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お化けの一生  作者: EFG
背後霊
42/58

気になる男子


「えぇ~!!自己紹介でお化けが見えるって宣言しちゃったの!?」


 屋敷に着いて、お菓子を食べながらハルの自己紹介の話を聞いて、遥香が驚いた。


「そだよ~堂々としててカッコよかった~」


 ヨシコは呑気にハルを褒めていた。


「いやいや、ていうか、どうしてまたそんなことしたの?」

「いや~ヨシコをいじめてた三人組と一緒のクラスになっちゃってさ~

 こっち見ながらひそひそやってるから、なんかむかついて、やっちゃった~

 でもまぁ始めに言っとけば、変な噂流されても、本人が言ってるんだし、これ以上何か言われることはないかな~って。」


 ハルはすっきりした顔で遥香に答えた。

 遥香はハルの言葉を聞いて、ぷっと笑った。


「ハルも随分強くなったもんだよね。

 いいんじゃないかな。信じてくれる人も出てくるかもしれないしね。

 あんなに引っ込み思案だったハルも成長したもんだよ!」


「…遥香ちゃんは私の師匠かなにかなの?」


 ハルは呆れた顔で突っ込んだ。


「ところで、結局、学校にはお化けはいたの?」


「うん。思いっきりいたよ。

 私の前の席の太田って人の後ろに張り付いてた。」


 ハルは特に怖がる様子もなく答えた。


「えぇ~!!ホントにいたんだ!!

 てか、よりにもよって前の席ってめっちゃ気になるじゃん!

 大丈夫なの?」


 遥香は驚くと同時にハルを心配した。


「まぁ、無視しとけば、大丈夫じゃないかな?こういうの慣れてるし。

 それよりも大田って人が心配だよ。

 なんか悪そうなお化けだったし。」


 ハルは自分よりもその太田という男子生徒のことを心配していた。


「ん~太田君ってあの暗そうな人か~

 多分、南小学校の子だよね~

 見たことなかったもん。」


 第五中学校は基本的にハル達が通っていた西南小学校と南小学校からの生徒が集まる学校だった。

 そのため、南小学校から来た生徒はハルとヨシコにとっては初対面であった。


「…気になる男子がいたか聞こうと思ってたけど、それどころじゃなかったのね…残念。」


 遥香は恋バナをしたかったのか、少し残念そうだった。


「いや、そんな初日で気になる男子なんて普通できないでしょ。

 まぁ、別の意味で気になる男子はいたけども…

 遥香ちゃんはどうなの?

