エピローグ
「…てなわけで、無事、お化けは除霊できたんだけどね…」
翌日、ハルは遥香とヨシコと登校中に太田との一件を簡潔に説明していた。
「よかったじゃん。
なんか考えてることでもあるの?」
遥香が言いよどんでいるハルに聞いた。
「…いや。あいつの言うことも最もだなって思ってさ。
あの中で一番苦しんでたのは間違いなく、あのお化けだったから…
だから、本当に良かったのかなって…」
ハルは考え込んている様子だった。
遥香はハルの様子を見て、バンと背中を叩いた。
「痛っ!!何すんの!!」
「いや。そのお化けがハルに憑りついちゃったのかなって思って。
ほら。背中をたたくと霊が飛んでくってあるじゃん?」
「んなわけないじゃん!!やめてよ!結構本気だったじゃん!!」
すると、遥香はハルの背中を撫でながら、優しく言った。
「だって、ハルが自分で言ったことと逆のことを早速言っちゃってるから、そのお化けが憑いちゃったのかなって思ったんだよ。
自分のことを考えることが大切なんでしょ?」
ハルは背中を撫でられてもまだ少し痛かったので、ムッとして遥香に言った。
「それは分かってるけど、少しはやるせなさ?みたいなのは感じてもいいでしょ~が~」
「ははは~そんな痛かった?
ごめんって~」
遥香は笑って、ハルの背中を撫で続けるのであった。
「それにしても、相馬さんってすごいんだね。
一回会ってみたいわ。」
遥香は嬉しそうにハルに言った。
「いや。やめといた方がいいよ。
そんなにカッコよくないし。」
ハルは遥香に会せたら絶対にめんどくさいことになりそうと思い、ものすごい嘘をついた。
「そうなんだ。じゃあ、別にいいか。」
ハルの話を聞いて、遥香はあっさりと諦めた。
ハルは呆れて、遥香に言った。
「…遥香ちゃんて、本当大丈夫なの?」
「遥香ちゃん~外見よりも中身が大事だよ~」
ヨシコにも言われる始末であった。
そうして、学校に到着したハルが2組の教室に入ると、前髪を切ってさっぱりした姿の太田がいた。
「お、おはよう。加藤さん。」
太田はまだうつむき加減だが、しっかりとハルに挨拶した。
「おはよう。太田君。
…お父さんとは話したの?」
ハルは席に座りながら、挨拶とともに太田に聞いた。
太田はうつむきながらも真面目な顔でハルに話した。
「…うん。
小さい頃、誰かをいじめてたことあるかって。
そしたら、どうしてそんなこと聞くんだ?って。」
「まぁ、普通そうなるだろうね。」
「…で、人づてに聞いたんだって言ったら、父さんは割とあっさり、そう思われてもしょうがないことはしていたと思うって。
正直な人だからね。」
「…やっぱり、本当だったんだ。」
ハルは少しやるせない気持ちになった。
しかし、太田は顔を上げて、ハルに言った。
「だから、僕は父さんにはっきり言ったよ。
「僕は父さんを軽蔑する」、「最低だ」って。
…こんなことでお化けの気持ちが晴れることは無かったとは思うけど、父さんは落ち込んでたし、少しは罪滅ぼしができたんじゃないかなって。
それに…」
太田は笑って、元気よく言った。
「それに、父さんのせいでこんな目に会ったんだからね。
僕のためにも少しは反省してもらわないとね!」
ハルも笑って、太田に言った。
「まぁ、私のためにもお化けがいなくなって良かったよ。
お疲れさん。」
終わり