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タイトル未定  2025/09/13 04:21

ーーーーーーおはようございます。


 少しいびつな円状の室内で、中心を囲むように、奥をエルフの族長。それを向かい合わせるように、少し細長い二等辺三角形のようにとった形で、族長の巨大な横長の卓上机とは違って、料理のおいてある人間サイズの空席が二つ。何時もどうり綺麗な木の机の上に並べられている。

 円状の室内は数人の小さな声は反響し、室内では大きく聞こえる。


「今朝は、よく眠れましたか?」


 優しい声の持ち主は、私たちがただ立ち止まっていることを気にして、次の行動の手間を省くように、手の平で少し先にある、食事がおかれている空席へと向かうように案内される。

 案内されたとおりに、座りながら言葉を返してゆく。


「ありがとうございます。おかげでゆっくりできました……」言葉の途中で、鋭い視線が隣から突き刺すようにして首がこちらに向いている事が視界の端で見えている。

 詰まったように見えたのだろう「どうかしましたか?」と声がかぶさるように聞いてくる事で、自分の中で、心配させないようにした嘘が悪いように感じ、素直に口を開くことにした。


「……実を言うと、さっきの言葉は嘘なんです」


「あら。そうなのですね?けど、寝ていたかは言ってないので、実は嘘はついていないんですよ?」


「ふふっ」っと笑いながら続けて「では、寝れなかったんですね?」何事もないように続けて優しい笑顔はこちらの事を知ろうとしてくれている。 

 あぁ、この人に嘘をつくって言葉より心が痛いんだ。自分の嘘ではないと言われたけど、ごまかそうとした事に後ろめたさを感じながら続ける。


「なぜか今日寝れなくて、それで、はい……ごめんなさい」


「そうですか。でも、生きている中ではいずれ寝れない時なんて、よくある事でしょう?気にしなくていいのですよ」


「はい」


「それより食事にしましょう。今日は少し変わった物が用意できているのです。気に入ってもらえると嬉しいわ」


 机の上にある木の皿に置かれている果物。葉の上にある焼き魚を見て久しぶりの香りを感じる。


「獣肉ではない。お母様。珍しいものがありますね?これは何ですか?」


 リアは、焼き魚を不思議そうに葉皿を指先でつまみながら、回転させながら見入っている。

 そういえば、ここにきて焼き魚どころか魚を見たことがなかった。


「焼き魚なんて珍しいですね?」


「あら?知ってたのね」少しうれしそうに魚の説明が始まった「ふふ。私たちエルフや、この周辺の人にはもしかしたら見る事はないでしょう。これは魚というもので、ガマと呼ばれる生物の口の中に生息しているもので、とても珍味なのですよ?」


「魚……」ふと、おいしそうな匂いに手が出そうだったが、一度引っ込めてどうしたらよいかと言わんばかりに「あの、お母様。私が、そんな珍しいものを頂いても!?」


 先ほど、確かに珍しい物としてあげられていた。珍しく鼻腔(びこう)をくすぐる良い匂い腹の虫が鳴ってしまっても仕方ない「私だけが頂いても?」と言いながらその周辺に対しての遠慮なのか、手がそろりと魚の葉をつかんでいる姿を見ていると、とても気になっているのだろう。


「ええ。せっかくですもの。是非、食べてみて欲しいの」


「では一口だけ……」


 一口サイズに指で裂いて、口に入れた時。とてもおいしかったのだろう。すごくにやけていた。

 だが、その表情はどこか味気なさを感じたのか、そそくさと魚を包みなおして「あの!お母様、配ってきても?」その言葉に頷き、リアさんは、あたりの人達の口に説明しながら一口づつ分けて回っていった。

 数が足りないのは、大きさを見て明らかだったため、一口だけ頂いて「リアさん良ければ私のも、持っていってください」と、包んで渡した「いいのか?」あいずちを打つように「いただいたので」とわかりやすい言葉を残して「ありがとう」そう言い残して、そそくさと、今度は室外へと抱えて走っていった。