 素の遥香ちゃんはモテなさそうだけど、普段、猫かぶってるからモテるんじゃないの?」


 ハルは余計な一言を加えて、遥香に聞いた。

 遥香はフフフと笑って、ハルに答えた。


「もちろん。告白されたことは結構あるよ。

 でも、やっぱりまだ好きとか分かんないから、付き合ったことはないね。

 …それに告白されるっていうのがまた、なんて言ったらいいのか…

 すごい優越感というかなんというか、たまんないんだよね~」


 遥香は気持ち悪い顔で浸っていた。

 ハルは遥香の様子を見て、お菓子を食べているヨシコに言った。


「…ヨッシー…遥香ちゃんて、私達三人の中でぶっちぎりでやばいよね。」


「そうだね~ちょっと心配になるレベルだよね~」


 ヨシコは笑いながら、答えた。




 翌日、相変わらず、太田に憑いているお化けが気になり、授業に集中できなかったハルはどうしたものかと困っていた。


 休憩時間、疲れてうなだれていたハルに後ろの席の木村紗枝きむら さえが声をかけた。


「加藤さん。なんかすごい疲れてるけど大丈夫?」


 ハルは少し慌てて、愛想笑いを浮かべて、木村に返事をした。


「だ、大丈夫大丈夫。ちょっと、眠たかっただけだよ。

 ありがと。」

「ははは。そうなんだ。

 ちょっと、声かけるの遅くなったけど、隣の席どうし、これからよろしくね。」


 木村は笑って、ハルに言った。

 ハルはあの変な自己紹介をしたのにも関わらず、気軽に声をかけてくれたことが嬉しかった。


「こちらこそよろしく。木村さん。

 まさか声かけてくれるなんて思わなかったよ。

 あんな自己紹介だったしさ。」

「あれはよかったよ~インパクトあってさ~

 私は面白かったよ~

 だから、話したかったんだよ~

 南小には加藤さんみたいな人はいなかったし。」

「自分で言うのもなんだけど、そりゃいないだろうね。

 私みたいな変な人は。」

「はは~それ自分で言う?

 やっぱり、面白いね。加藤さんは~」


 木村はテンション高めの人みたいだ。

 ハルは前の席の太田がどこかに行っていることを確認して、木村にこっそりと聞いた。


「あのさ。南小出身だったら、知ってるかな?

 太田君ってさ。どんな人?」

「太田君?ちょっと、暗いよね~

 でも、前まではあんな感じじゃなかったんだけどね。

 もっと明るくて元気だったんだけど、なんか急に暗くなっちゃったんだよね。

 中二病?ってやつなのかな。」

「そうなんだ。

 前は明るかったのか。ふ~ん。」


 ハルは木村の説明を聞いて、恐らく、ある時にあのお化けに憑りつかれてしまい、お化けの悪い感情にあてられてしまったのかと考えた。


 何かを考えているハルの様子を見て、木村は不思議な顔をして言った。


「何?どしたの?

 太田君のことがそんなに気になるの?

 もしかして…」


 ハルはまだ考えてる顔をしながら、木村に言った。


「まぁ、気になるのは気になってるんだけど、ちょっと方向性が違うというか…

 とりあえず、本人にも声かけてみるよ。

 教えてくれてありがと。」

「ははは~何それ?

 ホント加藤さんて面白いわ~」


 そうして休憩時間が終わったのだった。




「ハルちゃん、一緒に帰ろ~」


 授業が終わって、ヨシコがハルに声をかけた。


「ごめん。ちょっとだけ待ってくれる?」


 ハルは太田を見ながら、ヨシコに答えた。

 ヨシコは何となく察して、ハルに言った。


「うん。分かったよ~

 じゃあ、門の前で待ってるね~」

「ありがと。できるだけすぐ行くよ。」


 そして、ハルは帰ろうと席を立った太田に声をかけた。


「太田君。ちょっといい?」


 太田はハルの方を振り返った。

 始めて太田の顔を面と向かって見たが、前髪が長く、目を伏し目がちにしていて、第一印象はやはり暗いといった感じだった。


「何ですか?」


 太田に返事をされ、ハルは声をかけたもののどういったらよいものか考えておらず、困ってしまった。


「え~とね~まぁ~なんていうの?

 前後の席になった縁というかなんというか…

 太田君とちょっと話してみたくてね。」


 ハルは訳の分からないことを言った。


「はぁ…そうですか。」


 ハルはどうしたものかと考えていたが、周りに人が多すぎて、ここではまともに話せないと困った。


「すみませんが、急いでいるので…」

「あっ!ちょっと!」


 ハルが止める間もなく、太田は帰ってしまった。


 ハルは後先考えずに声をかけてしまった後悔と、折角中学生活が始まったばかりなのに、ずっとお化けに気を取られたままではたまらないという思いから、諦められずにいた。


(こうなったら、一人になったところで話しかけよう!)


