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ポチ プロローグ

 伝える声は、どこにも聞こえはしない。

 今でも、あの言葉は覚えている。耳に残る小娘の声。あの日の大口を、我らは信じ、今も、尚、あの言葉の元に、歩き続ける。樹林に開けた地は、現状のワシが荒らした場所。その場所を通り追いかけてくれば、ワシが見つかる。早く見つけにこぬか、小娘……。

 耳など、とうに今は聞こえぬ、動かされた感情は、今ではわしを苛立たせるように、日々強くなる意識の朦朧さが、わしをさらに苛立たせる。


 この世界で起こる、輪唱は、我らの未来を拓くように、傷をいやし続ける。


「苛立たしい、苛立たしい」口ずさむ声はどう聴こえていようか、いまだ意識がもうろうとしている中で、あの時の痛みを超えたものが、ワシを苛立たせる「意識は苛立たしい、考えが嘆かわしい、聞こえぬ耳は見窄らしい、ワシは、もうこの世の役割ができぬ、できぬのか……」


 あの小娘を探すように、ワシは、我慢の限界を迎えていた。切り崩しながら、吠えるワシの声は、今はどこまで聞こえよう。ゆっくりとかすれてゆく意識が、ワシの終わりを物語るように告げようとしている。

 あの日、あの小娘の話を、まだワシは思い出せるのか?弱気な心が、自身を焼失してゆく。あの日の、あの光景が瞼の裏に映りこむ。



――――――薬莢が全てを焼きながら、大地は怒るように全てを汚染し始める。ワシは変わり果ててゆく人類を見ながら、自分の身体は、崩壊を待っていた。飛ぶ力をもがれ。獣のように地を這いながら地表にいる、翼のもがれた蝶の様に、死を待つように。ただ、一人で、この場所をたった一人を待ちながら、誰だか忘れた者を、ワシは待っている。



 人がもう見えなくなって、幾つたとうか?ワシのような姿のモノを必要とし、思い出せるものはいまい。空はまだ青い、この身体をむしばむものが、どこまでも憎い。

 誰もワシを呼ぶものはいないだろう。空を飛ぶ力は弱まり、形がなくなるように心が小さく、摩耗したワシの気高い意思は、とうに折れていた。


「高い日だ、よき日だ……」ワシの心が良い時は、もう少しこの世界にも、勢いがあったはずじゃがな。終わりを告げるように、無音の世界が響き渡る。ワシの声以外、何も聞こえはせぬわ……。


 人間が残した、荒れ果てた大地に腰を下ろすように、土の土台は、薬莢の破片を混ぜるように、大事にしていたこの地を、蝕んでいる。見守るように、薬莢の抜け殻に腰を落ち着かせる。

 信仰深き者は消え、人類の英知も、もう後はなかろうて。その先にある、死への足取りをとるように、もう何処にも無い、人類の未来を案じるように、日課のようにワシはゆっくりと空を見上げておる。


「終わりか。あれほどまで反映しておいて、つまらん終わりをしよるなぁ……」一人の男を思い出すように、この下無様な世界の下に埋もれた歴史と言う名の、敗者の灰は、木と石の土台を思い出すには、目を閉じる事でしか出会えはしなかった。


「まぁ、もうどうしようもない。知らんと、意地で言い張る相手も、もういはしまい」


 投げやりな言葉は、誰にも拾ってはもらえない。静かな空を、静かな地を、自然が見当たらぬ、環境を崩して生き抜く人類は、こんなに侘しい気持ちを与え、ワシをここまで貶めるのは、愚か者以外おるまいて。ただ一人で、風に吹かれ、体の痛みを恨むばかり。


「昔はすごく綺麗だった空も、心の無しか、あの日から薄暗く見え始めておるわ!ハッハッハハハ……」


 鼻をくすぐる風は、もう腐ったにおいをしている。ワシの知っていた時代はもうない。誰もいないただこの場所が、今の現実を教えてくる。もの悲しさが、今もまだ、ワシに、人の帰りがあることを望むように、己らしからぬ願いを吠えるように口にする。


