じゃあ、まず、貴様が食べてみろっ
丁寧にタケノコを掘り出したエミリたちは試薬をかけてみた。
タケノコは青いままだった。
「お召し上がりください」
とアンジェラが言う。
「嫌です」
とエミリは言った。
「だって、青いっ。
これ、青いわよっ」
なんか嫌っ、とエミリは言ったのだが、マーレクは、ふかふかした茶色い皮に包まれたタケノコを見下ろしながら言う。
「これは、皮をむいて食べるものなのですよね?
じゃあ、別にいいのではないですか?」
いやいや。
青い皮むいたら食べられるだろうと言うのなら。
じゃあ、まず、貴様が食べてみろっ。
っていうか、まず、触ってみろっ、とエミリはマーレクに思う。
マーレクは青いタケノコから距離をとり、遠巻きに眺めているだけだったからだ。
「まだ皮はむかない方がいいわ。
これから茹でるから。
むいて茹でてもいいんだけど。
むかない方がアクが抜けやすいらしいし。
ここ、米ぬかなさそうだから。
アクが抜けやすい方法をとった方がいいわよね」
この辺りで、米を見たことがないので、米ぬかはおそらくないだろう。
「米ぬかも米もないから、収穫したら、素早く、大きな釜とかで茹でないと」
「……大きな釜か」
と呟いた魔王に、レオが笑顔で言う。
「ちょうどいい釜がございますよ、魔王様。
ほら、この前、あの者を茹でた」
「おお、あれか。
地下の拷問部屋にあるな、取って来い」
「嫌です」
とまたエミリは言う。
魔物かなにかが茹でられた拷問用の釜。
確かにデカいだろうが、それでタケノコは煮たくない。
「王妃様、釜といえば、私ですよ」
と魔女、アンジェラが誇らしげに進み出た。
確かに、なんかいつも、ぐつぐつ煮てるもんな、魔女、と思ったとき、アンジェラが言った。
「さっきまで、魔物によく効く薬草を大量に煮ていた大釜がございます」
今なら空いていますっ、と言われたが。
「魔物によく効く薬草ってことは、人間が飲んだら――」
「死にますっ」
とアンジェラは力強く言う。
「ありがとう。
遠慮しとくわ」
とエミリは丁重に断った。




