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2/16

??? プロローグ

 断片的な記憶――――――。


 あの時、私を造り、私に託した者の事は、多くの人達の願いを載せて動き出した。姿を隠し、その真実さえも隠すことで今の私達をだましながら、この世界は安定をしたことを、確信できた物事が起きた。


――――――目が覚めた。私は大きな物音を聞きながら。それは目で見える範囲で、天井に大きな穴を造りながら、目の前の落ちてきた土跡を太陽の日差しは、照らしている。舞い上がっている砂煙を綺麗に見せ、煙の中で人の形をした影は「いてて」と、痛がる声をつぶやきながら、目を覚ました私と目を合わした。


 何もない、ただ空間だけが広がり、岩肌を見せ、土をこする音がこの洞窟での姿。くらいじめじめとした植物の根があっても、枝が見えないこの場所で、私は確信した。始まったのだと。


「煙たいわ……初めましてね?ようこそ」


 私は、この場所で自分の家の様に出迎えてみた。久しぶりに人の言葉をしゃべり、内心ドキドキしながらも、その存在へと声をかけてみる。初めに痛がっていた声もしていた、たぶん言葉はわかると思ってしゃべっているけど、大丈夫かしら?

 土煙の中で、しりもちをついた少年は、腰に手を当てながらも、私をじっと見つめながら目を見開いて止まっている。その光景を見て私は思いつく「わかったわ!シャイなのね?」


「ちげーよ!!」振り向き「まったく」と、あきれたことを投げつけながら、穴を見るように見上げる。


「変な所に来たな」


「失礼ね」


「すまないが、今は遊びをやってる場合じゃないんだ」日差しを遮るように大きな影が、穴からか顔を出している「まだ見てるのか……困ったな」

 言葉に続くように、同じように穴を見た。正直、まぶしくて仕方ないのだけど影のおかげで、その影が何なのかわかった時。私はとてもうれしくなっていた。


「もうこんなに、大きな子がいるのね」


 穴から見ていた影は、間違いなく獣の形をしていた。想像の少し大きいけど、予想の数倍いい方向へと成長している姿が見えるのはとてもうれしい事だった。

 目を輝かせ、嬉しそうにしている私を見てなのか刺してくるように声をはさむ。


「何言ってるんだ!あんなのがうじゃうじゃいるから、人が困ってるんだろうが」ついでと言わんばかりに「頼むぜ、本当に」っと、あきれたように肩を落とす。


 不思議だ。彼から見た私は、とぼけて見えているのだろう。でも、それもそうかもしれない。少し眠気に負けて、力を使った後に眠りについてしまったから。けど、この瞬間は私にとっては、とても貴重で、とてもうれしい瞬間でもあった。私は、好奇心に任せて彼に質問をしてみることにしてみた。

 正しく見えているわけではなかった彼の顔は、とてもやさしく見える。寝起きの目には、目に入る光がとてもしんどいほどで、いまにも目をつぶってしまいそう。


「貴方たちは、多くいるの?」


「あぁ?!何言ってんだ。はぐれて生きてんのか?この近くに里があって、いろんなところでいろんな人間は生きてるだろうよ。だけど、今はそれどころじゃねぇ」


「じゃぁ、多くいるのね?」


 間髪入れずにそんな中でも、元気に叫ぶ男は、獣を指さしながら「すまんが、今それどころじゃないんだ。こっちは危なかったんだ。あんた、わかってるのか……あいつはどえらいヤバいんだぞ?俺の里も多くの犠牲を受けて、今、あいつ等から逃げてるところなんだ……くっ」


 痛みなのか何かほかの悔しさなのか、持っている槍のような武器を握って力を入れている。


「あの子も多いいの?」


「惚けてるのか?当たり前だ、今、この森は結構ヤバい。この前まで、他にもいた獣も、あいつらのせいで、多くの肉として扱っていた野生生物が変わってこっちも困ってるんだ」