「何処かに、人はおらんかの?ワシが、最後まで面倒見てやるぞぉ?……ワシが消えて、死ぬまで見てやるぞぉ?どこでもよいぞ……どんな奴でもよいぞぉ……どうせ……」


「どうせ?」


 ワシは今、誰かに返事をされた気がした。ついに末期か、それとも幻聴か。どちらにせよ誰もいまいて。首を振り探すが見当たらず、その声は幻か。


「やっぱりまだ、良いモノがいるじゃない」


 モノと言い寄ったその声は、懐かしい事だ。ワシは、ワシの言葉以外の声を、幻ではなく、幻聴でもなく、久しぶりに聞く。もう動かす気の無かった、大きな体をはいずるように動かし、その声の持ち主を、繊細に探す。


「良いわね、あなた」


 ワシより体の小さい童は、ニコニコとした、その顔から見える元気な笑みが目にうつりこむ。ワシの足元までゆっくり歩き来る。堂々と、健康的な身形で、ワシの前を歩きよる。歩きよるわ。

 汚れた白衣をゆらゆらと、破れた穴は肌を見せ、被さり、素足で歩く小娘は、生まれたままの姿でそこにいる。


「童よ。人間の小娘が、風邪をひくぞ、服をくれてやろう」


 ワシの冷めきった心が温まるように、甘やかしてしまう。

 手を出し、久しぶりに他と言う存在に、力をふるう。飛ぶことに力を使う事もなく、頻繁に使わぬようになった。廃れていない事を確認するように、力を扱う。汚れた、白衣を白い布地を伸ばすように、身体にいつでも合う様に、ワシの力を込めた服へと変える。少し古めかしくある青白く、整った装束の服へと形を変える。気にいるかは知るすべはないが、ぼろぼろの白衣よりは良かろうて。

 少し嬉しそうに、自身の身形を喜び、駆け回りはせぬが、先ほどより着心地の良い姿は、にこやかにしておった。そうかそうか、気に入りおったか。

 ワシの指に、小娘の手が乗っていた。久しぶりに、ワシに触れる人間の肌は何とも変わっておる……。


「童。人ではないな?」


 とびでるほどの眼力は、人の形をかたどった、その歪な存在をとらえ続ける。眼力を送るように、その存在を見つめるが、相手にされていない。相手にされていないというよりは、恐れていない事だろう。淡々と話し始める姿勢に、ワシはあっけらかんと取られた。


「面白い服のセンスをしてるわね。良い力、気に入ったわ。そうそう、手伝ってほしい事があるの。あなたは、生物や、あなたが懐かしんでいる人類のために、動く気はない?」


 まるで心を読むように、その娘は話し出す。

 聞いて不快になる事はない喋り、その発言は、ただ面白い話事だ。自分たちで、暴れ滅びに歩んだ人類に向けて、働けと言っている。この小娘は、少しおかしなことを言う。この結果を受け入れたのは、他でもない個々の人類の結果。昔から、この結果を作る生物は、愚かだと感じていたが、ここにも新たに、できよったわ。

 この小娘の、願いのために、そのために動く理由を、ワシは持たぬ。 


「自滅した者共の、助けをしろと?」


「しなくていいわ」切り捨てる物言いで、小娘は指を刺し、あっちに向かうように指示をする。不思議な娘だ、先ほどの言葉で、顔色一つ変えぬどころか、気にもしておらん「小娘、人間の見てくれをしておれば、名はあるだろう?名は」ペタペタとはだしの足は、足場の悪い道を、軽々越えながら、遊ぶように歩き出している。


