表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/65

こんないい扱い、この世界に来て、初めて受けたんだが

 

 兵士たちに連れられていったエミリは大神殿のようにも見える場所に連れて行かれた。


 どうやらそこは神殿ではなく、王宮の離れのようだったが。


 奥には広い岩風呂があり、そこに入れと女官らしき人物に言われた。


 ロバの乳で満たしたという贅沢なその風呂には赤い薔薇まで散らしてある。


 ……なんだろうな。

 こんないい扱い、この世界に来て、初めて受けたんだが。


 おそるおそるエミリはその風呂に入ってみた。


 程よい湯加減だ。


 乳臭いかと思ったが、薔薇のいい香りの方が強い。


 おお、肌がすべすべになった、と思ったら、今度は別の部屋に連れて行かれた。


 そこで数人の女官たちに髪を丁寧に(くしけず)られる。


 美しく整った髪に良い香りのオイルを塗られている間、大きな貝のパレットのようなものを手にした女官たちに化粧された。


 真っ白におしろいでも塗られるかと思ったが、意外なナチュラルメイクで。


 肌にはなにも塗られず、目に|方鉛鉱〈ほうえんこう》で作ったという黒いアイラインを少し引かれ。


 頬や唇にアルカネットの根からとったという紅い染料を塗られただけだった。


 ちなみに、何故、いちいち化粧品の原材料名がわかっているのかと言うと。


 古代っぽいこの世界の化粧品は危ない気がして、いちいち訊いてみたからだ。


 一番年配の女官が、めんどくさそうな顔で教えてくれた。


 だが、それらを塗られながら、エミリは逃げ腰になった。


 方鉛鉱……鉛じゃん。

 危険っ。


 だが、年配の女官に命じられた若い女官たちに後頭部を押さえられ、ガッチリ固定された。


 青銅のスティックを瞼に押し当てられたとき、毒っ、と身構えていたせいか、余計、ひんやりと感じた。


 次に頬紅と口紅を指で塗られた。


 この赤い色はアルカネット。

 日本で言うは、牛舌草(うしのしたくさ)のものらしい。


 アルカネットって……


 確か根に毒がある。


 ……って、今、根から染料を作ったって言った!?


 死ぬじゃんっ。


 アルカネットの花言葉は『あなたが信じられない』。


 いや、なにもかも信じられないっ。


 毒を塗るとかっ。


 いやいやいやっ。

 化粧で死にたくないんですけど~っ。


 アイ ラブ すっぴん。


 ずっとノーメイクッ。


 ノォォォォッ! とか叫んでいるうちに、離れよりさらに大神殿っぽい巨大な宮殿に連れて行かれ、大広間に引きずり出されていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