合コン ~恋バナ~
「さて、これで本当に皆一通り歌ったけど、どうしようか?」
ハルは一旦、まとめて次にどうするかを皆に聞いた。
「まぁ、ちょっと桜さんのインパクトが強すぎて、歌う気分じゃなくなったよね。
合コンってこういう時どんな事するんですか?」
遥香は笑いを落ち着かせながら、神山に聞いた。
「いや。僕は正直、桜さんのこと片付けれてないんだけど…
てか、そもそもなんで合コンなんてしようと思ったの?」
神山はふと気になって、遥香に聞いた。
「え、えっと~それはちょっと恥ずかしいんだけど…」
遥香は流石に恋が何なのか知りたいからとは言えず、迷っていた。
「遥香ちゃんが恋ってなんなんだろ~って言い出したことから始まったんだよ~」
ヨシコは恥ずかしげもなく、遥香の代わりに合コンの目的を言ったのだった。
「ちょ、ちょっと待って。そんなはずいこと言わないでよ!」
遥香は慌ててヨシコに言った。
「なんでも正直に話さないとダメっていっつも遥香ちゃん言ってるじゃん~
だから、代わりに私が言ってあげたんだよ~」
「ホント待って。それだと私がマジで悩んでるみたいになってるから!
そ、そこまで本気じゃないですよ~
ただ、男の人の意見も聞いてみたいな~って」
遥香は皆に言い訳のようなことを言った。
ハルは遥香のめったに見せない焦った姿が面白かった。
「そうそう。恋って何なんだろうな~てね。
例えば、神山さんって愛さんと付き合ってるじゃん。
じゃあ、恋ってどんな感じなのか分かるでしょ~
教えてよ~」
ハルは実際に異性と交際している神山に聞いた。
「こ、恋って…
またすごい回答に困る質問だな~
…まぁ、いっか。
実は僕、ずっと瀬戸に片思いしてたんだよ。」
神山は少し悩んだが、本心をハルに言った。
ハルは驚いた。
「そうだったの!!全然そんな感じじゃ無かったじゃん!!
むしろ喧嘩ばっかりしてるイメージだったよ。
正直、付き合ったって聞いた時も驚いたもん。」
「昔からそういう関係性だったからね。
なんとなく好きだなって思った時も、今までの関係を壊したくなかったし、僕自身、喧嘩してるようでもそんなに嫌じゃなかったんだよ。
ほら、喧嘩するほど仲がいいっていうじゃん?
実際、喧嘩する度にあいつがどんなこと考えてるとか、どんなことが嫌いなのかとか分かってくるのがなんか嬉しかったというかなんというかね。
そりゃ、腹立つことのが多いけどね。」
神山は少し照れながら、話した。
他の皆もうんうんと頷きながら、神山の話を聞いていた。
「へぇ~思ったよりいいこと言うね。
流石は大人だね!」
ハルは素直に神山を褒めた。
「う~ん。まだちょっと引っかかる言い方をするね。君は。」
神山はハルに褒められたが、そんなに嬉しくなかった。
「なんかいいですね。そういうなんでも分かってる幼馴染って~
うらやましいです。
でも、どんな告白したんですか~?」
遥香はちょっと意地悪そうな顔で神山に聞いた。
神山は少し恥ずかしそうにして、悩んだがここまで来たらと話し始めた。
「え~と、就職活動中にね。
僕は比較的すぐ内定をもらえたんだけど、瀬戸の方が中々うまくいかなくてね。
かなり参ってたんだよ。
そんな姿見てさ。まぁ、何だろ…
ちょっとでも楽になってほしいなって思って、言っちゃったんだよ。
「僕と結婚する?そしたら、就職上手くいかなくても大丈夫だよ?」って。
今思うと、かなり微妙なこと言ってるよね。」
「また、大胆な!!
色々飛ばしすぎじゃない?
絶対、愛さん怒ったでしょ?」
ハルは驚いて、神山に聞いた。
「うん。その通り。
思いっきり、脛を蹴られたよ。
「ふざけんな!」ってさ。
そりゃ痛くて、脛を抑えながら、瀬戸の方見たら、泣いてたんだよね~
そんな瀬戸見たことなくてさ。
もう脛の痛みとか気にならなくなって、瀬戸の顔見ながら、ちゃんと言ったんだよ。
「僕はお前がずっと好きだった。だから、お前のそんな辛そうな姿を見たくない。」って。」
皆はおぉ~とはにかみながら、神山の話を聞いていた。
「そしたら、今度は逆足の脛を蹴られたよ。
「うるさい!」って。
なんて的確に痛いとこ蹴ってくるんだと、僕は脛をさすりながら、逆に泣かされてたよ。
そしたら、あいつは僕に手を差し伸べてさ。
「しょうがないから、付き合ってあげる」って。
あいつの性格上、絶対に好きとは言ってくれないだろうなとは思ったけど、なんとなく気持ちは伝わったから、それでいいやって嬉しくてね。
それでまぁ、今に至るって感じかな。」
皆はニヤニヤしながら、なぜか拍手していた。
「いい話ですね~ほんとうらやまし~」
「神山さん。マジでかっこいいすわ。」
「本当に憧れます!」
「いや~恥ずかしかったけど、今日初めて褒められた気がするよ~」
神山は年上としての面目を保てたと安堵していた。
「なるほどな~
で、結局、恋って何なのかまとめてみてよ。」
ハルは純粋な顔をして、神山に言った。
「ま、まだなんか言わないとダメなの?」
「だって、今までのはどっちかっていると体験談じゃん。
こう、恋とはこうだ!みたいなのってないの?」
「…君は本当に僕を素直に褒めれない人だな。
瀬戸に似すぎだよ。」
神山はうんざりした様子で言った。
「え~恋ってのは気づいたら好きになってるってことじゃないかな?
