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異世界に来てもチートな能力ないんですが、なんとなく魔王様の嫁になりました  作者: 菱沼あゆ


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食べ物を探しに行きます

 

 しかし、今から畑を作っても、どんなに実るのが早い作物を作っても、今日明日には食べられない。


 まず、タネがないし。


「よしっ。

 辺りに自生しているものを探しに行ってきますっ」

とエミリは宣言する。


「待て。

 ならば、私がついて行こう」

と魔王自ら言い出した。


 それを聞いたレオが、


「魔王様、城を空けないでください。

 私がエミリ様について行きます」


 そう名乗りを上げる。


「お前、ここまでエミリが来るのに、ついて来たんだろう。

 さらについて歩くとか。


 私より先に親しくなってどうする。

 お前、エミリを嫁にしたいのか」

というよくわからないやりとりのあと、結局、二人ともついて来ることになった。


 人の気配も消え、さらにガランとした感じになった王の間を振り返りながら、エミリは不安になる。


 誰もいない間に、別の魔物が玉座に座ってて。

 魔物の世界を支配していたらどうするのだろう……?


「あの、王の間、開けておいて、大丈夫ですか?

 鍵とかかけておいたらどうですか?」

とつい言ってしまったが。


「鍵?」

と二人に訊き返される。


 そうか、魔物に鍵、意味ないよな、と思いながら、みんなで外に出た。



「とりあえず、森に行ってみよう」

と言う魔王について、エミリたちは木々に蔦が絡む、鬱蒼とした森の中に入り込む。


「果実とかありそうですね」

「あるような気がするな」


「キノコとか生えてそうですね」

「生えてそうな気がするな」


「……入ったことないのですか、魔王様」

「こっちに湖があった気がするな」


 気がするなが多いですよ、魔王様、と思いながら、二十分近く歩いた。


 どんどん森は深くなっていく。


「なにもないですよ、魔王様。

 そして、湖もないですよ、魔王様」


 もしや、道に迷われましたか?

 ここはあなたの国ではないのですか? とエミリが問うと、魔王は、


「じゃあ、お前は自分の家の近所がすべてわかるのかっ」

とショボイことを言って逆ギレする。


 もしかしたら、レオはわかっているのかもしれないが、魔王を立てるためか、黙って一番後ろをついて歩いていた。


 そのとき、ようやく森が開け、湖に出た。


「あっ、魔王様。

 綺麗な湖ですよっ。


 湖のほとりに……っ」


 赤ずきんちゃんのようなものが……?


 エミリは身を乗り出し、その人影を見る。


 人影は、頭から赤く長いマントをかぶり、籠を腕にひっかけて持っていた。


 だが、近づいてみると、それは可愛い女の子ではなく、老婆だった。


 しかも、オオカミを喰ってしまいそうな凶悪な顔つきの痩せた老婆だ。


 ()られるっ、と思ったエミリはアイーシャの動きを思い出し、反射的に身構えたが。


 魔王といるせいか、特に襲われなかった。


「アンジェラ」

と魔王がその老婆に呼びかける。


 魔王様、喰われますっ、とつい思ってしまったが、老婆は、今すぐとって喰うっ、という顔をしているわりには、普通に、

「なんでしょう、魔王様」

とトコトコやってきた。


 心なしか、さっはよりは、穏やかな表情になっている。


 っていうか、アンジェラって天使って意味では。


 まあ、この世界では違うのかもしれないけど、などと思っているうちに、また老婆の顔が穏やかになった。


 訊いてみると、

「いや、この辺りは、恐ろしい魔物が出てくるので。

 殺らねば、殺られるっと思って、いつも緊張して歩いているのです」

と魔女、アンジェラは言う。


 いや、あなたが恐ろしい魔物っぽいんですけど、と思ったとき、魔王が彼女に向かい言った。


「アンジェラよ、ちょうどよかった。

 この娘は私の妃になる娘なのだが。


 美味しい作物などを探している。

 身体に良い薬草などを知っているお前がこの森の植物のことを教授してやってほしいのだが」


 かしこまりました、魔王様、とアンジェラはお辞儀をした。


 姫のような、優雅なお辞儀だった。


「では、お妃さま」


 いや、まだ、妃になってないんですけど、と思いながら、アンジェラの説明を受ける。


 アンジェラはカゴの中にあるたくさんの薬草を見せてくれた。


 ゼンマイのようなものを見せ、アンジェラが言う。


「この薬草は魔族の身体に大変よく。

 人が食べると死にます」


「……それは食べないようにします。

 ありがとうございます」


 次に茅のようなものを見せて言う。


「この薬草は魔族の身体の傷を素早く治します。

 人が食べると死にます」


「食べないようにします。

 ありがとうございます」


「この薬草は魔族の頭痛を瞬時に治します。

 人が食べると死にます」


「ありがとうございます」


「この薬草は……」


 一通り、アンジェラに説明を受けたエミリは言った。


「ありがとうございました。


 よくわかりました。

 この森に人の食べられるものなどないと言うことが」





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