恋愛とは?
「…はぁ…恋って何なんだろうね?」
ハルが中学生になって初めての夏休みの初旬頃、ハルの屋敷でハルとヨシコは夏休みの宿題、遥香は受験勉強をしていた。
そんな中、不意に遥香が呟いた。
「…現実逃避してないで、集中しなよ。
遥香ちゃん。」
ハルは宿題をしながら、遥香に注意した。
「えぇ~もっと事情とか聞いてきてよ~
つまんないじゃん~」
遥香は机に乗り出して、ハルに言った。
ハルはため息をついて、遥香に言った。
「いや、別に私は夏休みの宿題なんて、別の日にやればいいだけだからいいけど、遥香ちゃんが一人じゃ集中できないって言ったから、こうやって一緒に勉強してるんじゃん。」
「それはお母さんに対する方便でさ~
私、普段コツコツやるタイプだから、別に追い込まれてるわけじゃないし。
要は一緒に楽しくおしゃべりしながら勉強したかっただけなんだよ。」
遥香はこともなげにハルに言ってのけた。
ハルはそういうことかと納得した顔で遥香に言った。
「…まぁ、確かに遥香ちゃんって賢いから、急に一緒に勉強しようって言いだしたのは変だなとは思ってたんだよ。
じゃあ、休憩がてら話を聞いてあげるよ。」
「私も別にいいよ~」
ヨシコも賛同したのだった。
遥香は嬉しそうな顔をして、再び、少し上を見ながら、呟いた。
「…恋って何なんだろうね?」
「知らないです。」
「私も分かんない~」
そして、話が終わってしまった。
「ちょ、ちょっと待って!!
流石にそれは寂しすぎる!!
もうちょっと話を膨らませる努力をしてよ!!」
遥香は焦った様子で二人に言い寄った。
「そんなこと言ったって、私とヨッシーに聞く時点ですぐ終わるの分かってたでしょ。
別に好きな人もいないしさ。」
「そうだよね~」
ハルとヨシコは遥香に冷たく言った。
「…最近、二人の私に対する扱いがどんどん雑になってきてる気がするんだけど…」
遥香は珍しくしょんぼりしている様子だった。
その様子を見て、ハルはしょうがないなと遥香の頭を撫でて、優しく笑って言った。
「身から出た錆っていうんだよ。こういうのは。」
「全然、励ましになってない!!」
遥香はすぐさま突っ込んだのだった。
ハルとヨシコはケラケラ笑っていた。
ハルは笑いが落ち着いた頃に遥香に聞いた。
「でも、急になんでそんなこと言い出したの?」
遥香は少し恥ずかしそうな顔をして、ハルに答えた。
「…えっと、実はこの前の終業式の日にさ。
告白されてね。まぁ、断ったんだけど。」
「えぇ~また~?ホント、遥香ちゃんってモテるんだね~」
「まぁね~でも、いつもと違って、その男の子が食い下がってきてさ。
「他に好きな人がいるのか?」って聞かれて、「いない」って言ったんだけど、「じゃあ、一回遊びに行かない?絶対俺のこと好きになるから」って言われたんだよ。」
「すごいね~一回は断られてるのにメンタルが強いね~」
ヨシコも驚いていた。
「私、なんか怖くなってさ。
「いや、いいです。」って言って、終わったんだけど…
今思えば、そこまで必死にアピールしたいくらい人を好きになれるっていいな~って…
ちょっとうらやましく思ったんだよね。
振った私が言うのもなんだけどさ。」
遥香はいつもと違い、物憂げな様子であった。
「それで、恋するってどんな感じなのかな~って興味が沸いたっていうかね。
だから、聞いたの。」
ハルは遥香の話を聞いて、う~んと考えた。
「じゃあ、遥香ちゃんはどんな人が好きなの?」
「顔がかっこいい人。」
遥香は平然とした顔で即答した。
ハルは呆れて、遥香に言った。
「だから、そういうこと言うから、話終わっちゃうんだよ。」
「だって、本当にそうなんだもん。」
遥香のきょとんとした顔に少し苛立ったが、ハルは頑張って話を広げようと遥香に言った。
「え~じゃあ、顔はまぁかっこいいとして、どんな性格の人が好きなの?」
「ん~そうだな~無難に優しい人かな~
後、いじっても怒らない人。」
遥香は性格の悪そうな回答をハルにした。
ハルは頭を抱えて、遥香に言った。
「…遥香ちゃんって、Sだよね…」
「はは~どっちかっていうとそうだね~」
遥香は楽しそうに笑っていた。
すると、ヨシコがジュースを飲みながら、ハルに聞いた。
「ハルちゃんはどんな人が好きなの~」
「えぇ~私?」
ハルは不意に聞かれて、戸惑った。
「そうだよ。散々、私のことバカにしてたんだから、そりゃ参考になることを言ってくれるんでしょう。」
遥香はハードルを上げたのだった。
ハルはぐぬぬっとなりつつも、考えて答えた。
「そうだな…
私の場合、まず第一にお化けが見えることを認めてくれるのが、大前提としてあるよね。
あとはまぁ、正直になんでも話してくれる人がいいかな?