 うれしそうな外の声は、室内からでもかすかに聞こえた。どうやら好評らしい。


「リアは、ああ見えて家族思いで、独り占めはしない子でしたから、あの子に貴方を任せてよかったわ」


「初めて見ました。あんな表情されるんですね」


 この場所にきて、表情をあまり変えずに過ごしてきた事で、てっきりああいう表情しかできない人だとばかり、思っていた。


「貴方が初めてここに来て、初めの事は覚えていますか……目が開けれなくて周りが見えなかったことを、彼女は手助けしてあげたいと、自ら申し出るくらいには優しい子ですよ?それに……」


 ここに来た時、私は異常なまでの眩しさで、目を開ける事ができなかった。開けはできたけど、開けた時の虹色の光が、目に刺さる刺さる。その結果、数日間は目を使わない生活を余儀なくされていた。

 その時、声質は確かにリアさんに似ていたが、もう少し優しいイメージの声だったので、別の人だと勘違いをしていた。聞いていくうちに、固定されていたリアさんの印象は、だいぶ変わってきていた。


「それに?」


 何かを迷っていたのか、一度、首を傾かせ「たぶん」と前置きがされる。


「嬉しかったんじゃないかしら」


「はじめは、てっきりツンケンされてるから、少し煙たがれてるかと」


「あの子は、今この里で最年少で。あなたが来た事で、弟ができたようなものじゃないかしら」


「弟。そうなんですか」


 正直、エルフは見た目がとても綺麗で、男女ともに年齢は見た目では判別できたことはない。女性に年齢を聞く事ははばかられたこともあり、リアさんが最年少とは思わなかった。てっきり、もう少し落ち着いているから歳だとも思った事で。

 だけど、なるほど、色々と理解できた部分があった。あの感じはリアさんなりに教えたり、躾たり、マナーを教えてくれてくれていたんですか。心配も多かったことは、なんだかんだと、気にしてくれるあたり、お姉さんしてくれていたんだろうな。


「そうでしたか。お礼を言わないといけないですね。ちゃんと、お姉ちゃんしてたんですから」


「あらあら」弟の発言に大人ぶられるお姉ちゃんに微笑ましく見えていたのか、とてもうれしそうにリアさんが返ってくる時までゆっくりと会話を弾ませた。

 新しいことが多い中で、眠気も忘れた朝食は、会話を弾ませ、普段と何も変わらない「昨日は何していた」「何を感じていたのか」「記憶は何か思い出せましたか?」などの私に対する会話は多くあるものの、それでも日常通りに緩やかな時間が過ぎる事は、私も、他の誰でもうれしい事だ。


 私の食事が終わった後、飲み物を残してかたずけは終わっていた、何時もならこのタイミングで解散という流れだけど、どもった口調で、無が続く。


「ところで、急に変な事を聞いてしまうのだけど、外に興味はあるかしら?」


「今朝、ここに来るまでに、リアさんと話してたんです。一緒に出る事があったら、一緒に出ましょうって」


「そうなのね」


 少し困ったような表情が、この返事は嫌がったと言っているような顔つきだったため、私は、両手を自身の前でパタパタ横へ動かしながら訂正する。


「あ!?違うんですよ。別にここが嫌いとかではなく、外のこと知らないから興味を持っているだけで、いやっていう事は、全然ないですからね」


「私はそんな風に思っていませんよ」


「そう、ですか?」


 さっきから剣枠な表情で、無理した笑顔がちらほら見える。どうしたいのかわからないけど。今まで、会話がここまで止まったことがない事から、私は、彼女の言葉をこぼさないように、真剣に聞き取り始めていた。


「ただ、そうね……今日は、ちゃんと聞いておかないといけない事があるの……ちがうわ。本当は今日、呼んだのが、この会話をしたかったからなの。これはあなたに選択肢を上げるために、聞こうと思っていたの」


 少ししんみりとしていながらも、しっかりとした表情は、この場の空気を一変させていた。別に聞かれること自体は変な事じゃない。けど、心当たりが今日ある。


「魚と、関係があるんですか?」


「そうね。近くて違うわね。あれはお土産なのよ。旧友の、」一息指をもじもじ動かしながら瞬きをしたとき、ゆっくりと下を向いていた顔は上がる「貴方に言っておかないといけないの」


