさんはとてもうれしそうだった。家族のために普通に接してるようだった。そうか、だから、それに甘えてたんだ。私が甘えてたんだ。ずっとこうやって、前で何とかしてくれることで……リアさんは。
「ごめんなさい」ただ謝り、この結果はもう少し簡単にできていたことを、私は理解できたことに謝る事しかできなかった。
「どうして謝るの?」
よくわからないと、鋭い表情は、困惑していた。強がって、その場で頑張ってくれているリアさんを感じ取ることができたが、顔が見えない。
「私が、自分が、甘えていたことが分かったからです」続けるように私は、エルドラさんのほうを見て「行く理由が、あるんですよね?」
「そうだ」
掴んでいた手を離し、エルドラのほうへ歩み寄りながら、私は誰の顔も見えなかった。納得できない事ではある。けど、お世話になった人が、迷うように生きるなんて私はしたくなかった。
族長へと視線を向け「約束を果たそうと、思います」深く頭を下げた時「そうね」と、小さく言葉が繰り返される。
「そうね。説明をしてなかった私も、悪かったわよね。ごめんなさい」
まるで、この場の熱は抜けていくみたいに、周囲の緊張は解かれてゆく。私は、周りに感化してるのか、私が、私の行動に感化してるのか正直わからなかった。場の空気と共に、私も落ち着き始めていた。
「エルドラさん。私の役割は何ですか?」
「私も、本来の約束の内容を、詳しくは聞かされていない。君を案内し、村に向かうことになる。そこで、少しづつ教えられることになるだろう」
「族長に聞けないんですか?」
あのまま静かなままだと、少し可哀そうだと、そう思っていた。その事で自分は嫌だったこともあり、機転を利かせたつもりで、話を振る。
「そうだな、聞いてみるとしよう」
静かに座り込み悲しそうな表情で見つめる姿で、顔を合わせにくくあったが、二人の会話に渋々聞くように「族長。教えれる事は?」横に振られる首が、言葉の必要ない事と、小さく見えていた肩は、さらに小さくしている事が理解できた。
失敗だった。今はそっとしておくのがいいのか。
「なら、私の知っている事だけで説明させてもらう。君に、私では知れない事を含めて、教えれない役割を、隠しながらお願いしないといけない事。それがここの里から、ほんらい聞かされる話だと思っていたが」首を振りながら「間違えないでほしい。悪く言いたいわけではない」役割がそうさせていると、付け加えたい声が内心聴こえた気がする。
会話は少し止まり、後ろを気にしてか、振り向いた時に変わらない状態で座っているのを確認して、振り向きなおす彼女は、なんだかんだと気を使っている事が多そうだ。
「……そういった基盤があっての話だったという事を、まず、伝えたい。信頼してもらって、来てもらう事が、まず大きな役割だ」
気にしている姿を気遣ってか「すまない。君に、いきなりで驚いただろう」横に首を振り、この会話が何を意味しているのか、私にはわからなかったけど、きっとこれでよかったと思うように、自分の中で繰り返していた。これでいいんだ。
腰を下ろしながら、視線を合わせやすい高さまでおろされる。先ほどのどこか勇ましさを伝える強い視線は、どこか優しい物へと変わっていた。
張りつめていた姿勢で、しびれ始めていた足を崩しながら、
「役割は、聞かされて始まることが多くある。今回も、変わってはいない。君が目覚めた事で、約束をかなえるべく、私に言葉が届いた。その時から、私の役割は、君を連れていくことへとなる。それが、今の私だ」
「そういった、役割を私もしていくんですか?」
「……大丈夫。私と君では、扱いが違うだろう。こんな回りくどい事をしていることが、その証拠だろう」何処か失笑しながら「まぁ、どうしても役回りは時に、いやな事、よくない事もあるだろうが」
「そうですか」
簡素な返事を聞いた時、少し咳払いをして真剣な表情に戻ってゆく。
「……どうして私が」
「正直、君の必要性はわからない。だが、その答えは持っている人たちがいる。それがこの里で預かられた理由でもあるはず」落ち着いた口調は小さく付け足される「おくそくだけどね?」
彼女の言葉でも、わからない事が多いけど、さっきの話よりかは整理しやすかった。行かないと話は分からないし、教える事もできない。
