絨毯が飛んできました
アイーシャたちのことで、みなが外に出ていたことをエミリは知らなかった。
彼らの頭上に、ふわりとエミリたちの絨毯が現れると、みながざわめく。
「あれはなんだっ?」
「絨毯ではないかっ?」
「絨毯っ?
誰かが干していたのが、飛んだのかっ?」
「空中を浮遊しておるぞっ」
「待てっ。
あれはエミリ様ではないかっ」
上から見下ろしているエミリに気づき、重臣たちが騒ぎ出す。
「おお、神の子よっ」
「エミリ様っ!」
「エミリ様が飛ばしておられるのか、この絨毯をっ」
「いや、もう一人どなたか乗っておられるぞっ」
魔王が高度を下げたせいで、後ろに座っていた魔王もみなに見えたようだった。
いや、最初からなんか足っぽいものがぶら下がってるな~とは思っていただろうが。
「エミリ様と一緒におられるあの立派な方は誰なのだっ」
そんな誰かの叫びに応えるように、芝居がかった口調で、ロンヤードが叫んだ。
「あれこそが偉大なるエミリ様の夫の魔王様であらせられますぞっ」
そんな人間たちを見下ろし、魔王は呟く。
「あの『偉大なる』は何処にかかってるんだろうな……」
私か? お前か? と。
さあ~? とエミリが苦笑いしたとき、重臣の一人が叫んだ。
「なんとっ。
魔王様直々にエミリ様のために魔法の道具を動かし、ここまでお運びくださるとはっ」
「まるで魔王様が御者ではないかっ」
なんと言うことだ!
エミリ様のお力凄すぎるっと、みな何故かエミリの方に感服する。
そのとき、みんなと共に上を見上げていたアイーシャが叫び出した。
「あれが魔王様っ!?
レオ様より素敵だわっ。
いいえ、レオ様も捨てがたいわっ」
……何故、いきなり、レオは捨てられようとしているのだろう、とエミリが思ったとき、そこに更に割って入ってきた者がいた。
「おお、あのときのっ。
やはり、あなたがエミリ姫なのですかっ。
我が姫よっ。
魔王にとらわれのあなたをっ、今、助けに参りますぞっ」
なんか絵本に出てくる王子様っぽい人が叫んでいる。
「……誰?」
そして、助けに参りますぞって、こっちから来たんだが……と思いながら、エミリは、その王子っぽい人のつむじを見下ろしていた。