 姿勢を正すとき、私も一緒に姿勢を正しなおしていた。お互いが固まったように背を張り告げられる「貴方を迎えに来ている人がいるの」


「はぁ……何故ですか?」


 考えていた内容とは違って、もう少し人間関係の内容か、変な話だとばかり思っていた。十分変な事ではあったが、どういった人が来てるのかわからなかった。


「私の、家族とかですか?」


「うーん。そういった内容の人ではないの。その人は女性で、ある人の使いとして、貴方を迎えに来ているの」


「さっき言ってましたね……危ない人とかですか?」


「いいえ、その人はまっすぐできっといい人よ。それよりも問題は、今回の話の元、私の旧友よ」


 2人して水を一口、くちに運び一息おいて、確認する。

 途切れた重い口が開いた時、どうしていいかわからないような眼が一瞬見えた。この時、見てしまった事で、なんだか私は目を背けてしまった。どうしたらいいかわからなかった。

 小さい無言の隙間で、考えを回す。彼女が言っていた旧友という言葉、初めて聞いた。いったい誰で、何故、私を迎えに来ているのか……迎えに来ている?何故?


「うまく伝えれないけど、聞いてほしいの」


「大丈夫です。ちゃんと聞いてます」


 仕切りなおすように、両手が前にのばれされ、手振りは視線を動かす。


「あなたに、一つの役目を渡させている。二つの紐があるわ、一つはこの里に残る紐。外には大きく出れないけど、もう少し時間をおいてから、他の子たちも一緒に外へ……あなたの体調がよくなったら行けるように配慮できるわ。」


 読み込めたか確認するように、一度顔を見合わせ、話は続けるように片手を動かす。


「もう一つは、私達から離れて、里の外で物事を学ぶ紐。その紐には、一人の人物があなたの案内役として待っている。確かにあなたが、ここで興味を持ち続ける事はできない。この里はあなたにとっては狭すぎるもの……けど、私は早いと思ってるわ」


「あ」っと言葉を漏らした時、訂正しながら言葉を続ける。


「こういった時。私の意見は……本当は言わないほうがいいのは知ってるけど、あなたにとって、とても流れが変われるタイミングが来ているの。……あなたがその紐を選べるの」


 拒めるのか?


「どうして、どうしてその人は、私を呼ばれているんですか?それに、その人について行ったら、ここには顔を出せたり、戻ってこれたりするんですか?」


「わからないわ。でも、誰しも、私も例外ではなく、今の世界には役割を持つ生物は多くいる。内容や、理由は言えないの。横暴に感じる部分があるかもしれないけど、外に出たら……それに慣れるためにもしかしたら忙しくなるかもしれない。何を言ってるのかわからないわよね、ごめんなさい」


「それは、私だけがいかないといけないんですか?」


 ただ頷く顔は、目をそらしていた。

 静かな時間は言葉が出てこなかった、正直、役割とか言われていてもよくわからない。ついて行けといきなりそんなこと言われて「はい」「そうですか」なんて軽い返事で行けるわけない。言えないし、言いたくない。

 けど、どうして今日こんな話を、きっと何かあったはず……結局のところ呼ばれている理由がわからない事で答えが出なかった。何が起きてるの……。


 内容も、意味も、分からない事は、二つの中の選択肢にある拒否権をもらって、考えるのをやめて断ろうと思っていた。


「ねぇ」言葉に目の前の背景に意識が戻った。考えて見えていなかった顔は、優しそうに「わからないでしょ?だから、だから、マナ……素直に、教えて欲しいの。そんなわからない状況でも、選んでほしいの。外の興味だけで、外に出れる? 今ならまだ、間に合うわ」


「なら、」断ろうと言葉を続けそうになった時、高らかに大きな声は、重い二人の会話を裂くように高らかに、元気よく、咆哮していた。



――――――おはよう!素敵な歌で目覚めれたことを、私は、とてもうれしく思っている

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