遥香ちゃんと違って、顔は別に好みとかはないよ。」
「…普通だな。」
「そうだね~普通だね~」
遥香とヨシコは真顔でハルの答えの感想を言った。
「普通ってなんだよ!!
こちとら頑張って考えて答えたのに!!」
ハルは二人の感想に怒った。
そして、ハルはヨシコに同様の質問をした。
「ヨッシーはどうなんだよ~ヨッシーは~」
ヨシコは笑いながら、ハルに答えた。
「私はハルちゃんみたいにかっこいい人が好きだよ~」
そんなヨシコの答えにハルは嬉しくなり、ヨシコを抱きしめながら、言った。
「ヨッシーは本当に可愛いな~」
一方、遥香は少し引いた顔をしていた。
「…ヨッシーって結構危ういことを言うよね。」
「そうだ!
ここは人生経験豊富な桜さんに聞いてみよう!!」
遥香が思いついたように二人に提案した。
「えぇ~桜おねぇちゃんが話してくれるかな~」
ハルがヨシコから離れて、机に片肘をつきながら、遥香に言った。
「何の話ですか?」
すると、突然、机の中から桜が顔を出した。
「うわっ!!
だから、そういう登場の仕方やめてよ!!
マジでびっくりするから!!」
桜はふふふと笑って、悪びれもせず、ハルに言った。
「驚かそうとしてるんだから、しょうがないじゃないですか。
…で、何の話を私に聞きたいんですか?」
「えっと、所謂恋バナなんだけど、桜おねぇちゃんは恋って何だと思う?」
ハルはとりあえず、桜に聞いてみた。
すると、桜は意外にもちゃんと話を聞いてくれるようで、少し考えた後にハルに答えた。
「…そうですね。
その人のためなら死んでも良いと思える程、心酔することなのではないでしょうか。」
「重い!!
桜おねぇちゃんの場合はそうかもしれないけど、中学生には重すぎるよ!!それは!!」
ハルは桜の怖い回答に声を張り上げて、突っ込んだ。
「桜さんはなんて言ったの?」
ハルが一人で突っ込んでる様子を見ていたが、遥香はもう見慣れたのか、特に気にする様子もなかった。
「…なんか、その人のためなら死んでもいいって思えるくらい好きになることみたいに言われた。」
「そ、それは流石に重いね…」
遥香は普通に引いていた。
「…折角、答えてあげたのに中々ひどい反応ですね。」
桜は無表情ながらも、少しがっかりしている様子であった。
「きっと、私たちは男子との接点が少ないんじゃないかな~
私なんてほとんどしゃべったことすらないもん~」
ヨシコはお菓子を食べながら、ゆったりと言った。
遥香とハルは確かにと納得していた。
「…ヨッシーって何気にまとめるの上手いよね。」
ハルは感心しながら、ヨシコに言った。
ヨシコはいや~と照れながら頭を掻いた。
そして、遥香が思いついたように声を上げた。
「それなら、男子と遊んでみよう!!
所謂、合コンというものをやってみよう!!」
「…また急に合コンて。
そんなのどうやってすんの?」
ハルは合同コンパについては大学院生の瀬戸や神山から聞いていたので、意味は知っていた。
ヨシコは合コンとは何だろうと分かっていない様子であった。
遥香は急にハルの手を握って、ハルにお願いした。
「ハルって、何気に空手の道場とか、大学生とかの男の人に対して、顔広いじゃん!
ちょっと、遊びに誘ってみてよ!お願い!!」
「えぇ~私が集めるの~
嫌だよ~めんどくさい~」
ハルはうっとおしそうな顔をした。
遥香はニヤッと笑って、ハルに言った。
「桜さんとも外で皆と遊んでみたくない?
それに男子を連れて来てくれるだけでいいんだよ。」
ハルは遥香の提案を聞いて、チラっと桜を見た。
桜はほぉ~と言った顔で満更でもない様子だった。
(確かに桜おねぇちゃんと皆で遊ぶのは楽しそう…)
ハルにとっても正直、遥香の提案は魅力的だった。
しかし、ハルは頭を掻きながら、遥香に言った。
「でもなぁ~
桜おねぇちゃんを驚かない男子の知り合いは少ないからな~
何人かは心当たりあるけど。」
「まぁ、とりあえず3人いたらいいんじゃない?
女3男3の合コンで桜さんが保護者として参加みたいなね?」
「…私が保護者ですか…
まぁ、別にいいですけど。」
桜は特に嫌がる様子もなかった。
桜の様子を見て、ハルはしょうがないかとう~んと言いながら、ハルは中学生になって総一郎に買ってもらった携帯を見て、誰を呼ぶかを考え始めた。
(まっ、この機会に桜おねぇちゃんを紹介したい人を呼んでみるか…)
そして、ハルはその3人を決めて、遊びに誘うメールを送ったのだった。
続く