けど、間違いなくわかってるのは、私の事をもしかすると、少しでも知っている人がいて、用事があって、呼んでくれる人がいるという事。
なら、私がやりたいことの一つ、したい事をお願いしてみることにした。
「約束してくれますか?」
「できる事なら」
「もし、私がその役割で、どうしても納得いかなくて、あなた方を信用できなくなったら。私をここに戻して欲しいんです」
「そうだな、君が、本当に信用できない時、私が責任をもって、君をここまで」
「私は、ここでお世話になった事。それは事実です。今までよくしてくれたので、必ず恩返しに戻ろうと思います」
「そうだな。私も受けた恩は返すようにしている。その時は、必ず」
まるで、断ることはない。ただ言われたことを確実に守ろうと、真剣に聞いてくれている姿は、嘘をつくようには見えなかった。
「マナ……行くのね?」
「はい。お世話になりました」
「そう、準備をしてきなさい。そしたらこちらによってもらえるかしら」
「私は道具が少ないので」
「良いから」
話はこれ以上必要ないと言われてるようだった。私は目標を、自分の中の目標を決めた。小さくても、いずれ恩を返す事。どんな内緒話があったのかわからないけど、お世話になった事は変わらない。私は、この場所で返せる力をつけて、また帰ってくればいい。
言葉に押されるように、私は急いで家に走ってゆくことにした。
木の中の家。数週間の事でそんなに多くの荷物の無い我が家は基本的に寝るための場所だった。布団代わりの布。少しの着替えに、何かまとめるときの袋、使い勝手の良い2つの木の食器があるくらいで、それ以外は持ち合わせていない。
今思うと、これで生活できるほど、いろいろとしてもらっていたともあるだろう。自分の荷物の少なさは、改めて返せるものを探せるようにしていきたいと、自分なりの理由を胸に書き記すように、準備を終わらせた。
朝、眠れない事で体を預けていた壁に、ここでの光景を見つめて「行ってくるね」と、つぶやくように声をかける。
扉を通り抜け、朝通った道を抜け叔母様の元に向かった。階段を上り、入り口にいるはずの護衛は、姿がない。
中を覗くと、エルドラさんと、ムッとした表情で待っているリアさんが見えた。
「待ってたわ」中へと案内するように、中央へと歩む「いろいろ、謝らないといけないわね」
「いえ、役目をちゃんとできてますので……あと、私も昼まで待てていませんので」
お互いが謝るように、どこか気の抜けた会話が飛び交いながら、節目をつけるように大きな両手が叩かれる。
「二人に、贈り物を送ります」その言葉に続くように、リアさんが持ってきていた鉄の長槍をエルドラに渡した「それで守れなかった時。私があなたを刺しに行くわ」小さい言葉が視線を集めるが「謹んで受け取ることにしよう……必ず守るよ」
振り向き、もう一つの道具をリアは他のエルフから手渡しで受け取っている。同じように今度は大きな布製の記生地をもって私のほうへやって来る。目が見つめる事ができない。さっきの無理やりの終わりをさせて喋れてないんだ。
「受け取りなさい。あなたが、私を止めた事を、後悔しないように……外は寒い時もあるから、このローブで少しでも和らげなさい」
ローブを着せられるように、体を触られる「リアさん」整えてくれるリアさんに謝ろうと声をかけると「約束」と小さく声が来る
「へ」
「帰ってきたとき。一緒にどこかに行きましょう」
顔は見えていなかったが、その言葉が聞けたことで少しうれしかった。
「はい……ごめんなさい」
言葉は返ってこなかった。そのまま私に向くこともない姿は、入り口を抜け、何処かへ向かう姿を、誰も止める事はなく、ただ見守るようにリアさんの消える後ろ姿を見送った。
「では、二人とも、よい日々を過ごすのよ……」
「お預かりします」
「行ってきます」
2人して、簡単な返事をしてその場を去るように、里の外へと足を踏む出そうとした時。初めて見る森の外の光景に心がざわついてゆく。
未知の場所へと、足を踏み入れる第一歩だ。何時もなら、止まっていた私に、リアさんが声をかけてくれてたが、今は違う。
知らない約束に背中を押され、見もしない景色を知るように、私は、踏みしめ歩き始めた。