 ハルはそう思い立ち、太田の後をつけることにした。



「ハルちゃん。思ったより、早かったね。」


 門の前で待っていたヨシコがハルに言った。


「ごめん!ヨッシー。

 これから太田君の後をつけるんだけど来る?」


 ハルは急いだ様子で、突拍子もないことをヨシコに言った。


「また、急だね~ハルちゃんは~

 でも行く~」


 ヨシコは何も疑うことなく、ハルについていくのであった。


 そして、ハルとヨシコは一人で帰っている太田の後をつけ、人通りも少なくなってきたところで、ハルは太田に駆け寄って、肩を叩いた。


「太田君。ごめん。

 やっぱり、ちょっと話しさせてくれないかな?」


 太田は急に声をかけられてびくっとしたが、落ち着いた様子でハルの方に振り返った。


「…まだ、何か用ですか?」


「えっとね…こうなったら率直に聞くけど、あなたの背中にお化けが張り付いてるんだけど、何か心当たりない?」


「ちょ、ちょっとハルちゃん!

 それはいくら何でも急すぎない?」


 一緒について来ていたヨシコは驚いて、ハルに言った。

 当の太田も驚いて、言葉を失っていた。


「もう他に説明のしようがないもん。

 別に信じなくてもいいし、失礼なこと言って申し訳ないんだけど、太田君って前までもうちょっと明るかったんだよね?

 何か気になることがあるんじゃないの?」


 ハルは思い切って太田に問い詰めた。


 しばらく黙って固まっていた太田だったが、ハルの方を向いて、口を開いた。


「…お化けがどうかは分からないけど、ある時から急に何もかも楽しくなくなったのはあります。

 …病院に行ったこともあるくらいです。

 …これって、そのお化けのせいなんですか?」


 太田も心当たりがあったようで、ハルに聞いた。


 ハルはようやく話しを聞いてくれるようで、少し安心した。


「そっか。ちょっと、待ってね。

 そのお化けに聞いてみるから。」


 そう言ってハルは太田の後ろに回り込んで、相変わらずぶつぶつ言っているお化けに声をかけた。


「あの~すみません。」


 しかし、お化けはハルの言葉に反応する様子もなく、まだぶつぶつと言っていた。


 ハルは一体何を呟いているのかが気になり、お化けの方に近づいて、耳を澄ました。


 すると…



「…死ね…死ね…死ね…死ね…」



 ハルはお化けの怨念のような呟きにぞっとし、体をのけぞらした。


 どうやら話ができるようなお化けではないことはすぐ分かった。


「ハルちゃん?大丈夫?」


 恐怖で固まっているハルにヨシコが心配そうに声をかけた。

 ハルはヨシコの言葉にハッとして、ヨシコに言った。


「大丈夫!大丈夫!!

 太田君。ごめん。

 話ができそうなお化けじゃないみたい。」

「そうですか…」


 太田は少し残念そうな顔をした。

 ハルは念のために太田に聞いた。


「中年のちょっと小太りの男の人のお化けなんだけど、何か心当たりない?」

「…全くないですね。」

「そりゃそうだよね…

 とても中学生と関係のありそうな人には見えないしね…」


 ハルは自分から聞いておいて、お化けを見ながら、そうだろうなと思った。


 しかし、このままだと太田にこのお化けのせいで苦しめられてしまう。

 そして、何よりも後ろの席の自分が全く授業に集中できなくなってしまうとハルは思って、苦渋の決断をすることにした。


「…あいつにだけは頼りたくなかったんだけどな…」


 ハルはそう呟いて、太田に言った。


「今から時間ある?

 これからちょっと梅野橋大学に一緒に来てくれない?」


「…今からですか?

 でも、どうして?」


 太田は感情の起伏が少ないが、少し驚いた様子でハルに聞いた。


「ちょっと、知り合いにお化けを除霊できる人がいるんだけど、その人に相談しようと思って。

 どうかな?」


 太田は少し迷っているようだったが、ハルに返答した。


「…行きます。」


 ハルは少しホッとして、ヨシコにも聞いた。


「ヨッシーはどうする?」


「私は除霊とか怖いのとか無理だから、やめとくね~」


 ヨシコは笑って、即答した。


 そうして、ハルと太田は二人は梅野橋大学の「上田研究室」に向かったのだった。


 続く


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