「無いわ。それより、来ないの?置いていくわよ?」


 身体を、娘の通った道のりをたどるように動かし始める。体の自由はまだある、地べたを這う獣のように、進んでゆく。身体の痛さを思い出すことはない。慣れた足取りは、荒れ果てた、匂いのきついこの地になじんでいる。


「小娘。名は大事だ、つけてやってもよいぞ?」


「要らない。必要になれば自分で付けるから。それより、あなた痛くない?」あの日以来、身体をむしばむ痛みが多かった。小娘同様、ワシも名を忘れ、誰も来なくなった者たちを恨みながら、この痛みに耐えている。日に日に焼いたような痛みは、身体だけではなく心を痛めていた。


「そうじゃな、痛いかもしれん……慣れてしもうて、気にしておらんかったは」


「よかったわね、私がいて。あなたが、名前があるでしょ?少し私が信仰してあげる。時間が稼げるでしょ?」


「ハッハッハッハッハ」面白い、一人の信仰でワシの身体がどうにかなるものか。崩れかかった身体はみすぼらしく、悲しくなる。久しぶりに大口を開いて笑う声は、何時の事か、気持ちが良かった「良いだろう、名を忘れた者から呼ばれた、愛称と言うやつを教えてやろう。ワシはポチだ」ワシは、見栄を張った。思い出せたものが相性だけとは、本当に、馬鹿垂れだ……。


「ふふふ、それでいいの?面白いわねあなた」その白い髪はワシを連れて、目的の地へと歩みを徐々に進めてゆく。


「ポチ。あなたにやって欲しい事があるの。私のお願いされた事。結構大変で、待てる物がいる必要があるわ。先ずはこの問題を収縮してから、やらないといけない。本当にやる事がいっぱいね」


 「私達」と、付け加える姿にワシは昔、何度も通う影の姿を思い出す。ワシの場所が汚いだとか、心配をする姿が毎日掃除をしておった。懐かしむように、ワシは眺めるように、首を横に振る。「そう。あなたならできるわ。ポチ」っと、話をただ続ける娘は、嬉しそうに、ただまっすぐと決めた事だけを伝え始める。


「一応だが、ワシの意見は……聞かんのか?」


「あなたさっき何も言わなかったじゃない。聞いてもいいけど、あなたは手伝うわ。私は、そうすると思う」両手を広げバランスを取りながら、歌を口ずさむようにして、バランスの悪い場所を歩き始め「おっとっと……ありがとう」ワシは落ちそうな身体を支えるように手を差し伸べていた。どこからどう見ても、厚かましい人間。だが、中身は別物のような童に、ワシは何かを期待しておるのかもしれん。


「いい魂は、できるだけ必要よ。どれくらいかかるか、わからないの。ポチ、大事ね」はしゃぐ童は、まるでそのままの意味ではないいか。中途半端に、孫に返事をしている人間を見たことがある。こんな気持ちなのかもしれんのぉ。


「このまま憎悪に飲まれて終りたい?」


「いつでも、苛立っておるわ!どの人間も自分勝手で」年寄りじみた言い分を扱っていると「おじいさんねあなた。小言ばかりはよくないわよ」白い服を揺らしながら、その後ろ姿にワシは聞く。


「そういえば、おぬしはさっきの服を、どこで手に入れた?」


「きっとあれが、母なんでしょうね。私に最後の願いをくれたあの人の願いと、人類の願い。その場所は、きっといい場所だったんでしょうね」同じように見上げる空には、何も映ってはいなかった。果たしてこの小娘の、場所はどんな場所を刺してるか、想像もできん「もう見えはせんぞ。こんなに荒れてしまえば、見たくても、見えん」


「そうね。でも、私は、願いをもらったから、その責任があると思うわ。あなたのような物ならわかるでしょ?」


 不思議だ。本当に不思議だ。酷い世界の、なりの果てを見ているような日々に、文句を聞きながらも相手をしてくれる、明るくも、その日常をものともせん。目を向けるわけもない小娘が、こうも楽しいとは。まるで大事に見守るように、ワシは今、他の事を気にしておらなんだ。このまま、終ってもいいような時間が、ワシを安心させている。


