エピローグ
「…やっぱり、きついね…
いつも一緒にいる人がいなくなるっていうのは…」
その日、居間のソファーに座って、ボーとしていたハルがゲームをしている桜にボソッと言った。
「…覚悟はできていたんでしょう。
だから、あなたは泣かずに見送ることができたじゃなかったですか。
…その点に関しては褒めてあげてもいいですよ。」
桜は微妙に素直じゃない褒め方をした。
「桜おねぇちゃんが事前に言ってくれたってのは大きかったよ。
ありがとね。
でも、いざ、いなくなっちゃったことを感じちゃうとやっぱり、泣きそうにはなっちゃうんだよ…
なんせ急だったしね…
もっと何か私にできたら、ハイテ君は治ったのかなとかさ…
…まだまだだね。私も…」
ハルはまだ気持ちの整理ができていない様子だった。
「物の一生なんてそんなものでしょう。
人なら病気やケガ等でおおよそ死期は分かるものですが、物に至ってはそうはいきませんからね。
人ですら事故で突然、いなくなってしまうことがあるのですから、なおのことですよ。
しかし…」
桜は途中で話をやめて、黙ってしまった。
ハルは不思議に思って、桜に聞いた。
「何よ?途中でやめちゃって。
気になるじゃん。」
桜は顔を決してハルには見られないように、気恥ずかしそうに言った。
「…ですが、あの子もあなたに感謝していると思いますよ。
あなたくらいですからね。
物ではなく人として扱ってくれたのは…」
桜の言葉にハルは嬉しくなって、笑顔で答えた。
「うん!
そうだといいな!!」
桜はフンといって、ゲームを続けたのだった。
そんな桜を見て、ハルは意地悪そうに言った。
「でも、こんな褒めてくれる桜おねぇちゃんってなんか気持ち悪いわ。
どしたの?なんかいいことあった?」
その瞬間、リモコンがハルの頭めがけて飛んできた。
「いたっ!!」
ハルはリモコンが見事に頭に直撃して、当たった箇所をさすった。
「素直に褒めたら、気持ち悪いと言われるのは心外ですよ。
反省なさい。」
桜はゲームの画面を見ながら、ハルに注意した。
ハルはくっそぅと思ったが、いつも通りの桜で少し安心したのだった。
そして、桜は最後にハルに言った。
「…私もいつ消えるか分かりません。
…だから、同じく心構えだけはしておきなさい。」
ハルは桜の言葉をかみしめて、真剣な表情で答えた。
「…うん。分かってる。」
終わり




