脱衣場に作ってみました
「そうだ。
ロンヤード様。
ドライヤーも作ったんですよ」
エミリは脱衣場で、石でできた不思議な形のものを見せてきた。
あっち、と指差した手の形のような石だ。
中はくり抜いてある。
「あ、覗き込まずに少し離れてください」
と言ったエミリが三回その石を叩くと、くり抜かれた石の穴から熱い風が流れてきた。
「皆様、これで、髪をお乾かしください。
ほんとうは昔のパーマネントの機械みたいなのの方が乾かしやすいし、作りやすいかなと思ったんですが。
えーと。
古い白と黒の炊飯器を逆にしたみたいなのなんですが……
って、そんなこと言っても、よりわからなくなりますよね」
エミリはちょっと恥ずかしそうにそんなことを笑う。
確かになにがなんだかわからない。
さすが神の子、とロンヤードは思っていたが。
魔王は、そんなエミリの姿を微笑ましげに見ている。
「その形だと場所をとるので。
やはり、ドライヤーにしてみました。
どうぞ、お使いください。
火山の溶岩の上を吹き渡る風を転移させてもらいました」
ロンヤードたちはエミリと魔王の前に跪く。
「もったいない。
魔王様、エミリ様。
我々ごときのために、このようなことまでしていただき……」
「よいよい」
と美々しい魔王は、王者の貫禄で微笑んで言う。
「エミリは今、発明するのにハマっておるのだ。
付き合ってやってくれ」
はっ、ありがたき幸せっ、とロンヤードたちが頭を下げ、かしこまったとき、エミリがドライヤーを手に魔王に話しかけた。
「魔王様、これ、温度や風量を調節できると良いのですが」
「うむ。
では、転移させる風の位置を変えれるようにしてみようか」
なんか……ほのぼのするな、とみんな、魔王とエミリが仲睦まじく話しているのを眺めていた。




