森には罠がありました
マーレクと魔女、アンジェラと魔王とレオを引き連れ、エミリは森の探索に出かけた。
マーレクはアンジェラに、
「この薬草は魔族の身体に大変よく。
人が食べると死にます」
「この薬草は魔族の身体の傷を素早く治します。
人が食べると死にます」
「この薬草は魔族の頭痛を瞬時に治します。
人が食べると死にます」
と説明を受けながら、うんうん、と頷いている。
この辺りには、崖のトマト以外、食べるものはないようだ。
「もっと奥まで行ってもいいですか?」
と振り返りエミリが訊くと、
「まあ、我々がついているから大丈夫だろう。
お前を害するものがあれば、我々が始末する」
と魔王が力強く言ってくる。
まあ、魔王以上に人間を害して来そうなもの、あまりないですけどね、と思いながら、みんなで森の奥へと進んだ。
どんどん木々の様子が変わってきた。
「こんな奥まで入ったことなかったな」
と魔王が後ろで呟く。
「一本一本の木が細くなって、さっきより森の中が明るくなりましたが……。
なにか妙な音が」
とレオがケモミミを澄ます。
カンカンと甲高い音が、エミリたちを取り囲むように鳴っている。
はっ、とレオが身構え、叫んだ。
「魔王様っ、お気をつけをっ。
地面に罠がっ」
レオは魔王とエミリをかばって前に出た。
「なんとっ。
こんな誰も通らないようなところにまで罠がっ。
この先になにかあるのかっ?」
マーレクが、
「ここを抜けた場所が意外と街なのかもしれませんよ」
と言ったとき、エミリがトコトコと前に出ようとした。
魔王に腕をつかまれる。
「待て、エミリッ。
危険だぞっ」
「……そうですね。
転んだら、串刺しになりそうですよね」
でも、きっと大丈夫です、とその手を外させた。
「確かにこれ、異世界のものですから。
私の知っているものとは違うかもしれませんけど。
この地面から突き立つ危険な感じ。
非常によく似ています。
アンジェラ、斧とかない?
ああ、スコップか軍手の方がいいのかな」
とエミリは手にさげているカゴからなんでも出してきそうなアンジェラに言った。
 




