ついにっ! というほど長くもない旅
ケモミミなだけのイケメン魔獣、レオに向かって、
「下賜してください!」
と叫ぶアイーシャは魔物たちに送られ、帰っていった。
魔王直属の部下であるレオがエミリたちを連れていってくれることになり、
「うるさいし、お前はもう帰れ」
とレオに言われたからだ。
「もっと罵ってくださいっ、レオ様っ。
私、また必ず、ここに戻って参りますっ」
I'll be back! 的なことを叫びながら、アイーシャは去っていった。
「そういえば、アイーシャは私に姫のなんたるかを教えるためにいたのでは……。
彼女から学んだのは、見事な護身術(?)と変わり身の速さだけなのですが」
「まあ、道中賑やかでよかったってことで」
とマーレクは強引にまとめる。
共にレオの後をついて行きながら、マーレクは言った。
「私も王の許まであなたを届けたら帰りますが。
くれぐれも魔王様にご無礼のないように。
ああいや、あなたは花嫁という名のイケニエなんでしたっけね?
では、くれぐれも喰われるまで、ご無礼のないように」
とこれ以上ないくらい無礼な感じに言いかえてくる。
そんな人間たちのやりとりに溜息をつき、レオが言う。
「魔王様は人間などお食べになりません。
食べるにしても、こんな鶏ガラみたいな人間は好まれないと思いますよ。
食べるとこないじゃないですか」
ぐふっ。
確かに私は肉感的ではないですが……。
学校でも、友だちに、
「あんたとぶつかると小骨が刺さる」
とか言われてましたけどね。
ちょっぴり傷つきながらも、魔王の城へと進む。
魔窟の外は森で、少し進むと、険しい岩山があった。
まるでお城のような尖った形の岩山だ、と思ったのだが、どうやら、それが魔王の城のようだった。
エミリたちの住む奇石のでっかいの、みたいな感じだ。
「あ、俺はこの近くで商いしてるんで。
なにかあったら呼んでくれよ」
じゃ、とルーカスもいなくなる。
「では、姫。
参りましょうか」
と言うレオに連れられ、エミリたちはその岩山にぽっかり空いている穴の中へと入っていった。
すると、長い廊下のような洞穴が現れる。
壁に青白い照明がずらりと並んでいると思ったら、鬼火のようなものだった。
……便利だな、魔力って、とエミリは思う。
この洞穴もエミリたちの住まいのように、アリの巣みたいに岩山の中に広がっていたが。
城らしく、かなり高い位置まで上がれるようになっていた。
細い螺旋状になっている通路を上がり、最上階に行くと、西洋の王の間のようなものがあった。
強い魔力を持っている魔王には警備などいらないのか。
人間の王の間のように、兵士たちが守っていることもなかった。
王の間の奥には、立派な玉座があり、黒髪長髪、色白の、なんか神々しいような美形が座っていた。
脚を組み、肘掛けで頬杖をつく、中世の王のような格好をしたその男は、物憂げな表情でこちらを見、問うてきた。
「お前がイケニエの姫か」
お前が魔王か、とエミリは思った。
アイーシャがまだいたら、エミリを突き飛ばし、
「私がイケニエの姫ですっ、魔王様っ」
とか言い出しそうな雰囲気のあるイケメンだった。
……まさか、それで早々にアイーシャを返したとか?
とエミリはレオを見たが。
レオは素知らぬ顔をしていた。