「色々見てきたのだけど、まぁ、色々後で説明するわ」


 関心があるのかないのか、その言葉の真意はわからないが、面白く感じているワシがいる。他人の話で耳を傾け、その時間が懐かしくあり、嬉しくあり、面白いと思っている。本当に、懐かしいものだ。


「ねぇ、私事、最後まで手伝いなさいよ」


「一方的な物言いは、誰も手伝わんよ」釘を刺すように、一言言ったつもりだった「あなた達は、何時もそうやって聞いてきたじゃない。今更でしょ?」不思議だ。本当に不思議な事ばかりを言いよるわ。


「ハッハッハッハッハッハ。言いきるのぅ」


「付いたわよ――――――皆お待たせ。次の事を話すから、聞いてちょうだい」


 ワシらは、案内された場所へとたどり着いた。そこは、廃墟の神社が綺麗な形で残っており、懐かしい空気が漂っている。目の前の者達の、その姿は、皆、同じようなモノばかり。幾つもの時間をかけて、住んでいたものとは思えん、みすぼらしい姿。


 真ん中に陣取るように、小娘は、笑顔で会話をしている。


 だが、どいつもこいつも、腐った眼をしていない。ワシもそういった目をしているのかもしれん。腐った水に、顔を近づける。ワシはまだ、やる気のあるような眼をしておるわ……いい顔かは言ってくれるな。


「そこ!話を聞きなさい!」


 どうやら、ついた時から大事な話をしていたようで、ワシはそっちのけで、自分の姿を見ておった。振り返り、話を聞きいるように、ただじっとしていた。


――――――では、この状況の問題点を、簡単に言うわ……

ポチ「ハッハッハ話せてうれしい!儂がおる」


片割れ「犬が喜んでる。気になるので聞いてみましょう。どうして喜んでいるんですか?」


ポチ「知らんのか?ワシは嬉しいという事が、嬉しい!ハッハッハ」

 どうでもいいのだけど、大口をたたくキャラって好きなんですよね。


片割れ「まさか……本当に!?」


ポチ「何じゃ?その馬鹿を見る目は……。そういえば聞いたぞぉ。この前、もう一方の片割れと話した時の事。おぬし小説読まぬそうじゃな」


片割れ「えぇ。もうだいぶ文章を読んでませんね。その会話で思い出せたことこそ、本当に不思議で面白い」


ポチ「本当に?」


片割れ「目が嫌がるのか、文章事態を読みませんね。……そういえば、アニメも漫画も基本的には、噂程度しか入ってきません。一部だけ目に入るくらいで今は十分かもしれません」


ポチ「じゃぁ、何を見ておる?」


片割れ「ゲームはしてます。スキップ機能が便利で、会話はすべて飛ばせるので便利ですよ?動画で、音楽やMAD等が、とにかく美味しくて好きです」


ポチ「そんなんだから勉学をしろと、片割れから言われておるが……せぬのか?」


片割れ「もう一人は、とても良い子でして。勤勉で、頭も良いので、面白さでは負けますから。本当にもったいない。」


ポチ「そうやってしておるから”章を設定”で困っておるのじゃよ~」


片割れ「ムグ!とは言っても、せっかくですし、そのうち良ければやってみたいとは思っています。まぁ、片割れを巻き込んでですが……」


ポチ「……難儀な奴じゃなぁ。しかたがないないナイノスケ。儂が教えてやろう。ほれ、書き物を出せ」


片割れ「ハハ!殿!空想のメモ帳ならここに」


ポチ「何もないではないか……」


片割れ「では、掛け算でお願いします。……私。優秀ですので」


ポチ「???。うむ。ではゆくぞ。イン、イチガ!」

片割れ「さん!!(殴

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