 どうやら困っていることを伝えたいらしい。想像はできたけど、何となくなのだけど、からかってみたくなった。


「なら気にせず、その棒で、刺せばいいじゃない?ズサッと!さぁさぁ?」


手を伸ばし、手のひらでやってやれっとジェスチャーをしながら反応を待ってみる。


「できねーから困ってるだろ!!」真っ赤に起こったその姿はとても楽しく、どこか魅了される良い人。聞いてみましょうか。


「ねぇ……」


「なんだよ!」


「倒したい?」


 一瞬、時間が止まったように、じっとこちらを見て、はっとしたように「方法があるのか!?弱点か?」


 思っている反応以上に面白くって、首を横に振る。


「ちげーのかよ!!」威勢が変わらないままに、元気の良さは伝わってくる。


「ふふふ」少しばかり、笑ってしまって、ますます不機嫌な顔をされて、少しからかうのが面白くて仕方なくなってしまった。


「じゃぁ、なんだ、倒したいってのは。くそっ、すげー力があればあんな奴の皮膚なんて軽く貫けるんだろうが。人間の力じゃ、無理だ」


「弱点なんて知らないわ」無言の時間がまたやってきたけど、言葉を続ける。「けど。貴方は、力があれば倒せると思っている……だから、」


 倒れこんでいた体を起こす。久しぶりに起き上がることで少しふらついているが、歩くことは何とかなりそうだった。


「あんた、そんな体で大丈夫か?よく見ると細いな。飯とか食えてるか?」


「いいえ、生憎食べれてないわね」


 優しい子。あんなに怒りながらも心配をするなんて「いい子ね」声に出してうれしさが増した。

「うるせぇ」小さく照れた声が聞こえたが気にすることはなく、手を出した。


少しよろめいたが「やっぱきついのか?」身体を支えようとしてくれた時に出た手をつかむ。


手を強くつかみながら「力が欲しいんでしょ?」ふざけていた眼をやめてまっすぐ見直す。体を向き直し、ちゃんと両手で、手を包むようにつかみ見つめる。どうしたいかを答えるまで。


「くれるのか……?」不安があるのか聞き直すあたり「煮え切らないわね」嘲笑してしまったけど「どうするの?欲しいの?何をするために欲しいの?」


「里のみんなを守りたい。俺はあそこが好きだから、あそこの人達が好きだから俺が守るって決めてるんだ」


「いい里なのね。今度よかったらよってみようかしら……けど、」口調を変えて問う「力をえれば、その力は代償を得る。人はどう変わるか、その進化の形を変更されるかもしれない。背負うわね?」


「進化?よくわからんが、なんでも背負ってやる。俺は今、里の運命を背負ってんだ。何個だろうと変わるもんか」


 自分の身体から、男の身体へと、手から力を入れてゆく。簡単につながった。手を通って、男に力が徐々に通ってゆく。


「なんだ!痛い?!痛い?違う。気持ち悪い!?違うなんか変だ!!変だぞ!!」


「なら、耐えてみてね」


 体をよじるようにして、全身のかゆみや痛み、あらゆる感覚に抗うようによじれながらも「手を離さないでね?」この状況での、文句を言われようが、手が動いて殴られようが、手を放す事。それだけを許しはしなかった。返ってくる言葉がないのは悲しいけど……数秒。その数秒がすごく長い感覚になった事だろう。男の肌からは、汗が滝のように一瞬で出ている。


 本来は、こういった事はもっと慎重に人を選ぶべきなのだけど……。進化や、変化は新たな命ができるときに新たな芽吹きを与えるように。それは自然で、それが成長で、人類の進化で、その先を望んでいけるようにするのがとてもいい。

 今してるのは、人間として初めてマナに触れさせることで、別の力を与えようとしている。それに伴って人類は、本来の進化とは別で、早く進化をしてくことになるのだけど。何が起こる事か、わからない。


「うぐぷぅ!!」


 いきなりの吐きそうな動作、同時に男の表情の深刻さを深くさせてゆく。


「いぎが……イキガ!!」


 喉と口をひっかきながら、あたり周辺をかき分けるようにして口をパクパクと動かしている。

 溺れている!マナにより、違った呼吸をしないといけない事により異常が起きている。マナによって溺れてしまっている状況。


「非常時なの、冷静に聞きなさい」


 男の両手を抑えるようにして、焦点があった時に見えるように、顔をできるだけ見るようにして近づける。二人の瞳が見合いながら、言葉を続ける。


「貴方は、今、深呼吸のしかたを忘れてるわ。呼吸ををしないといけないの。私の言葉を聞いて、続けてしてちょうだい」


 小刻みにうなずいている。

 慌てている姿を見て言葉を伝えてゆく「わかってる。息ができないから怖いわよね」大丈夫だと思わせるように、声を出してゆく。

 

「口を開いて。口から何かをすするように口に運んでいって……そう。そのままだといけないから、のどの力を抜いて。次は吐いて。顎の後ろ、のどをひらいたまま、暖かい息を通すように。すってぇ……はいてぇ」


 繰り返させる。今しているのは、急激に新しい呼吸をしてしまうことで起きる現象。今までは、酸素だけを取り込むことでの生物として正しい呼吸をしていたけど、酸素と同じように、マナも口から入れていくことが普通になってゆく。身体にマナをためるように成長することは今から必要な事。


