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角砂糖



 私のマンションで、いや、アパートで、いやマンションか?まぁどっちでもいい。




 そんなのはどっちでもいい。重要なのはそこじゃないから。




 そこの、なんでもない普通のエレベーターは、なんだか普通じゃない少年が乗ってくるんだ。



 え?疲れてる?


 そんなのいつものことだわ。社畜舐めんなよ。


 エレベーターは別に普通のどこにでもあるエレベーターだよ。


 あんたの家のエレベーター?

 は?

 ホテルじゃん!あれホテルじゃん!


 あのエレベーターと比べたら普通じゃないよ。廃ビルにくっついてるだけのハコだよそんなの。


 いや、うそうそ。


 失言。超失言。


 つーかあんたの家めちゃくちゃ金持ちじゃん!今の私の部屋ぐらいあるわ!舐めとんのか!なんなら舐め回してやろうか!



 それでね、前にその少年に出会った時は、小学生くらいの小さな男の子って感じだったんだけどさ。いつも変な虫とか、生き物をもってるの。

見たことないタイプの色しててさ。外国人みたいな顔してるから、親が輸入とかしてんのかな。

 

 あ、そう?

 その子の事、御曹司たちのパーティーで聞いてくれるの?ありがとう。でもうちのマンション出入りしてるくらいだもん。多分そこにいないでしょうよ。



 あ、ちょっと話には続きがあるんだ。

 今小学生じゃないかも。中学生くらい大きかったな......。その1週間後にも会ったんだけどさ、すごい速さで成長しているみたいでさ。子供の成長って早いよね。びっくりしちゃった!



 その時はなんかヤバめな鹿の剥製持っててさ。怖かったわ。肉がうまいっつって分けてくれようとすんの。ナイフ出してさ。

 ホラーだよね。

 いやいや、流石の私もね、そんな得体の知れない鹿肉、しかもいつ狩ってきたかもきたかも分からん物もらうわけないでしょうが。



 あ、そうそう。

 そうなんだって。

 売るってさ。冒険者になるって言ってたよ。

 なるじゃないか、もう冒険者なんだって。



 飴ちゃんあげたよ。



 ああ、そうそう、先週も会ったかな。その時はねー、チョコレートあげたよ。コンビニのレジにいつも置いてるやつ。

 そうそう。新発売の。あれあれ。



 なんかね、イケメンになってた。

 少年ももう少しって感じだったな〜。

 変なクラゲ連れてたよ。

 



「ねぇ、それって大丈夫なの? なんだかヤバそうな感じしかしないけど……変な薬とかやってないよね」


「え〜、うそ、これ全部幻覚だったって?まっさかぁ」


 そんなわけないじゃん!と言って目の前でぶんぶん手を振る。

 薬なんてやった事ございませんとも。当たり前じゃん。


 日当たりのいいカフェの、ふかふかソファーに囲まれた一頭いい席を陣取り、真っ昼間からお茶を楽しんでいるが、決して会社をサボっているわけではない。有給って最高。


 香りのいい、フルーツがたっぷり入った何とも女子って感じの写真映えのする紅茶に、ぽんぽんと角砂糖を放り込む。

 アンティークの感じの良いテーブルの上には可愛いケーキが数種類。どれもカラフルで可愛いのに、上品に飾り付けられていて、これまた映えるやつである。


 そんな女子力増し増しのテーブルを一緒に囲んでいるのが、飯田グループのご子息様である、飯田薫(いいだかおる)くんである。プリティフェイスのこの男は昔から近所に住んでいて、今でも仲良くしてもらっている。


 某アニメで一般市民の中に紛れ込む超金持ちのボンボンとはこいつのことである。


 私とはちがい、僕イケメンな彼は、思い出したように私を誘ってくれる。

 定期的に会いたいんなら私をお前の会社で雇ってくれよ。


 昔言って却下されたから、悲しき社畜として生きてます。はい。


 話を戻そう。


「いや、でもさ、同じ男だから言うけど、そこまで急激に成長する人なんている?」


「いるんじゃない?」


「1ヶ月でそんなに成長する人間なんていないよばか」


 薫くんは、バシッと私の頭を叩いたが、その表情は怒っていると言うよりかは凄く心配しているような表情だった。

 

 納得がいかないように、薫くんは一瞬身を乗り出した体を、またソファーに沈める。


人間じゃないんじゃない?なんてポツリとこぼした。


「まぁ、なんとなくね、私もそう思わなくもない」


「………」


「なんだかさ、悩んでたように見えたんだよね、心配だからさ、もう一回くらいは会ってお話しするのもいいのかなー、なんて」


 いつものように、ヘラり、と笑えば、薫くんはムッと表情を曇らせた。納得がいかない、そんな表情だ。納得がいかないも何もないのだけれど。

 深くソファに沈み込み、腕を組んでむっつりしているので、その上等なスーツが皺にならないか心配。その眉間のように。



「おまえ、ショタコンだったのか」


「このやろぉ」


 真剣な顔してたかと思ったらとんでもない事思っていやがった。

数ある小説の中から、この小説を読んでくださりありがとうございます。

面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、

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