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#03 ※※※※※※
ほのかに灯る、ちいさな光が闇に踊る。
ガラスの中にたゆたう頼りなき灯火を宙にかざし、都度動かぬ樹木一つ一つに傾けては、 長く伸びる、大きな樹影を作り消す。
闇に溶かした木の影すら怪物の陰影と見違い、せわしなく首を巡らすその後ろ姿は、古かごに捕らわれ、晒される小鳥そのもの。
手伝いで木々の間を渡る事をためらい、森の深部をうろうろと彷徨うその後ろ姿に、先ほどまでの覇気はなかった。
そこにいたのは叫び声に気骨を折られ、折れた心も木深い森に飲まれてしまった、年相応の、か弱きちいさな女の子だった。