「え……」


「え?」


「気持ち悪い……無理だ」


 呼吸は落ち着き声が出たことで、安堵した。

 大丈夫。頭が回っている。全体的にバランスが取れないほどの状況が起きているように、身体がだらんと落ちていくようにぐったりさせながら、倒れこむ男を冷静に見て、一度、頭で整理する。


 今の人型の、外骨格が変わってないという事は、人型のフォルムが、そのまま進化を体制強化で進化している証拠。とてもいい事よね。手でもなんでも、共有できる力の先があるのだから。だとすれば皮膚や、内部の問題、どれくらい寝ていたかによるけど……あの生物から見ても、内面から変にあふれて爆発することなんてないはず。今安定しているもの。

 うん、問題ないはず。


「そう。できてるわ」


 不安を断ち切るように、強く呟き、彼の倒れうっぷしている体を無理やり起こし、ただこちらを穴から見ている獣へ腕を伸ばすように指示をした。


「無理だ」


 何か吐き出しそうな顔をしているが、まっすぐしない身体を無理やり起こすために、自分の身体で支えながら、操り人形のように扱う。


「鬼か……」


「美女よ。けど、自分を見たことはないんだけどね。急変化するわよ?流れているものを、体内で流れているものと一緒にして手のひらに力を集めなさい」


「無理だって」


 一括して「大丈夫。脅威を退け、それらを倒す力が欲しいんでしょ?いいからしなさい」と、行為を続けさせる。

 吐きそうな顔はできるだけ、聞いたことをしようと自身の手を見つめ、形を整えた。


―――さぁ。イメージして、身体には今息を吸って手に入れた力の塊。思い出すの。人間のために、その力は今作られる。その力は、今から生まれ、基準となる。マナは害ではあるが、我ら生物は克服してゆく。貴方の手には、その未来の暖かさ。それは溜まる力を感じてゆく。それは丸のようで、長く、そして形はぼやけていて、儚い。願いなさい、あなたの願いを―――


 彼の手にはかすかに光色をまといながら溜まった力が見え始める。


―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――


『付け加えるわ』


―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――



『さぁ、手をまっすぐ伸ばしなさい』


 想像して、手からその光が飛んでゆく姿を、感覚的で、それはすべてわかる。

 

「できたわね。これが魔法よ」 


 固定している男の手を少し緩めた時。先から、光がまっすぐと手のひらから飛び去り、獣の首らか上を通ったと思えば、首ごと消し去っていた。


 あっという間の事。悲しくはある。生物としてどうしても生き死には存在する。眠っていた罰が、この場所で目に見えて存在していることも。


 男は反動を受けてではない。その体内から作られた力、新たな事に対しての驚き。自身の頭がパニックになるほどの一瞬の出来事は、彼の開いた口は閉じていない。


「あんた、一体?」


 まだ苦しいのか、手を離すとぐったりとして、落ちた身体を見ながらも、男の身体に何事もないことに安堵した。

 落ち着いたことで、自分の使った力が少し多かったのか、頭痛がし始めた。疲れを感じ始めたのね。疲れに目をつむらないように、手をかざし穴の上から、木のツタが伸ばし、穴の中にいる彼を音もなく素早くつかんだ。


「なんだこれ!?」


 慌てるようにもがくが、ツタの力は強く頑丈で、簡単に絡みつく。

 これ以上時間をかけてしまうと目がつむりそうだった。彼の口に指を置いて静かにしてもらう。


「約束して。悪いほうに使わないと」


「それはしないが、でも無理やりあんたが……っ」


 また口をふさぎながら、続ける。


「そして覚えておいて、その魔法の力は、今から世界を変えてしまう。今はわからないかもしれないけど、必ず変わるわ。でも、それは今の瞬間ではないの。また逢えたら会いましょう」


「おい!!さっきからちゃんと聞かせてくれ!あんたは何なんだ」


 蔦によって持ち上げた人間は、地面へ投げられると同時に空いた穴をふさいでゆく。再び、光の届かない暗い中、身体をそのまま横たわらせながら、私は眠りにつき始める。

 ドキドキとしたこの瞬間。慌ただしく過ぎた面白くて、楽しい記憶は、私の睡眠を少し花を飾るように、また一つの不安を造りながら目をつむる。


「里に行ってみたいわね……面白いことがあるわよね」


 良いほうへと、向かうのよ?




――――――願いとは、呪いでもある。それはわかっている。だが、その問題が、芽を出す前に私も体力を戻しておかないと……

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