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異世界に来てもチートな能力ないんですが、なんとなく魔王様の嫁になりました  作者: 菱沼あゆ


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美しき王子と旅に出る

 

 いや待て。

 酒と料理はっ?

と思ったアイーシャは慌てて言う。


「王子、食事をしてゆっくりして行った方がいいですわ。

 休息をとって、戦闘力を上げていかねばっ」


「それもそうだな。

 アイーシャ殿は賢いなっ」


 マーレクが聞いていたら、

「この莫迦コンビ、魔王の城にはたどり着けなさそうな予感がしますね」

と呟いていただろうが。


 ほんとうにその通りになるのだった。


 おかげで魔王の城はしばらく平和だった。



 そのころ、魔王は焦っていた。


 エミリに『じどうはんばいき』とやらを作ってやると約束したからだ。


 急がねばっ。


 寂しい思いをしているエミリの心に火を灯す『じどうはんばいき』を作るのだっ。


 まあ、確かに自動販売機は心に火を灯す。


 寒い夜も、暑い昼間も。


 一杯の飲み物に癒されることはあるのだが。


 魔王の中でそれは、それ以上のなんか物凄いものになっていた。


 だが、どんな形なのか、想像もつかない。


「エミリよ。

 自動販売機とは、どんな感じのものなのだ?」


「えーと、お金を入れて」


「お金……」


 我が国に貨幣はない。


「ボタンを押すと」


「ボタン」


 魔王とレオは自分の服についている凝った造りの金ボタンを見下ろした。


 エミリが笑顔で、

「飲み物が下から出てくるんです」

と言う。


 魔王とレオは自分の足元を見た。


 何処からっ!?


「あ、あの、そうじゃありません。

 そういうカラクリのついている箱なんです。


 自動販売機って」

とエミリは苦笑いしていた。


「いや、わかっている……。

 お前の言葉につられただけだ。


 中の構造はわかっているのか?」


 魔法で作るにしても、ある程度の構造を知ることは必要だ。


 ドライヤーなどを作るとき、そうだったように。


 エミリはちょっと考え言う。


「えーと。

 子ども雑誌の付録みたいな自動販売機なら、わかるんですけどね」


 『子ども雑誌の付録』とやらがよくわからんが。


 まあともかく、箱に金を入れたら、飲み物が出てくるわけだな。


「レオよ。

 箱を持て」


 はっ、とレオが海賊の財宝が入ってそうな大きな宝箱を引きずってきた。


「……魔族は自国の貨幣を持たないからな。

 人間と物々交換するときみたいに、金の塊を入れるのは大変だろうし。


 よしっ。

 では、まず、我が国の貨幣を作ろうっ」


「いや、そこからですか……」

とエミリが言った。



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