まあ、魔族に法律関係ないですけどね
青く染められたタケノコはとりあえず置いておいて。
いろんな物が煮られた釜も置いておいて。
エミリはタケノコを丸のまま焼いてみた。
アンジェラがおこしてくれた火の中に放り込む。
「どうですか、お妃様っ。
すばらしい火力ですよっ」
タケノコは燃え尽きた。
「も、もっと早く出した方が良いのでは……」
とマーレクが言い、
「もうちょっとちょこんと端に置いた方がいいのでは」
とレオが言う。
いや、火力を落とした方がいいんだが。
せっかく全力で火をつけてくれたアンジェラに悪いからな、と思ったエミリは、
「網とか鉄板とかあるといいんだけど……」
と呟く。
「釜なら、ここにあるぞ」
と横で声がした。
見ると、神出鬼没のルーカスが立っていた。
「釜の上で焼いたらいいんじゃないか?」
「そうね。
釜の上でも焼けるわよね。
あっ、でも、お金がないわ」
魔王が、
「人間の金か。
待っておれ、今から作るから」
と言う。
いや、贋金か……。
「大丈夫だ、ホンモノそっくりに作る」
いや、そういう問題ではない。
レオが、
「私がとって参りましょう」
と言って取りに行こうとしたが、溜息をつきながらも、マーレクが払ってくれた。
「そういえば、ルーカス。
アンジェラがあなたから、試薬を買ったと言ってたんだけど。
何処からそんなもの手に入れたの?
自分で作れるの?」
「いや、何処かで魔物からもらったんだ。
物々交換で」
「ああ、物々交換でもよかったのね。
はい」
とエミリはタケノコを渡そうとする。
「……いや、そんな青いのはいらない」
つい、側にあった青いタケノコをつかんでしまっていた。
「じゃあ、綺麗なやつあげる」
「いいよ。
食べるときは、自分で掘るから」
うーむ。
タケノコで済むのなら、マーレクにお金を返せるんだが、と思っている間に、いい香りがして、タケノコが焼けてきた。
「うむ。
香ばしい良い香りがするな」
と魔王が頷く。
「部屋のフレグランスに良さそうだ」
……お腹空いてきそうですけどね。
まあ、この人たち、お腹空くとかいう感覚はないのかな?
と思うエミリは、みんなとともにタケノコが焼けていくのを眺めていた。
「釜が鉄板の代わりになってよかったわ。
そうそう。
タケノコって煮ても美味しいのよ」
「へー」
「釜があったら……」
と言いかけ、エミリは気づいた。
鉄板がわりにした釜を見下ろし叫ぶ。
「釜ーっ」
「人間って、ひとつのこと考えてると、意外と頭回らなくなりますよね」
とマーレクが呟いていた。




