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異世界に来てもチートな能力ないんですが、なんとなく魔王様の嫁になりました  作者: 菱沼あゆ


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エミリの魔法家電

 

「みなさんが帰ってしまわれて寂しいですね」


 ロンヤードたちを送り出したあと、エミリはしょんぼりしていた。


 だが、すぐに、

「あ、でも、魔王様たちがいらっしゃるので、毎日楽しいですけどね」

と魔王や魔物たちを振り返り言う。


 そんなエミリに、じんと来た魔王はまた安請け合いをしてしまった。


「私も人間が少なくなって寂しいぞ。


 そうだ。

 景気付けに、またなにか作ってやろう。


 お前は家電とかいうものを作るのにハマっていてたな」


 エミリは、ははは……と苦笑いし、

「私は考えるだけで、作ってらっしゃるのは魔王様ですけどね」

と言う。


「そして、電気を使っていないので、家電じゃなくて、家魔(かま)だな、と思ったのですが。


 語呂が悪いので。

 魔法を電気のように使うものということで。


 魔法家電と呼ぼうかなと思ったんですけど」


「そうか。

 それはいい」

となにがいいのかわからないまま、魔王は言ってみた。


 ともかく、エミリのご機嫌をとりたかったのだ。


 彼女の笑っている顔が好きだからだ。


 何百年、何千年と生きてきた気がするが。


 微笑むエミリを見ていると、今まで感じたことがないほど、胸の奥がじんわり、ほっこりとする。


 魔王としては牙を抜かれた状態なのかもしれないが。


 そもそも自分は争いは嫌いだし。


 誰かが上に立ってまとめねば、他の種族にやられるかもしれないと思って、魔王をやっているだけだし。


 ……まあ、そう考えれば、最初から自分に牙なんかなかったのかもしれないが。


 だが、お前を守るためなら、ない牙でも磨いて尖らせるぞ、エミリ、と魔王はエミリのために覚悟を決めながら問うてみた。


「今、なにか作りたいものはあるか?」


「そうですねー。

 あっ、脱衣場にコーヒー牛乳とかあるといいなーと思って」


「コーヒー牛乳?」


「いえまあ、中身はまたぼちぼち考えるとして。

 とりあえず、自動販売機が欲しいかなって」


 現代の知り合いがこの地にいたら、


 いやそれ、家電じゃない……と呟いたことだろうが。


 前の世界から来ているのは、今のところ、大阪城のゾウだけだった。


 しかも、そのゾウの人もたくさんの小悪魔の中に混ざって、何処にいるのかさっぱりわからなかったので。


 誰もなにもつっこんでは来なかった。



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