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7/12

ローストビーフ




「ん〜どうしたもんかな、これ」


 摩訶不思議エレベータータイムの後、部屋に入ってようやくドラマタイムだぜ!なんて思ったらこれですわ。


 るんるんで、ようやく私の脳みそがドラマに興味を持ちはじめて、前回の内容と検索結果からなんとなく今回の展開を予想しはじめた時に、ビニール袋の中からひょっこりラーピン1号が現れたのである。


 しかも私のソーセージ食べてる......。ウサギってソーセージ食べていいの?ダメな気がする。


 モキュモキュと美味しそうに頬張る一つ目のウサギは、満足したのか窓際に放り投げてあったクッションに丸まってすやすやと寝始めた。


 次にあの少年と会ったらちゃんと返さねばならないなぁ、なんて考えれば、不思議なことにほんの少しだけ会社に行くのが楽しみになった。

 ぽわっとあの少年の笑顔が頭に浮かんで消えた。


「ん? 楽しみに......?なる?」


 なんでだ。

 きっと代わり映えのない、繰り返す毎日に今は疲れているだけ。


 あのスカしたイケメンに忘れ物だぞっておねーさんなところを見せてやるのが楽しみなだけ。


 きっとそうだ。

 そうに違いない。


 どかっと、小さな一人掛けのソファに腰を沈めて、ビールを一気に流し込む。

 テレビからは、人気ドラマの俳優と女優が、今流行りのダンスを踊るオープニングが流れはじめ、陽気な音楽が流れてくる。


 今日は金曜日。


 面倒なことは明日から取り組むに限る。

 アルコールで緩くなった思考回路のその先で、窓際で大人しく丸まっているラーピン1号に視線をやる。


 ドラマはどんどん進んでいくのに、全然頭に入ってくる様子がない。

 まぁ、後からネット配信されるからまた見ればいいか。と見切りをつけ、バックグラウンドミュージックとしてぼんやり楽しむことに決めた。


 そうして、何気なくラーピン1号を眺めていれば、大きな瞳がパチリ、と開いた。


「ラーピン1号、はじめは結構不気味だと思ってたけどさ。案外可愛いもんだねぇ。誰にも見せらんないけどさ」


 君の名前はラーピン1号だぞ。

 心の中でそう呟き、おいでおいでと手招きする。


 安直な名前かと思うが、◯号という名前の有名キャラもいるのでしっかりした名前なはずだ。私は覚えたぞラーピン1号。

 

 手招きをしても、元々このウサギちゃんは野生だったはず。そりゃ来るはずない。


 瞬きを繰り返すばかりのラーピン1号を誘い出すために、ソファの前に配置してあるテーブルに置いてあったサラダの中からレタスを取り出しプラプラと見せつけてみた。


 反応がない。


 しばらく見つめ合っていると、ぬっそりと歩き出したラーピン1号は、ててて、と私に、いやテーブルに近寄ってきた。意外にこやつ賢いのか?


「あっ」


 声が出た時には、時すでに遅し。

 サラダの上に少量乗っている、いわばメインであるローストビーフを持っていかれた。


 風のような速さだった。

 こいつ......。

 前世は忍びか......?


「ちょっと、ラーピン1号......君肉食なの?」


「雑食だよ」


「あ、そう」


 ふーん。雑食かぁ。

 雑食ってなんだっけ。草食?違うよな。スマートフォンに打ち込み検索をかけると、何でも食べると書かれていた。


 雑食......雑食かぁ


 ざっしょく......


 ......ん......?


「雑食だよ」



「ん゛っ!?」



 きょるんとした瞳が、私を見つめる。真っ赤な大きな瞳が、テレビの光を受けてキラキラ光っている。


「え? え? きききき、聞き間違いかな? も、もも、もう一回言ってくれる......」


 思わず震える口端を押さえることが出来ず、どもってしまう。


 可愛いまるころいフォルムのラーピン1号から、野太いおっさんの声が「雑食だよ」と答えた。

※ウサギは、羽、や匹、頭、耳とも数えられるそうですが、最近では匹と数えることが多いと聞きましたので匹としております。



数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。

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