僕も別にきっかけがあって好きになったわけじゃないから、難しいよ。
一緒にいた時間が長かっただけなのかもしれないけどさ。」
「う~~ん。まぁでも、きっとそんなもんだよね~
サトにぃとかって好きな人いないの?
実は付き合ってるとか?」
ハルは神山の答えに納得できず、急に聡に話を振った。
「次は俺かよ…お前にだけは聞かれたくなかったわ…
別に好きな人なんていねぇよ。
付き合ってもいねぇし。」
聡はがっくりしながら、ハルに答えた。
遥香と神山は可愛そうにと言った顔で聡を見ていた。
ハルはそんな聡のことを気にもせず、次に太田に言った。
「そっか~じゃあ、太田君はどう?」
「え?僕ですか?
…残念ながら、僕も女性の方と話す機会が少ないので、あまり恋とかは分からないです。」
「そっか~」
ハルはあんまり納得できない様子であった。
そんなハルの様子を見て、コホンと言って、聡が話し始めた。
「…えぇ~これはあくまで神山さんの話を聞いて思ったことだけど、それでいいなら。」
ハルは興味深々な顔になった。
「聞く聞く~」
「えっとな。
多分、好きっていうのは普段どんだけ相手のことを考えてるかだと思う。
神山さんの場合は付き合いが長かったことだったり、喧嘩したりが原因かは分からないけど、相手のことを考えることが多かったんだよ。
相手のことを考える時間というか量というか、そういうのが積み重なって、好きになるんじゃねぇの?」
聡は少し恥ずかしそうに話していた。
「でも、喧嘩した時って、相手のことが嫌いってネガティブな考えの方が大きいんじゃないの?」
ハルは純粋に疑問に思ったことを聡に聞いた。
「俺は考える内容についてはあまり関係ないと思ってるよ。
憎いって思うのは流石にダメだろうけど、嫌いって気持ちってのは案外、自分の方が悪いことの方が多くね?
よく考えたら、自分がしていたことが悪かったり、自分の悪いところを指摘されて、むかつくっていうかさ。
それに気づくと、相手が自分のことをそんだけ分かってくれてるんだって思えるっていうかな。
なんかうまく言えねぇけど。」
ハルは確かにと言った顔をした。
聡は拙い言葉で話を続けた。
「だから、結局、相手のことを考えてる量が増えてくと、一人の時でも、ふと相手のことを考えたり、そいつとどんなことをしたいとか思い始めるんだよ。
そういうのが恋なんじゃねぇのかな?
…はい!以上!終わり!!」
聡は恥ずかしさが限界に近付いて、話を無理やり終わらせた。
皆は何故か拍手していた。
「いや~良かったよ~
神山さんの説明より、全然納得できたよ~」
ハルはすっきりした顔をしながら、聡をほめたたえた。
「だから、君はいちいちやめなさい。
でも、本当良かったよ。いい考察だったよ。」
神山もハルに呆れながらも、聡を褒めた。
「すごいです。加藤先輩!
かっこいいです!!」
太田は聡を絶賛していた。
「さすが~ハルのいとこだね~」
ヨシコもゆったりと褒めていた。
遥香はなにも言わずに笑いながら拍手していた。
そうして、その後は何曲か歌い、お開きの時間がやってきた。
「いや~今日は本当に楽しかった~
皆来てくれて、ありがとう~
神山さんも奢ってくれてありがと~」
ハルは皆に感謝を述べた。
「まぁ、僕も何やかんや楽しかったしね。
…ただ、この後、あいつに怒られることを考えると怖いわ…」
神山は桜を紹介するということをばらされたことに対する瀬戸の怒りが怖くて、うなだれていた。
「大丈夫!私がメールでフォローしとくって~」
「それはマジで、頼むよ!ホント、余計なことは言わないでよ!!」
神山は切に願ったのだった。
皆が分かれの挨拶をしている中、遥香はこっそり、聡に言った。
「…流石、本当に恋している人の言うことは違うね…」
聡はびくッとしたが、強がった様子で遥香に言った。
「な、何のことだよ?」
「まぁ、いとこだし、大変だけど、私は応援するよ。
頑張ってね!」
「だから、何のことだよ!!」
聡の慌てふためく姿を見て、あははと笑う遥香だった。
そうして、皆は別れて、その日は帰宅したのだった。
続く




